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柔らかい  作者: 花子
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 どうして僕が今こんな姿なのか解らなかった。

最後に見た景色は暗い物置の中。

かび臭い匂いを記憶している。

それなのに今は電線の上で鳩になって下を見下ろしている。


 これはきっと朝の景色。

清々しい空気。

歩道を散歩する夫婦連れ。

畑で草毟りする老人。

犬を連れた人。

ぼんやりそれを見下ろしている。

朝が苦手な僕がここ暫く見たことのなかった景色が広がっている。

風に白い花をつけたハナミズキの枝が揺れている。

鳩になった小さい体で爽やかな風を感じながら、バランスを崩すこともなく止まっていた。

いつの間にか隣に真っ黒なカラスが止まり、慌てて距離を取った。

威嚇するわけでもなく、ただのお隣さんみたいに止まっている真っ黒な姿。

変な気分になる。

さっきまでの自分が薄らしか思い出せなくなる。

最初っから僕は鳩だったのかもしれない。

居心地の良さにウトウトしてしまう。

隣に誰かが居る居心地の良さを久し振りに味わった気がした。


「いい加減起きなさい。

 こんな場所でお昼寝してたら、又父さんに大目玉喰らうわよ」

呑気な母の声が耳元で響いた。

僕が幼い頃から父に怒られる度、何度物置に閉じ込められても母の態度に救われる。

それは成長した今でもかわらない。

「やりたいことがあるならちゃんと言葉にしないと父さんにだって伝わらないわよ。

 お互いに考えていることは違うんだから

 そろそろ向き合う時期なんじゃないの?父さんとも自分とも」

 いい大学を出たのにフリーターをやっている僕の気持ちなんか父には理解できないと、

頭から決めつけていた。母にだって‥‥‥

でもそろそろ動き出す時期が来たのかもしれない。

さっき、電線の上から見た光景が脳裏に浮かぶ。

一人でグズグズ考えていても仕方ない。

今日僕は、正直な気持ちを両親に伝え動き出す。

鼻の奥にこびりついたカビ臭さより人の温もりを感じたくなった。

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