甲虫目コガネムシ科「コガネムシ(緑)」
2017/7/4 更新 1/3
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「――隊長! 銀の弾丸隊長!」
「大丈夫だ、グリーン。なんとか蛍光灯に乗り移れたぞ」
「無茶しないで下さいよ、隊長。見ていたコッチはヒヤヒヤもんっすよ。本当に」
緑の幽灯は蛍光灯の上部に体を滑り込ませながらシルバー隊長の安否を確かめると一安心し、少しだけ顔を出して下を覗いた。隊長がひっかき回したおかげで人間たちの騒ぎは大きくなり、定位置から離れだしている者までいる。隊長がいる蛍光灯の下には憎き捕獲者。ピョコピョコと手を伸ばしながら飛び跳ねているが、隊長にその手は届くはずもなくひとまずは安泰だろう。
すぐ下には鞄を胸に抱えてビクビクと辺りを気にしている人間がいたが、どうやら自分たち「コガネムシ」の存在に恐れ慄いている様子だった。
その傍にはこの空間の騒ぎの元凶であり、自分たちが逃げ出すキッカケともなってくれた一人の人間。既に起き上がる態勢にはなっていたが、何故かなかなか腰を上げない。「ミテンジャネエヨ。チカヅクンジャネエヨ」と周りを恫喝している。
グリーンは首を巡らして太陽へと至る出口を探した。
箱型の空間の後方(人間の向きから推測しての後方)にある、外と通じているガラス窓が少しだけ開いている。あそこからなら出られそうだ、と、グリーンは一息ついた。
隊長よりも先に脱出するのは忍びないが致し方ない。まずは外にある本部に状況を説明する事が先決だと頭を納得させる。本部に助力を請えば、まだ捕虜の身となっている燃える赤銅や他二頭も救出できるかもしれない。グリーンはかすかに残った希望に、脚を力ませた――瞬間。
グリーンの体が滑った。アッと気がついた時には既にグリーンの体は蛍光灯から離れ、下に真っ逆さまに落ちていた。脚を力ませたのはいいが、その脚が一本抜け落ちしてしまっている事を失念していた。蛍光灯に引っ掛けていた筈の鉤爪がバランスを失い、外れてしまったのだ。
後翅はまだ飛翔力の充填が出来ていない。
グリーンの体は為す術もないまま、下にいた人間が胸に抱いていた、鞄の上に落ちた。