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8/13

そして彼と彼女は――⑧

生後四ヵ月のゴブリンのゴブイチはその日もいつも通りの日常を過ごしていた。


成人したゴブリンは魔王軍に従軍しているため巣には老ゴブリンと自分達のような子供しかいないが、それでも人間との戦争中にも関わらずゴブイチ達は平和な日々を過ごすことが出来ていた。


ゴブイチの四ヵ月という年齢は大人でも子供でもない中途半端な年、人間で言えば高校生ぐらいの年齢だ。


本来であれば大人達に混ざり狩りと異種族の雌の拐い方を学びはじめる年齢だが、生憎とそれらを教えてくれる大人達が巣にはいない。


狩りについて熟知している老ゴブリンもいるにはいるが、ゴブリンは頭があまり良くないので教える方も教えられる方も言葉で狩りの仕方を教えることが出来ないし教えられることも出来ない。


実践で全てを覚える。


それが昔から実行されていたゴブリンの知識の伝承方法だ。


ゴブリンの狩りや繁殖相手の誘拐は集団で行うものなので、巣に残っている僅かな老ゴブリン達ではゴブイチら若い世代に実践させることも出来ず、ゴブイチはまだ狩りを教えられていない状態にあった。


巣をまとめる老ゴブリン達は戦争中で危険だからとゴブイチ達若い世代に巣から出ることを禁じており、ゴブイチは巣から出ることも狩りをすることも出来ずに強いストレスを感じていた。


ゴブイチら若い世代が強いストレスを感じていることは老ゴブリン達もわかっていた。


しかしゴブリンは魔族最弱の生物だ。実戦経験豊富な大人達が一緒ならともかく、実戦経験もなく成人もしていないゴブイチ達では巣から出ればあっさりと殺されてしまう可能性だって少なくない。


しかも今は戦争中。巣がある魔族領にも人間が多数入り込んでいると聞く。普段より危険度は格段に高い。


人間の中には勇者と呼ばれる自分達魔族の王並に強い存在がいるとも聞く。


そんな人間とゴブリンが戦えば敗北は決定したようなものだ。従軍しているゴブリンが全滅している可能性だって決して低くはない。


それを考えれば巣に残っている若い世代は群れを維持するために重要な存在となる。巣の外に出して死なすようなことがあってはいけない。


食糧はゴブリン達が従軍した時点で魔王軍から定期的に配給を受けている。だから危険を冒してまで狩りをする必要もない。


せめて現状がもう少し落ち着くまでは彼らを巣から出す訳にはいかなかった。


しかし巣に閉じ込められている若い世代がストレスを感じる気持ちもわかる。


そこで老ゴブリン達はストレス解消のために、本来なら成人の証として行われるとある行為を彼らに体験させることにした。


それは繁殖行為。


巣の奥にある洞窟には大人達が繁殖相手として連れてきた人間の雌が何個か置いてある。


既にこれらは子供を複数回産んで妊娠能力は失っているが、繁殖行為の練習のためとストレス解消のためにまだ生かしてあった。


繁殖行為は群れを増やすために欠かすことのできない行為ではあるが、同時に強い快楽を伴うものでもある。


中には繁殖行為に夢中になり中毒に陥ってしまうゴブリンだっている。


それだけ繁殖行為はゴブリン達にとって魅力的なものだった。


その快楽を体験させればゴブイチ達のストレスも和らぐだろうと、老ゴブリン達は若い世代に人間の雌を使い繁殖行為を実践させることにした。


そしてその目論見は大成功を収めた。巣に残っていた若い世代は繁殖行為に夢中になり、行列を作って洞窟に通うようになった。


そしてその若い世代の中にはゴブイチも含まれる。


ゴブイチは繁殖行為の気持ちよさに夢中になり、連日のように洞窟に通い繁殖行為の練習をした。


時には順番が待てなくて仲間同士で殺し合いに発展しそうになることもあったが、それでもゴブイチ達の群れは平和に過ごしていた。





その日もゴブイチは洞窟に通った。


どの雌も白濁まみれで既に意識はないようだが、それでも快楽を得ることは出来る。


年齢を考えれば自分を産んだ母親が雌達の中にいる可能性だって決して低くはないが、ゴブイチはそんなこともお構いなしに繁殖行為を楽しんでいた。


そしてその時は突然やってきた。


最初に聞こえたのは爆発音。続いて聞こえる悲鳴と怒号。


繁殖行為を中断して、一緒に行為を楽しんでいた仲間達と思わず顔を見合わせてしまう。


『ゴブリン共を殺せ!!』

『こいつらを根絶やしにしろ!!』


その怒声は明らかに人間が使う言語だった。


『ゴブ!ブゴゴブ、ゴブォォォォォー!!!(逃げろ!人間が、ギャーーーー!!!)』


聞こえた悲鳴は仲間達のもの。


ゴブイチには人間が使っている言葉の意味までは理解出来なかった。だけど何かとてつもなく恐ろしいことが起こっていることだけは理解できた。


『拐われた女性達を探せ!!まだ生きている可能性がある!!』

『あの洞窟なんか怪しいんじゃないか!?』


人間の集団が洞窟に近づいてくる。


命の危機が迫っているのはわかった。巣が人間に襲撃を受けていることは理解出来た。


だけど実践経験がないゴブイチ達にはどうすればいいかわからない。


洞窟の出入口は一つしかない。そしてその出入口から出ればまず間違いなく洞窟に近づいてくる襲撃者に発見される。


戦闘を前提とした上で洞窟から出るべきなのか。それとも洞窟内に隠れて人間をやり過ごすべきなのか。


ゴブイチ達が迷っている間についに人間達が洞窟に侵入してしまう。


洞窟に入ってきたのは三人の人間だった。


剣を持った雄と槍を持った雄と何も持っていない雌。


人間達は洞窟の出入口を塞ぐように立っている。今からではどうあがいても洞窟から脱出できそうにない。


「拐われた女性達がいたぞ!すぐに助けよう!」


「待て!ゴブリンもいるぞ!!魔法で先制攻撃を頼む!」


「わかったわ!」


呆然としているゴブイチ達に向かって人間の雌が両手を向ける。


<炎弾>(ファイアーボール)


頭ほどの大きさの火の玉が勢いよくゴブイチ達に向かって放たれる。


迫りくる火の玉を見て、ゴブイチは咄嗟に前方にいた仲間の背中に隠れてしまった。


火の玉はゴブイチの盾になった仲間の頭に命中する。


火の玉はゴブリンの頭で爆発し、炎と共にゴブリンの脳みそをまき散らす。


その勢いは命中してなお衰えず、背中いたゴブイチにまでその炎は届く。


「ゴブォ!!」


ゴブイチは<炎弾>(ファイアーボール)の爆発に巻き込まれ洞窟の奥まで吹き飛ばされてしまう。


全身に痛みを感じた。ヒリヒリと文字通り焼けるような痛みが全身を襲う。


「よし!あとは俺達の出番だ!行くぞ!」


倒れ伏すゴブイチの視界には仲間達が次々と殺されていく光景が写っていた。


ある仲間は剣でその首を切断され、ある仲間は槍でその体を貫かれる。


残った仲間達は一応の抵抗は試みていた。


武器をもった人間達に特攻をしかける者もいた。それらを囮に一直線に出口に向かって走りだす者もいた。


しかし武器を持った人間達はあっさりとその特攻をかわし返り討ちにする。


出口に向かって逃げ出した仲間も魔法を使った人間に殺されてしまう。


気が付けば洞窟にいた自分以外の仲間達は皆殺されていた。


もはやゴブイチは立つことすら出来ないほど衰弱していた。体がピクリとも動かず、この場から逃げ出すことも出来ない。


「よし!ゴブリン共は片付いたな。さっさと女性達を助けだそう。これで依頼は完了だ」


「待てよ。最初に吹き飛んだゴブリンがまだ生きているんじゃないか?」


人間達が自分を見ているのがゴブイチにはわかった。


人間達の言葉がわからない分、こちらに向けられる彼らの視線が余計に恐ろしい。


いよいよ自分が殺される番だとゴブイチは悟る。


人間が恐ろしい。殺されるのが恐ろしい。


泣きたくなるほどの恐怖に襲われるがゴブイチには何も出来ない。


せめて眠るように死にたいと思ったゴブイチはその目を閉じた。


だがその行為がゴブイチに幸運をもたらした。


「全身に火傷を負っているみたいだし、目も閉じたみたいだからもうすぐ死ぬでしょ。それより一刻も早く彼女たちを助けましょう。同じ女性としてこれ以上見ていられないわ」


「……そうだな。何匹かゴブリン共を逃がしたみたいだし、いつもでもここにいる訳にはいかないか。まだゴブリン狩りをしている仲間達にも撤収の連絡をしよう」


人間達は繁殖相手を全員かつぎ洞窟から出ていった。


ゴブイチはその背中を見ながら、命が助かった安堵で涙を流していた。





人間達が洞窟から去って暫く、ゴブイチは何とか立てるほどに回復した。


とはいえ火傷が治っているはずもなく、相も変わらず熱と痛みを感じる。


このままでは遠からず死ぬ。


それがゴブイチには本能でわかっていた。


それでもゴブイチは洞窟の外に向かって歩き出した。


どうしても巣がどうなったか確かめたかった。


そして洞窟の外は――仲間達の死体と血の海で溢れていた。


顔があった場所に穴が開いて絶命している死体。


胴体だけの首なし死体。


全身を弓で射られている針山死体。


炭になった死体も無数にある。


老人も子供も関係なく人間達はゴブリン達は皆殺しにした。


その光景を見てゴブイチは全身の力が抜けて倒れてしまう。


ゴブイチにはもう立ち上がる力もわかない。


ゴブイチが目を閉じたその時、彼の耳にその声は聞こえてきた。


「死体が一杯あるな」


「明らかに襲撃の後があるわね」


最初は巣を襲った人間達が戻ってきたのだと思った。


洞窟で感じた恐怖がゴブイチに蘇る。そう遠くない内に死にゆく身だが、仲間達のように無残に殺されるのだけは嫌だった。


洞窟での経験を思いだしゴブイチは死んだふりをして彼らをやり過ごすことにした。


「誰がやったのかしら?ゴブリン達の死体を見るに人間の仕業よね。軍隊とか?」


「うーん、多分違うと思うぞ。もし軍隊ならここは自国の占領地だって証を残すはずだからな。見たところそれっぽいものもないし、大方冒険者の襲撃を受けたってところじゃないかな」


「冒険者?……ああ!魔族領に侵入して遺跡を荒らす奴らのことね。強いのも弱いのもいるから、魔王軍の間ではくじ引きって呼ばれていたわね」


「冒険者って魔王軍にとってそんな認識なんだ……」


新にやってきた二人が人間ではないことはゴブイチにもわかった。


雌の方は魔族特有の匂いがするし、雄の方は人間と魔族両方の匂いがする。


少なくとも巣を襲った襲撃者ではないことは判明した。


しかしゴブイチは迂闊に助けを求めることは出来ない。同じ魔族だとしても、その中にはゴブリン族を主食とするものもいる。


それは老ゴブリン達から教わっていた。


「しっかし見事に死体だらけだな。鉄臭いし。生き残りはいないのかな?」


「……それっぽいわね。でも一応生き残りを探してみましょうよ」


侵入者が此方に近づいてくるのがわかった。


それと共にゴブイチの心臓がドキドキと激しく動きだす。


自分のことを死体だと勘違いしてくれ!


ゴブイチは必至で自分達の神である魔王その人に祈るが、現実はそう都合よくはいかない。


「お!こいつ生きてるっぽいぞ」


「本当ね。ただ全身に火傷を負っているけどね」


ゴブイチはついに侵入者に発見されてしまった。




×××




アレクトとイリーナが見つけたのは一匹のゴブリンだった。


その体は酷い火傷で爛れており、その体から焦げた臭いがする。このまま放っておけばすぐにでも死んでしまいそうだった。


「おーい、生きているか?」


アレクトがゴブリンをつま先で蹴ると少しだけ反応をする。


「ゴ、ゴボォ……。ゴブゴブ……」


しかしアレクトにはゴブリンの言葉がわからない。


「なあ、何て言っているかわかるか?」


同じ魔族のイリーナならゴブリンの言葉がわかると思い聞いてみるが、彼女は首を横に振って否定する。


「残念ながら、ね。私の世話係ならゴブリン語が喋れたんだけど私は喋れないのよ。ゴブリン語って難しいから……」


「そっか……。まあ俺にはゴブゴブ言っているようにしか聞こえないしな」


そう言ってアレクトは目の前にいるゴブリンを改めて見る。


ゴブリンは衰弱していてすぐにでも死んでしまいそうだった。


その衰弱したゴブリンが仲間に刺された時の自分に重なってしまい、アレクトには何となく直視し辛かった。


その時ふとアレクトの頭に疑問がわいた。


「なあ、こいつに俺の血を飲ませたらどうなるんだろう?」


「え?それってどういう意味?」


「俺は魔王の肉体を食べて死にかけの状態から全快した。今の俺は魔王の肉体と融合したようなもんなんだろう?だったらこいつに俺の血でも飲ませたら俺と同じように全快するかなって思ってさ」


イリーナは自分の考えに没頭するため少しだけ黙ったが、やがてゆっくりとその口を開く。


「……わからないとしか言いようがないわね。前にも言ったように、本来なら父様の体は猛毒そのものよ。だからゴブリンが食べたとしたら間違いなく即死でしょうね。でも今はあなた、つまり人間が混ざっている。なんて言えばいいのかしら……強い薬があなたの血で薄められたとでもいうのかしらね。もしかしたら治るかもしれないわ。ま、確率は物凄く低いでしょうけどね」


イリーナの答えを聞いたアレクトはうんと一回頷く。


「だったら試してみようぜ。今後のためにどうなるか知っておきたい」


「いいの?せっかく見つけた生き残りのゴブリンが死ぬ可能性の方が高いと思うけど……」


イリーナの心配にもアレクトは平然と答えを返す。


「いいさ。どうせ放っておけばこいつは死ぬんだし。ゴブリンには数を期待して仲間にしようとしたんだ。だけどこいつらは既に襲撃された後。ゴブリンが一匹いたところで何の役にも立たない。だったらせめて実験動物として役立てなきゃ」


アレクトの答えにイリーナはあっさりと納得する。


「それもそうね。実験してみましょう」


アレクトは歯で親指を噛み切り、死にかけのゴブリンの口に血を垂らす。


「さあてどうなるかな?」


最初は何も起らなかった。


何も起こらないのかと二人が失望しかけた時、変化は表れた。


まずケロイド状になっていたゴブリンの緑色の皮膚が、まるで脱皮したように瞬く間に元のツルツルの状態に戻っていった。


次にゴブリンの体が1.5倍ほど大きくなった。


「おお!傷が全快したな!それにゴブリンの体も大きくなった!!」


「本当ね。こんな変化が現れるなんて……」


二人が興味深げにゴブリンを観察していると、倒れていたゴブリンがいきなり立ち上がった。


最初はゴブリンは何が起こったのかわからないといった風に辺りをキョロキョロと見渡していたが、アレクトとイリーナの姿を確認するといきなり跪いて頭を下げた。


「助けていただいてありがとうございました!!わたくしはゴブリンのゴブイチと申します!!偉大なるご主人様、どうぞ何なりとお申し付けください!!」」


いきなりの出来事にアレクトとイリーナは驚きのあまり何も言葉が出なかった。


それを不安に思ったのかゴブイチはさらに頭を下げて必至でする必要のない謝罪をする。


「申し訳ありません!!何かわたくしめが無礼な行いをしてしまったのでしょうか!?言っていただければすぐにでも直します!そしてどんな罰でも受ける所存でございます!!」


「あ、いやあ……えっと、お前、ゴブイチとか言ったけ。その、ゴブイチは最初から俺達の言葉を話せたのか?」


アレクトの苦し紛れの質問にもゴブイチはハキハキと答える。


「いいえ!最初はあなた方が使っている言語を理解していませんでした!!ですがご主人様がわたくしに血を飲ませて下さってからは理解することが出来るようになりました!頭も体もまるで生まれ変わったみたいに快適です!全てご主人様のおかげです!本当に感謝しております!!」


アレクトとイリーナは思わず顔を見合わせてしまう。


「……なあ、これってどういうことだ?」


イリーナは困ったように、でもとても興味深げに自らの推測を話す。


「多分だけど、あなたの血、より正確に言えば父様の血がゴブリンに適応した結果かしら。知能も上がっているみたいだし、体が大きくなっていることから見ても身体能力もあがっているはず。……面白いわね。あなたの血が死にかけのゴブリンを全快させた上にパワーアップさせたなんて……」


そう言ったイリーナはゴブイチに話しかける。


「ねえ、あなたにとってのご主人様って誰を指しているの?」


「わたくしのご主人様はわたくしに血を下さった方です。ですがわたくしはあなた様のご命令にも従います」


ゴブイチの答えを聞いたイリーナは少しの間何も言わず何かを考えていたようだが、何か答えが出たのかゆっくりと口を開いた。


「アレクトの血を飲ませたことによってゴブイチはあなたの眷属になったのね。だからゴブイチはあなたをご主人様って呼ぶんだと思う」


「ゴブイチが眷属に?血を飲ませただけで眷属は出来るものなのか?」


「まさか。眷属作成は創造主の魔力を眷属に変えるもの。つまりは眷属作成は新たな魔族を作り出すものなのよ。既に魔族として存在するものを眷属にすることは出来ない。でもゴブイチはあなたの眷属になっている。……勇者の肉体に魔王が寄生した結果このような不思議な現象がおきたんじゃないかしら」


「じゃあ俺が血を飲ませた魔族は全員俺の眷属になるってことか?パワーアップして?」


「そこは要検証ね。ゴブイチが偶々あなたの血に適応する個体だったのかもしれないし。というか前にも言ったかもしれないけどあなたの存在は前例がないことなの。何でもかんでも私に聞かないでよ」


イリーナの文句を聞き流してアレクトはゴブイチに話しかけた。


「ゴブイチ、お前に聞きたいことがある」


「何でもお聞きください!!」


「お前たち、つまりこの巣は誰に襲撃されたんだ?」


「人間です!わたくしは襲撃時に洞窟にいたので正確な人数はわかりませんが、少なくとも三人以上はいました。剣を持った雄に槍を持った雄、それと魔法を使う雌がいました!彼らは依頼により我々の繁殖相手を救出にきたと言っていました!!」


ゴブイチの言っている襲撃者が、予想通りゴブリンに拐われた女性を助け出すよう依頼を受けた冒険者によるものだとアレクトは確信する。


「そうか。それでゴブイチ、生き残っているゴブリンはお前だけなのか?」


「いいえ!人間達が何匹か逃したと言っていましたので、人間から逃げ延びた同胞がいるかと思います!」


ゴブイチの答えを聞いたアレクトはイリーナに提案をした。


「なあ、ここはゴブイチに任せて俺達は先にサキュバスのところにいかないか?ゴブイチ以外にもゴブリンが生き残っているのなら使い道がある。でもどこかに逃げているゴブリンを探すのも面倒くさいだろう?だったら話が早いであろうサキュバスのところに行った方がいいと思う」


「私は別に構わないわよ。あなたの方針に従うわ」


イリーナの承諾を得られたアレクトはゴブイチに命令する。


「ゴブイチ、俺達はこれからサキュバスを仲間にして再びここに戻ってくる。お前はその間に生き残りのゴブリンを探し出して手下にしておけ。巣がこんな有様じゃあまた人間が来ることはないと思うが、万が一人間が来た時は見つからないように隠れていろ。魔族が来た時も同様だ。戦闘行為は避けるように。どこか隠れられるような場所はあるか?」


「はい!さきほどわたくしがいった洞窟に隠れようと思います!」


「よし。だったら俺達は出発する。命令は必ず実現させるように」


「一命に代えましても必ずご命令は果たしてみせます!!いってらっしゃいませ、ご主人様方!!」


二人は頭を下げ続けるゴブイチを背中に、サキュバスの隠れ里へと出発した。

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