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前世の記憶を持っている者に碌な奴はいないだろう(憶測)  作者: 櫻井 千桜
前世の記憶を持つ者と平穏を望む者
2/3

始まりの者

第1話から長らくお待たせ致しました!第2話...と言いますか、本編開始回です。前回はあくまで挿入部分ですので、スルーしていただいて、こちらから読まれても結構です。


それでは、どうぞ!

 小さな田舎に存在する、小高い山を切り崩して建てられたその高校は、毎年、美しい桜が咲くことで有名です。しかし、それ以外では、中堅公立校ですから、飛び抜けた秀才がいるでもなく、かと言って、底辺を行くほどの成績の持ち主がいるわけでもない、至って普通の高校です。


 主に正門(主に先生や保護者が、自動車を運転して通る坂の先にある大きな門)と、裏門(こちらは自転車通学の学生が主に通る狭い坂の先にある、正門よりは少し小さめの門)の二つが、少し離れた位置にあり、生徒たちは日々、その長く急な坂を苦し気に上ります。ギアチェンジ付きの自転車を所持している友人が、意気揚々と立ちこぎで坂を上ろうとし、途中で挫折する姿を目にして以来、ギアチェンジのない、ただのママチャリ乗りの私は、自転車から降り、押して上るようになりました。


 坂を上り切り、裏門を抜けると、まず目に飛び込んでくるのは、校舎まで続く桜並木です。春になると白い蕾は、待ってましたとばかりに、その小さな花びらをめいっぱい開き、巨大な桜色のトンネルへと変貌を遂げます。そこを通る度、生徒達は足を止め、上を見上げては嘆息していました。そのため、この時期には遅刻者が後を絶たない、というおかしなジンクスも存在します。


 今日の私は珍しく、通学時の相棒である、真新しい白いママチャリを家に置き去りにし、徒歩にて登校していました。私は、普段から、時間にゆとりを持って行動することを心掛けているため、始業のチャイムが鳴るまで、まだ時間はたっぷりあります。今のところ、此処には誰も居ません。


 革の鞄を左手に持ち、桜色のトンネルの中へ、ゆっくり進みます。私は普段見ることの少ないトンネルの中を、キョロキョロと見回しながら進むこの時を、一人で堪能していました。柔らかな風が頬を撫で、肩下あたりのストレートの黒髪をサラサラと靡かせます。小さな花びらがふわりと舞い、私の周りに集まってきました。何だか、自分がこの花に好かれているように感じ、クスクスと笑ってしまいました。




 突然、強い風が、前方より私と小さな花びら達を襲ってきました。私は思わず右腕で顔を覆います。全身に花びらが当たっていくのを感じながら、その強い風に耐えました。




 風が止み、私が顔を覆っていた右腕を下すと、前方に人影を認めました。長身の男性のようで、右側を向き、桜並木の内の一本を見上げていました。トンネルの隙間より差し込む光を受け、男性をより神秘的に、儚い存在のように見せます。光の反射で金色にも見える茶髪が、男性の顔を隠していますが、時折見えるその端正な横顔は、切なさや悲しみを感じさせるそれと酷似しておりました。触れてしまえば消えてしまいそうな危うさのようなものも、その男性からは感じさせました。



 私は暫くの間、男性をじっと見つめていました。視線を感じたのか、男性がこちらへゆっくりと顔を向けます。私は、このような状況を、昔何処かで繰り返していたように感じました。そして、その時の微かな記憶が、ぼんやりと脳内を包み始めました。目の前の男性の姿が、靄のかかったような曖昧な記憶の中にある男性のそれに変わります。その男性は、金色の装飾を施された漆黒の軍服に身を包み、光沢のある藍色の鞘を右腰に携え、私に微笑みかけておりました。


『やっと、会えたな、ー。』

「やっと、会えたね、チセ。」


 記憶にある男性の言葉と、目の前の男性の言葉が重なりました。私は吃驚してしまい、知らずに目を大きく開いていました。




 これが、後に私の運命を180度変えてしまった男性、霜為シモタメ 朔夜サクヤとの出会いになるとは、この時の私には、到底、検討の付くものではありませんでした。

はい、主人公が出会ったこの男性は、一体何者なのでしょうか...?気になる続きは、次回までのお楽しみに!(不定期更新になります。次回の投稿が何時になるか、作者自身、分かっておりませんので悪しからず。)

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