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第六十八話

 これでメリウェルの街には、魔神が召喚される事は完全に無くなっていたのだが、ユウマが戻った中央都市リフィーラでは、この後の現状どうなるのかが解らない状態になっていたのであった。

 そんな事が神界であっている頃に、ユウマはアリア達のいる転移門の広場に戻って来ていたのである。


 アリアとミーアは、のんきにベンチに座って食事中であった。

「!?っ、モグモグ、ゴックン。あっ、ユウ兄お帰り。どうだった向こうの様子は?」

「うんうん、どうだったのお兄ちゃん。モグモグ」

 アリアとミーアがベンチで、俺が渡していた弁当を開けて、一口サイズのサンドイッチを食べながら聞いてきた。


 ちなみに今ここに居ないロンは、ちょっと離れた通りにある売店で飲み物を購入しに行っているらしい。

 しかし、もうすぐここが戦場になるかも知れないのに、のんき弁当を食べてる2人もそうなのだが、少し離れているとはいえ、まだ、商売をしてるとはすごい商い根性だと思う。

 まあ、事実ここがホントに戦場になるかどうかは解っていないし、もしそうなってもロンが俺がいない間に周囲に結界を張っているようなので問題ないはずだ。


 その結界は実際はまだ起動してないので、事実誰も気が付いてはいないが、たちまち魔力を流せば隔離空間が出来る高等魔法を仕掛けてある。


 そんな事はさておき、ユウマは2人にちゃんと説明をする事にした。

「あっ、うーん、そうだな。結局魔神は、召喚されなかったな。みんな頑張ってたし、相手の魔人族もあれじゃ、反撃も出来ないんじゃないかな」


 2人の質問に対しては、結局魔神は召喚されなかった事を簡単に説明すると、ファルが続けてアリア達に説明したのである。

『そうそう、魔神は出て来ないで面白い魔獣(モンスター)が召喚されたよ。弱い奴だけどね』

『そうですね。面白いお顔のトロルキングが、それとジャイアントマッスルでしたか、両方ともすぐにリンカさんとユータくんに倒されましたが』

 ファルの説明に付け足す様に、雪姫がアリア達に説明した。


 それからファルが何かを思い出したように、アリアと俺に話し掛けてきた。

『あっ、そうそう後ね。マスターも気付いてなかったみたいだけど、シルフィーはフレイと聖霊合体してたよ。すんごいオーラが出ててすっごい強かったもん。それに完全に一体化してたからフレイの姿が見えなかったでしょ。今度さアリア、私達もやってみようよ!』

「えっ、そんなことできるのファルちゃん!」

『うん、多分できるよ。まあ、マスターとは出来ないけど。アリアとなら出来ると思うよ」

 はっ、ファルが今とんでもない事を言ってたな。なるほどそれでフレイの姿が見えなかったのか、どうりでシルフィーの強さが異常に上がっていたのはそう言う事だったのか。俺はてっきり、また、フレイが疲れたか何かで聖霊界に戻ってるかと思ってたよ。でも、何で俺とは出来ないんだ?


 まあ、実際後で確認したら、早い話し俺が男性である事が問題なのだそうだ。女性なら問題なく契約者であればある程度意思疎通が出来れば融合みたいな事が出来るそうだ。

 ただ問題は時間制限とその後に副作用があるそうだ。副作用に関してはその人により違うので、どんな事が起こるか解らないようである。


 そんな中つまらなさそうに、月姫が声を漏らした。

『主様、月はつまんなかったよ。今度の敵に期待するの。そいつも駄目だったらボコボコにしてもいいかな』

 何故だか半分怒ったような口調で話していたので、アリアが尋ねてきた。


「ねえ、ユウ兄なんで月姫ちゃん、なんで怒ってるの?」

 アリアが月姫の態度を不思議に思い尋ねてきた。


「まあ、そこは色々あるのだよアリア君。そこはそっとしといてやってくれ。恐らくここに現れる奴と戦わせれば機嫌も治るだろうし」

 おかしいなさっきは、少し機嫌が戻ってたのに、また機嫌が悪くなってるよ。よっぽど森にいた敵が歯ごたえが無かったんだろうな。欲求不満みたいになってるよ。


 アリアには月姫をそっとしておく様に言葉を掛け肩に手を置くと、アリアは不思議そうに首を傾げていたのであった。月姫に関しては俺特製のお弁当とお菓子を出して与えると、先程まで機嫌が悪かったのが一転して大人しくなり、それらを聖霊の3人で仲良く食べ始めた。


 いったい何を切欠で月姫がまた機嫌を悪くするかもしれないが、今度の敵は大丈夫だろうと思う。

 どうやらかなり強いらしいからであるし、俺も出来れば本気で戦ってみたいと思っていた。月姫ではないが、実を言うと俺もちょっと欲求不満になっているのである。

 今までの敵が弱すぎて俺がでるまでも無く、簡単に戦闘が終わっているからである。実は時の迷宮(ダンジョン)の最初の森はすごく楽しかったからであった。

 実際月姫が機嫌が悪いのも、解らない訳でもないのであった。


 そんな話をしていると、そこへ飲み物を購入してきたロン戻って来て俺達に声をかけた。

「兄貴、周囲にある魔法陣が微かですか、魔力を帯び出しています。恐らく誰かがここに転移してきます。しかも転移門を使わずにです」

 ロンが言うように周りにこの周囲に漂う、魔力とまっく違う流れが感じ取れるのである。


 どうやらやっと俺達の目的の敵が、この場所に現れるようなので、気合を入れて待ち構えることにした。


 それでそのロンの声を掛けてきて、みんなが気合を入れたと同時くらいに、先程までミーアの横で寝ていたランも首を上げある一点を見つめたのである。


 それからアリアとミーアも、それに聖霊の3人もある一点、ちょうど転移門があるその上空に視線を向けたのであった。

第九章:第六十九話につづく

 そのみんなが視線を向けている先で・・・?

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