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『I prayed to...』
彼女は星空を眺めていた。
その目に映る星が、一つ、流れた。
願い事は……?
(私の願いは………)
「空」
呼ばれた声に。彼女はゆっくりと振り返った。
「こんな所に……」
―――高台に。
眼下に望むのは、街。
―――真っ黒になって崩れ落ちた、街だった場所。
「行きましょう、空……」
時島 恵は彼女の肩に手を置いた。
「ねえ、恵さん」
彼女は恵を見上げた。
「私の願いは、何かな」
「……空」
「流れ星を見ても浮かばない……私の願い事は、何かな」
「………」
恵はそっと彼女の背中を抱いた。
「……大丈夫」
「恵さん」
「あなたには私がいるから。私がいるから………」
大国『ビスタチオ』。その中枢都市である『ム・ル』が一夜にて滅んだという報が瑛己たちの耳に入るのはもう少し後の話である。
そしてそれをなしたのが。
空(ku_u)と呼ばれるたった一人の少女だと知れるのは。
それよりさらに先の事であった。
第2部 完