表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/16

緑の幽灯「コガネムシ(緑)」

2017/7/5 更新 1/3

  □

□□□□□

□□□□□

□■□□□

□□□□□

□□□□□


 乱。

 グリーンは荒れ狂う鞄の上で、鉤爪を懸命に布地に引っ掛けて耐えていた。過去に一度、嵐の中を飛翔した事があったがそれよりも凄まじい混乱が襲う。


 ――クッ! 爪の刺さり(ピックポイント)が弱い……。このままじゃ、抜ける!――。


 ナイロン生地で頑丈に作られた学校指定の鞄。ボストンバッグタイプのそれは表面の凹凸が細かすぎた。グリーンは右前脚の鉤爪だけをなんとか引っ掛けて体を支えていたが、それも限界に近づいていた。


 グリーンは暴れる視界の隅に、ジジジッと僅かずつではあるが鈍色のファスナーが動いて鞄の入り口を広げているのを発見した。あそこに入り込めれば……。グリーンは決死の思いで、残りの脚を伸ばす。

 あと少し……。あと少しで脚が入り口に届く――。


 突然の浮遊感。人間が鞄を放り投げたのだ。

 体が浮いて制御を失い、鉤爪が、離れた。しまった――。


 落下すると覚悟した直後、鞄はなにかにぶつかり軌道を変え、自らグリーンに近づいて来た。瞬間、グリーンは伸ばした五本の脚でしっかりと鞄につかまった。

 縦に揺れる衝撃。……グリーンを乗せた鞄はドサリと音を立て、床に着地した。


「――グリーン! 無事か? グリーン!」

 混乱で途切れていた虫伝信が復活し、不安げなシルバー隊長の声が聞こえた。

「ふう……焦ったあ……。いやあ、危なかったっすよお、シルバー隊長。なんとか無事っす」

 本当は安堵の気持ちで泣き出してしまいそうな程だったが、隊長を心配させまいと、グリーンは軽い調子で答えた。

「もうすぐ充填(チャージ)も終わるんで飛翔もできそうっす。後方の窓に隙間があるのを発見したんで、なんとかそこから外に出れそうですね。隊長も――!」


 グリーンは伝信の途中で鞄がまた持ち上がった事に気付いた。慌ててしがみつくが、その動きはゆっくりで、しかも教室後方へとゆっくり移動していた。「ウルセエ」と上方から声がする。どうやらグリーンたちが逃げ出すキッカケを作った人間が、鞄を運んでいるらしい。

 もしかしたらコイツは俺たちの味方なのかもしれない……。外への出口までの直線距離が近づき、これをチャンスだと捉えたグリーンは、後翅(バックウィング)の確認を急いだ。

 隊長への伝信は後だ。まずは外へと出てしまおう……と、飛翔しようとしたその時。


 上から覆いかぶさるようにして、肉厚で巨大な人間の手がグリーンの体を掴んだ。

 しまった、と思う間もなく体は持ち上げられ、そして勢い良く、床に叩きつけられる。


 胴体(ボディ)損傷。右後脚抜け落ち(ロスト)。途切れそうになる意識の中、グリーンはボンヤリと上を見上げた。真っ黒い影。人間の靴の裏が迫ってくる。


 ――ああ、シルバー隊長すいません……。俺……俺……。


 ダンッ!


 教室に、靴底を叩きつける音が、響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ