第三十七話
そう言葉のかけ、今だ氷の塊相手に粋がっている魔人族、グレルのそばに向かい指を弾いた。
《パチン・・・》
ユウマが指を鳴らしたと同時に、魔人族グレルが声をあげた。
「はっ・・・。なっ、なんだ。何が起こった?」
正気を取り戻したグレルは、目の前にある氷の塊を見て何が起こったのか解らずにいた。
なのでユウマは簡単に説明してやった。
「おい、脳筋。お前は今まで一生懸命、その氷の塊を俺と思って攻撃してたんだよ」
「なっ、なにい。きさま我を愚弄するきか。のっ、脳筋だと」
えっ、怒るところそこ?氷と相手させてたところは怒んないの?
「いや、だって。馬鹿でアホだろ。全然幻術解けてなかったし、解って・・・なかったよな?」
「うっ・・・。いや、我は解っていたぞ。ただ、お前の幻術にかかっては・・・そう、フリを、かかっていたフリをしていた。だからお前が・・・そう、お前を待っててやったのだ。うん、そうなのだ。がっはははは」
何故か目をそらし考え、そして思いついた事を言葉にして笑い出した。
やっ、やっぱりこいつアホだ。
話しているうちに、段々こいつが大した事無いのではと思い始めた。
それは何故かと言うと、あれからある程度時間が経っているというのに、魔人族の魔力が回復してなかったのだ。
魔力が回復するどころか、逆に力が弱まっているような・・・? でも、どうして?
「なあ、お前。なんかさっきより弱くなってない」
ユウマは思い切って相手の魔人族に聞いてみた。
「ばっ、馬鹿な。何を言うか人間、そんなはずは・・・・!?はっ、なっ、何故だ?我らの力の源である邪気を含んだ魔素が・・・大気中に無い?何故だ」
およよ、そういえば以前戦った魔人族もそんな事を言っていた様な・・・!?ああ、確か邪陰水晶の石柱だったか、あれが無いから回復できないとか、こいつら魔人族はもしかして?
「なあ、お前さぁ、もしかして、アイスヘンジに有った邪陰水晶の石柱だったか、あれを設置した犯人か」
「お前では無い。我は魔人族のグレル様である。我はマシュリ様の部下であり遊撃隊・・!?人間よ今、邪陰石柱の事を言ったのか?」
「ん?ああ、そうだ。あれを設置したのはお前かと尋ねたんだ」
「んん、ふん、きさまなどに教えるものか。まあ、教えたところでどうこうできる物でも無いがな。ふはははは・・・ん?何故きさまが何故その事を知っている」
グレルは一旦ユウマが尋ねた事の対して答える気がなかった様だが、良く考えたらあれの存在を知っている事がおかしいので尋ねる事にした。
「ああ、あれならば俺がすべて破壊したぞ」
「はっ?・・・・」
グレルはユウマが言った言葉を聞いて、凄く間抜けな顔をしていた。
このとき、グレルは何かの聞き間違いかと思っていたが、今現在魔力は一向に回復しないし、普段のような力が出せなくなっていた事に気が付き、もう一度ユウマに尋ねる事にした。
「なっ、なあ、お前。さっき邪陰石柱を破壊したと言ったが、あれは嘘だろ。なっ、なっ、あれを破壊できる者はこの世で神か勇者くらいだ。勇者で無いお前が破壊できる訳が・・・・!?まっ、まさか神か?」
「うーん、神では無いけど・・・確かにあれを破壊したのは、間違いなく俺だ。ついでに言うと今からお前を倒すのも俺だと言う事も覚えとけ」
そう言ってもうこれ以上語ることも無いと思い、今まで抑えていた覇気を解放した。
するとグレルはその言葉を聞き驚いたあとに、ユウマの放った覇気に青ざめた。
「なっ、なんだ。きっ、きさまのその覇気は、おっ、おまえは、なっ、なんな・・はっ!?おま、おま、お前か、以前マシュリ様の研究所をはっ、破壊したのはぁぁぁぁ、あわあわ」
魔人族であるグレルはユウマの覇気を感じて青ざめたあとに、以前自分の主である魔人族マシュリとフレッドに聞いていた事を思い出していた。
そうその話しでは、3人の部下のコピー魔人族をことごとく倒し研究所を覇気と聖光気だけで破壊つくし、そのうえ魔界の研究所にまで影響を受けていた事をグレルは思い出していた。
「いやいや、あそことここは大陸が違う。きっ、きさまであるはずが無い。ここはイルミナ大陸だ。そんなやつがここにはいないはずだ。おそらく人違いだ。ははは」
「もういいよ。お前の御託を聞くのはもうあきたから、今から全力で攻撃するぞ」
「まっ、まて、お前の相手は我が部隊が相手をする。出てこいオニオンロック部隊よ。はははっ、我が徹底的に鍛え上げ、もうすぐ依存進化する予定だったが、まあよい早めに出し貴様の体力を減らしてくれるは、はぁはははは・・・・・ん?」
いくら待っても出てこない自分の部下を、そして不思議そうに領主の館の方に視線を移し確認して、何度もオニオンロックを呼んでいた。
「おい、オニオンロック部隊よ。早く出て来い・・・何をしてるんだ?我の命令は聞くはずのだが?」
まあ、いくら呼んでも出てくる筈は、無いのだがグレルのその必死さが面白いので、そのまま攻撃を喰らわす事にした。
攻撃と言っても魔力を込めた指弾を当て続け出した。
「うっ、うぎゃ、うべ、やっ、やべて、おね、お願い。もう、もうすぐ、おに・・・」
先程とは打って変わって、必死にユウマの指弾を防ぎ、それに耐えていた。
おいおい、ホントにこいつはさっきまで威勢が良かったのに・・・なんか小物ほく見えて来た。
「おい、ちなみにお前が一生懸命呼んでいるオニオンロックなら、もう全部倒したぞ」
「えっ、うっ、うっ、嘘だ。そっ、そんなはず・・・・・・うわぁぁぁ、たっ、助けてくれぇぇ」
青ざめ悲鳴をあげて、必死に走って地下の方に走って行った。
「えっ、逃げの!・・・・・?」
最大の攻撃を喰らわそうと魔力を凝縮させていたら、相手であるグレルは必死に走って逃げて行き、その光景を唖然として見届けていた。
「ユウマ!何してんのさっさとあいつをやっつけないから、早く追って止めを刺してきなさいよ。また何をするか解らないから、は・や・く」
「へっ?あっ、はいはい、すぐに実行しまーす」
凄い剣幕でフィリアに怒られたので、すぐさま魔人族グレルを追いかけた。まあ、行き先はおそらくあの部屋だろうと思う。
それは先程オニオンロックを討伐している時に見つけた簡易転送装置のある部屋だと思う。
その転送装置は簡易的に一つの場所に転移する事が出来る水晶が取り付けてあった。なぜその様な事が解ったかと言うと、俺達は女神様に貰った水晶と似たような感じの物がその装置についていたからだ。
ただしその転移装置い付いていた水晶は、禍々しい感じの物であったので、後で破壊しようと思ってそのままにしていた。
多分その部屋に行ったのだろう、それですぐにその部屋に向かった。
すると予想通りその部屋に魔人族がいて、既にその装置を起動して転移の魔法陣を発動し逃げようとしていた。
「ふははは、きさまは確かに強い。だが、今度あった時はきさまを先に殺してやる。憶えとけ我の名はグレルいずれきさまを倒す者だ。はっははは・・・」
若干到着するのが、遅れたがまあ何かを喰らわす事が出来るタイミングだと判断して、そういえばアイテムボックス内に危険な物があった事を思い出し、そのアイテム【魔導凝縮・縮退炉爆弾】を転移して逃げるグレルに向けて声をかけ指弾を放ちつつ投げ付けた。
「ほれ、忘れ物とお土産だ!受け取れ。そして二度と現れるな。このアホ魔人族」
「ははははっ、馬鹿め。そんな攻撃喰らうか。はははっ、さらばだ。精々短い間楽しみに首を洗ってまておれ。はっはははは」
高々と笑い声を上げ、ユウマの放った指弾を避けたが、投げた禍々しい玉はそのままグレル身体に当たり、その玉と共に消えてしまった。
そして、ユウマはすぐに魔人族が二度とこちらに来られないように、その場に有った簡易転移装置と水晶を木っ端微塵に破壊した。
第八章:第三十八話につづく
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その転移装置と水晶を破壊した後に、ユウマは先程怒っていたフィリアの事を思い出した。




