第四十九話
すると調理室の扉をノックして中に入って来たのは、予想どおりマイ達5人の娘とカノちゃんとリリアちゃんも一緒にこの場に現れたのだ。
しかし何故カノちゃんとリリアちゃんまでここに来たのやら?まあいいや、とりあえず。
「どうしたの?お揃いで。もしかして手伝いに来てくれたとか・・・かな?」
「えっとですね。あの、ユウマ様。その、あのですね」
「ん?」
どうしたんだろう、非常に言いにくそうにしてるけど?・・・もしかして、カノちゃんとリリアちゃんの事を気にしてるのかな?確かにチラチラそちらの方に視線を向けてるみたいだけど。なにかやったのか?
「あのですね・・・・・グスッ」
うわっ、なんかマイが涙目になってる。それに他に娘も半泣き状態だ。でも、どうしてだ?
そう考えているとカノちゃんが代わりに話し掛けてきた。
「私から説明いたします。ユウマ様、実はちょっと他の使用人達からお願いが出ていまして、それでちょっとご相談に来ました。それでその原因であるマイ達にも同行してもらいました」
あれま?カレーの件では無かったのか、ならなんだろうか?
「で、何を相談したいの?カノちゃん」
「はい、相談というのはですね。この敷地内にお店を建てたいと以前から考えてまして、その相談とこの娘達の以前からの行動についてです」
「へっ?そんな事の為に・・・? でも、お店に関しては、別にいいんじゃないの?カノちゃん達の判断で。それに何でマイ達の行動についてを俺に?」
何でここにお店の事を相談に来たのか、それにマイ達の行動は別に咎めるような事では無いのでは?
その様に考えていると、カノちゃんと一緒について来ていたリリアちゃんが小声で話し掛けてきた。
「旦那様、実はですね・・・・・ちょっと使用人達の間で中毒症状が出てまして、それとなんと言いますか通常の料理人達からも苦情なんかも出てまして・・・」
なんでも彼女達は先程の調理室を勝手に使用していたらしい。それで実は数日前よりあの匂いを拡散させてちょっと問題になっているようだ。
「おいおい、そんな悪い状況になってるのか?」
まさか数人が中毒症状になってるのかよ。それってただ事じゃないのでは?何でそんなに冷静でいられるの?犠牲者が出てるんだよ。犠牲者が!
「それはもうつまみ食いばかりして・・・」
ん?なんか話の内容が俺の思っているのと違うようだが?
「実はこの屋敷にいる料理人が準備した食事を、ある一定の使用人達が全く食べなくなっているんですよ。ホントにいくら食事付きの住み込みでも、あれだけ食事を残されたら無駄な経費がかさみます。それで料理人からは余計な物を食べさせるなとか、それとは別に使用人からはもっと美味しい物を出してとか、両方からも苦情が出ているんですよ」
「はい?中毒症状って?食中毒では無いの?」
俺は中毒症状と言ったから、てっきり食中毒かと思ったが、どうも中毒症状の意味が違っていたようだ。
「えっ、何を言ってすんですか旦那様?そんな事があったらこんなに冷静でいるわけないですよ。うふふっ、それに元はといえば、すべて旦那様が悪いんですよ♪」
ん?なんか訳の解らない事になっている様な。俺が原因なのか? しかしそんな1人だけニコニコと笑顔で言われても、説得力がないんだけど。
まあ早い話はこういう事であった、この世界では発展してなかった食文化を、どうもあのスパイスの香りだけで混乱させてしまっていたらしい。
どうもあの香りで腹を刺激された使用人達は、マイ達の作った物をつまみ食いと言う名の試食をするようになり、最終的に通常で準備されている食事を一部の使用人達が取らなくなってしまったようだ。
その結果、使用人達の食事を作る、専属の料理人達がせっかく作った料理を全く食べず、最終的には処分する事にまで発展していたのだ。
それもこれも元を糾せばユウマが、カレーを作りだしたのが原因だと言う事が解ってしまったようだ。なにせあのスパイスの香りの殆どの原因で、しかも以前作ったマヨネーズやケーキ等のお菓子類もその要因でもあるらしい。
早い話使用人達は、ときたま美味しい物を食べるでなく、常に美味しい物を食べたい様なのである。
「はい、それでですねユウマ様。私達はその、あのですね。その事を解消するために、その食堂をといいますか、代金を取るように・・・」
「いいんでないの?その方がみんなも納得するだろうし、それに自分達のお金で食べるなら誰も文句も言わないでしょう。それと食事付きの住み込みに関しては改定をしようかカノちゃん」
俺がその様に簡単に答えるとマイはおろか、カノちゃんまで一瞬驚いた顔をした。
まあ、そうだろうまさか今の話を聞いて、簡単に了承をしたのだから、しかもその打開案も提供したからである。
その打開策とは、マイ達の食堂案はもちろん了承して、その作った物は料金を取ることにしてた。ただ料金は当たり前の料金を取る事にする。もちろんその相場に見合う代金を設定する。
そして住み込みで食事付きに関しては希望者のみとして、その他はその分の給金をプラスする事にした。ただしその分に関してはかなり安い状態である。だって折角食事付きにしてるのに、破格の割り増し料金を給金に加えたら折角の料理人達の仕事が無くなってしまうからである。
それに料理人達の作る料理は均一化させ、その作った物は格安の状態で販売する事にした。この屋敷で雇っている料理人の料理も決して不味いわけではない、ただ美味い物を作る経験と実績が無いうえに、チャレンジする機会がなかっただけだ。
今回のこのことを気に料理人達には、美味しい物を作るチャンスを与えようと思う。
この打開案は後にいい方向に向くのだが、とんでもない結果になるとは思ってもいなかった。
それで、先程の話の続きをするため、マイ達に声を掛けた。
「それで話はそれだけなのかな?特にマイ達はまだ俺に何かあるんじゃないの?」
「あっ、はい、実は・・・・・」
今回はどうやら俺のところに来る前に、カノちゃんとリリアちゃんに相談してきたようなのだ。
以前の時は直接俺のところに来たので、そのあと若干怒られたみたいだ。でも、今ここにいる娘達は現状俺の手伝いを優先させるという事になっている。
それで実際に料理をするのは専用の料理人等なのだが、そちらはあくまで使用人達の料理関係である。
俺達の食事関係の料理は、この娘達5人がほとんど仕切っている状態だ。しかも今ではここにいる料理人達の技術を凌駕している。
それで今回の件では、まだそこまで大事にはならなかった。でも、以前の事もあったので相談してここに来たようだ。
それにカノちゃん達も、違う事で他の使用人達からの相談とお願いがあったので、ついでに今回の件もふまえて大事になる前に、ここに来てお願いする事にしたようだった。
それでカノちゃん達の前では、もう一つのお願いは、しにくいようだ。
ん?なら何でさっきマイ達は目に涙を浮かべてたんだ?・・・・実際それだけが今は謎であった。
まあ、先程の話しについては、後日また詳しく色々とまとめることにして、今日はこのあとカレーパーティーをする予定なので、その準備をマイ達に手伝って貰う事にした。
第八章:第五十話につづく
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マイ達が言い難そうだったので、俺から声を掛けそれとなく色々と教えようと思った。




