第十九話
それでユウマは不思議に思ったが、引き続き尻尾を先端部分の丸い場所と付け根の部分を集中して攻撃する事にしたのだ。
他のメンバーは、自分達の出来る事をして、引き続き頭の部分と戦闘を行なっていた。
『アリア!どうやらマスターが何かに気が付いたみたいだよ。だからこっちはこいつらをマスターに近づけないようにしよう』
「うん、解ってるよ。ファルちゃん。私とファルちゃんは右の頭を、ロンとミーアは左の頭を引き付けて。ランちゃんは臨機応変でみんなの手伝いをお願い」
「解った。アリア!」
「解ったなの。アリアお姉ちゃん!」
『ワゥ・・・・』
「ユウ兄!・・・・」
アリアはファルの言葉で納得したようで、ロンとミーアそれにランへと指示を出していた。
どうやら俺の思惑に気が付いたらしく、みんなに指示を出した後、俺の名を呼び視線を向けて黙って頷いてくれていた。
すると相手の双頭の蛇に向けて白王狼のランが咆哮をあげた。
『ウォォォォーーーーン』
ランに関しては、滅多にその様な咆哮をあげないが、このときは敵の意識をラン達に向けるのと威嚇する意味も含めた咆哮であったようである。
しかし、そのランの咆哮により思いがけない事が起きたのである。双頭の蛇はその咆哮聞き意識を向けるどころか、萎縮して動きが止まってしまって身動きしたい出来なくなっていたのであった。
これは、はっきり言って物凄いチャンスがめぐってきたのであった。
「マジかよ。ランの咆哮で、こいつの動けなくなってやがる。今の内にこいつの尻尾を切り刻んでやる」
ユウマは己の身体能力だけで、尻尾の付け根部分に回り込み動かなくなった尻尾の切断をするつもりで攻撃を加えていった。
しかし流石に尻尾の付け根部分は硬く表面を傷つけるだけなら簡単に出来たが、切断するのには相当苦労した。
ちょうど三分の二を切り終えた頃に、双頭の蛇の動けない状態が解け再びアリア達に攻撃を加えてきた。
それと俺が尻尾の付け根付近にいる事を気付かれ頭が攻撃してきたが、それにランが気が付きその頭に攻撃を加えようとしたが、このときの攻撃は前のように尻尾でガードされて、ランに攻撃を仕掛ける為に振り上げられてしまった。このままでは俺自身は頭の攻撃をまともに喰らい、ランが尻尾の餌食になりかけない。
「やべぇ、まだ切断出来てないぞ。畜生、こうなりゃイチかバチか奴の首を俺が飛ばす。ラン!お前は尻尾に注意して攻撃しろ」
そう言ってこちらに攻撃を仕掛けてきた蛇の首にを跳ね飛ばすために、そちらに意識を向けて攻撃を対象を切り替えた。
ランも俺の意図を理解して俺を襲い掛かっていた頭より、尻尾に意識を向け尻尾の付け根部分に攻撃対象を切替、尻尾のガードをしようとした動きと攻撃を交わし尻尾の付け根を切断した。
するとランの攻撃で尻尾は見事に切断され、双頭の蛇の二つの頭が苦しみ出した。その瞬間ユウマに攻撃をしかけていた筈の首を落す前に、その双頭の蛇の2つの頭が地に落ちて動かなくなってしまったのだ。
「おいおい、もしかしてこいつの弱点って・・・」
「尻尾みたいだね。ユウ兄」
俺に近付いて来てアリアが、納得したように声を掛けてきた。
「ああ、でもこいつの尻尾・・・もの凄く硬かったのに・・・ランはいとも簡単に切断したなぁ」
『ワッオォォォォンッーーーー』
ランは動かなくなった双頭の蛇の胴体部分に乗っかり勝利の雄叫びをあげていた。
この双頭の蛇に関しては、どうやら尻尾が弱点らしく尻尾の丸いところより、胴体の近くちょうどYの字に分かれてる部分から半分の尻尾側のところで切断すると絶命するようなのであった。それはどうやら尻尾の球体部分が、この双頭の蛇の頭脳のような役目を果たし魔力を全身に供給していたのであった。
なのでその部分が無くなれば、指令が何も来なくなるのでそれで絶命したようなのだった。
ただこの球体部分の切断に関しては、この蛇の筋肉と骨の部分が恐ろしく硬いので、それを切断するのが一番苦労するのだが、それを白王狼であるランは、いとも簡単に自身の爪で切断してしまったのである。
ミーアの話によると、ユウマがかなりのダメージを与え半分以上切断していたので後は簡単に切断できたとランの言葉を通訳してくれたが、それでもそこまで斬るのに苦労した。
普段だったら雪姫と月姫の力があれば簡単なのだが、今だ寝ているのか返事がないうえに、本来の力がないのであるなので、途中から自分の持っているミスリル製の長剣を使用していた。
「それにしても何で雪姫と月姫は返事がないのかな?それにファルみたいに実体化してないんだ?」
『マスター実は、私はこの姿のままここに入ったからか解んないんだけど・・・剣の姿にも戻れないんだよね。ついでに聖霊の姿にもなれないの。何かの力が働いてるみたい。だから雪姫と月姫も力が出せないんじゃないかな?」
なるほど、ここに入っていた時にファルは確かに今の妖精の状態だったし、雪姫と月姫は刀の状態で入った。
それでファルは妖精としての力は、あくまで俺とアリアの内部の力を受けて存在及び力が使えているらしい。しかし雪姫と月姫は刀の状態で、まあ俺の能力が当たり前なら問題が無かっただろうが、殆どが使えない状態になってるので早い話し封印されていた時と同じ様な状態になっているようだった。
「てことは、俺が元の力を取り戻すか、今より強くならないと、このダンジョンを出るまで雪姫と月姫はこのままなのか・・・・」
『そうみたいだね。マスター』
あちゃぁ、この先如何にかしないと俺達は一週間持たないかもしれないな?
そんな事を考えていたが、このあと同じ双頭の蛇の魔獣と出くわした時は、いとも簡単にランはもとより、ミーアとアリアもいとも簡単に、その双頭の蛇の尻尾を切断していたのであった。
「おりょ?何であの子達は、そんな簡単に尻尾を切るかな?」
「えっ、ユウ兄、あの尻尾普通に切ったら絶対に無理だよ。でも、ユウ兄が創ってくれたこの剣なら簡単だよ。それにミーアのナイフだってユウ兄の造ったものでしょ」
確かにアリアとミーアには俺の造った武器を、アリアには以前渡したアインドライブの更に強化改良したアインドライブ・ブラスト、ミーアには魔双短剣:ミルドラクローレインを渡した。
アリアに渡した魔法剣は、ファルが剣に姿を変えた時と同等に魔力を注ぎ込められ、自由自在に切れ味等を変えられるようにしている。しかもアストラル体、早い話し実態が無い敵にも攻撃が可能なのである。
続いてミーアに渡した魔双短剣は、小さく素早いミーアに扱い易いように魔剣のナイフ版みたいなものである。
ただ普通の短剣と違うのは能力が1本1本違い、ミーアの感情が高ぶり獣人化するとナイフが爪のように変化して腕に装着されるのである。早い話しクローのような籠手に変化するビックリ魔双短剣なのであった。
それでアリアに話を聞き、その後自分でも試してみると、確かに簡単に切断できた。
ただしかし、よくよく考えると一番最初にあった双頭の蛇はかなりでかく、若干鱗の色が黒かったが・・・今となっては良く解らないのであった。
それでこの階というより、この森での成果は今のところ双頭の蛇を20匹討伐、その内の2から3匹は他の固体よりも5倍ほど大きかった。それでも一番最初に戦った双頭の蛇はそれらを更に大きくした奴だった。
もしかしたらこの森の主だったのかもしれないが、ホントに今となってはどうでもいい事だった。
第九章:第二十話につづく
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しかし、今のところ何故か、双頭の蛇だけしか出てきていない。




