ノーノロイノーライフ
「もう、呪いの効果切れているよ。あたしが言うと思った?」
「言って、くれないんですか」肺助は悔しそうに唇を噛んだ。
「言わない。あたしは、強いから」
和留はわずかに肺助から顔を逸らした。肺助は一歩足を下げ、和留を引き上げて立たせた。
「呪い、使わないの?」拍子抜けしたように和留は合儀肺助を見つめた。
「おれの友達、というか相棒が、そういうことに呪いは使いたくないって。もう終わりです」
「わけわかんねえ」
和留は困ったように目を伏せていたが、やがて地面に広がっている鞄へ歩く。そして、中からスマートフォンを手に取った。と、同時であろうか、着信がある。間髪入れずに和留はそれを耳に当てた。
「あ、ちょうどよかったわ。見てた? ああ、そう。それで今しっぱ……は? オッケー? なんで? え、あ、手渡し……? 今時? 振り込みは?」
和留は目を丸くしてスマホの相手としばし通話していたが、やがて諦めたように切った。そして、じっと和留の様子を見ている肺助へ次のように言う。
「よかったね。よくわかんねえけど、もういいよ」
「何がですか」つい肺助はむっとして言うが、和留の表情はイラつきが表に出ており、それ以上は問い詰めることができなかった。和留は落ちた刀を拾い、鞘に納めると、散らばった教科書類と一緒に鞄に戻した。
「帰んないの?」
そして、和留は睨みつけるように肺助を見る。
「あ、うん、帰り、ます」
肺助はやや呆然としたが、促されるようにしてその場を後にしようとして、やっぱり振り返った。
「あの、夜風さんは?」
「あたしは料金の受け取りあっから」
そうですか、といって肺助は一瞬後ろを気にした後歩き出す。そんなことはないと思うが、背後から一刺しなど縁起でもない。と、しばし歩いて、やはりこの、背後からべっとりとねばりつくような違和感に耐えられなくなった。
「あの! なんでついてくるんですか?」
もう一度振り見ると、そこに夜風和留が、三メートルほどの距離を置いて立っていた。
「それは……その……」
なぜか恥ずかしそうに、和留は目を泳がす。
「呪い、使ってくれたら喋る、かも……」
「いや、あの、そういうのはいいので」
「そう? じゃあ教えたげる」
急に元気になって、和留は肺助の隣に並んだ。
「なんかしらんけど、料金の受け取りははいぴーの家だって」
「はあ?」
肺助は思わず大声を上げた。
「だから、はいぴーの実家、連れてってよ」
そういって、彼女は肺助の手をぎゅう、と握った。




