第十話
そして、少女と子狼のランを抱き上げ見張りの場所へ連れて帰る事にした。
ユウマが先程の丘に行っている間に、見張り場所では丘の方を見ていた。
ユウマが偵察で姿を消した後、すぐ先程光が点滅していた辺りが急に神々しい光を放ち周囲を光で満たして、明るくなった。
そしてその光は、この辺りにも影響をあたえ周囲を若干明るくした。
一時の間その明るさのままであったが、次第に元の闇夜に戻っていった。
先程神々しい光を放った場所だけは、まだぼんやりと明るいままである。
その明るかった場所では何故か竜巻が起きて、その後は元の暗闇に戻っていった。
そこで見張りをしていた全員、特に冒険者の3人は、その光景を見て何が起きたのか解らないでいた。
そしておそらく得体の知れない生物か何かがいるのか、それとも不思議な現象が起きているのではと警戒を強めていた。
ただ冒険者以外の全員は、ユウマが行ったのだから心配はしていなかったのだが、何が起きたのかは凄く気にはなっていた。
しかし冒険者は何故か《ピリピリ》と警戒態勢をとっている。
その警戒を強めているところにユウマは、何気ない顔で戻ってきた。
「ふぃ!ただいま、あぁ怖かった」と声を掛けたところ突然冒険者の1人が怒鳴ってきた。
「てめぇ、なに勝手な事してやがる。その調子じゃ偵察には行ったがビビッて逃げてきやがったな!」
「まさか、魔獣を連れてきていませんよね?」
「はぁあ、やっぱりさっきの話はデマだったのか!そうだと思いましたよ」
冒険者の3人は、全員でユウマを責めて来た。
ユウマは何事と目を白黒させて騎士隊長のレオンの方を見てみると、首を振って両手を挙げ駄目だこりゃとため息を吐いてから言葉を掛けてきた。
「ところで、ユウマ殿その両手に抱えている子と、子犬ですか。どうしたのですか?」
レオンに問いただされたので説明する事にした。
だが、その前に。
「すいません。この子達を寝かせてきますから、ちょっと待っていて下さい」
自分の寝床である荷馬車の後ろに、少女と子狼のランを一緒に寝かせ、焚き火の所まで戻ってきた。
そして丘の場所あった事とアンデッド系の魔獣がいた事を伝えた。
すると、冒険者の3人が野次を飛ばしてきた。
「そんな、事あるわけねぇ。てめー!嘘ばっかりつくんじゃね」
「大方、アンデッド系のゾンビにビビッて逃げてきた。と言うのがホントに話しじゃないですか」
「そうだろうな、そんな話し信じられねからなっ。はははっ」
最後は、笑いながら喋っていたが、ここで少年達が冒険者達に文句を言った。
「兄貴は、嘘なんて付いてねぇ。絶対にいたんだ魔獣が!ゾンビがっ」
「そうよ!ユウ兄は、勇敢なんだから!」
「そうですね!兄貴は、信じれますから」
「そうよ、おそらくさっきの子達を助けたから連れて帰ってきただけだよ!」
そう4人が叫んだ。
アリアとメイリに至っては、悔しかったのか目に涙をためて文句を言っていた。
『参ったなぁ正直に話したら大事になりそうだったから、ある程度隠していたかったのだが、この子達の期待と信頼を裏切る訳には行かないか』
「えっと、あのですね。ちょっと聞いてもらいたいのですが」
「おおっ、やっと正直に逃げて来たって言う気になったか」
「はははっ、駄目よゲートそんなにいじめちゃ!ふふふっ」
「あははははっ、ゲートもミリアもこの兄ちゃんが、はははっ」
3人の冒険者が笑いながら茶々を入れてきた。
その状況を見て少年達は、冒険者を睨んで威嚇しだした。
ユウマはとりあえず喋る前に少年達をなだめていると。
「お前達は少し黙っていろ。・・・それでユウマ殿、先程聞いてもらいたい内容とは?」
レオンが気になったのか、先程の続きを聞く為に冒険者達に少し黙れと言ってから尋ねてきた。
「あっ、はい!先程あの丘の上に偵察に行った際にですね。アンデッド系の魔獣がいたって言いましたよね」
「ああ、確かに言っていたが、それが何か?」
「へっ、どうせグールか、ミストワントじゃねえか、弱いからふふっ」
「最後まで聞きたいから少し黙っとれ、お前達!でユウマ殿続きを!」
「ええ、それでその魔獣は、ゾンビだったんですよ」
「えっ?ゾンビですか?ならそんなに脅威では無いですな。傷さえ負わなければ、それで何体ぐらいいたのですか?5体ですか?それとも多くて10体ですかな?」
「それが・・・・」
ユウマが言いよどんで、どう言う風に説明しようかと考えていた。
第四章:第十一話につづく
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そうしていると、また冒険者の3人がクスクスと笑いながら。




