しおりラブレターを挟んだのは誰? ①
大昔、図書委員をしていました。
最近、米澤穂信先生の作品にハマって、自分でも図書室を舞台にした小説を書いてみたくなりました。
千葉県のとある高校の図書室を舞台にした、プチ青春ミステリーです。
高校二年生の一学期がもうすぐ終わりそうな、図書室の放課後。
千葉県、西柏市にある鶴谷城高校、その三階で、二年生の図書委員である私、朝日梨花が、閑散とした図書室(正式名称は学校図書館というけど)のカウンターの中で、新しく入荷したミステリー小説を読みふけっていると。
カウンター越しに「すみません!」と声をかけられた。
ビクっとして顔をあげると、そこには本を数冊手に持った女子生徒がいた。
慌てて本を閉じて「貸出ですか? 返却ですか?」と聞き返すと、「返却です!」とのことなので、本を受け取ってバーコードリーダーで読み込む。
本を返却するのは、三年生の森沢沙月さんという人だった。
それで、返却作業を行っていると、
「あの、借りた本に、こんなしおりが挟んであったんだけど!」
と、1枚のしおりが差し出された。
借りたときから挟まっていたらしい何の変哲もない、そのしおりには、
「すきです」
とだけサインペンらしきもので書かれていて、それ以外にはなにも書かれてなかった。
森沢先輩は、こんなメッセージが書かれたしおりを挟まれる心当たりはないそうで、「誰が挟んだかわかったら教えてほしい」と頼まれたので、こちらで調べることにした。
それで、図書委員長の山本先輩か、学校司書の山口先生に報告しようかと思ったんだけど。
これってやっぱり告白かなぁ。
だったら、あまり大ごとにしないほうがいいのかなぁと、しおりを見つめながら考える。
このしおりを挟んだのはいったい誰なんだろう?
図書室では、返却時に図書委員が本に破損がないか、なにか挟まっていないかなどをチェックする。
森沢先輩の勘違いでなければ、借りたときから挟まっていたとなると、挟みこんだのはそのとき当番だった図書委員ということになるのかな?
図書委員なのか、それが以外の誰かなのか?
それ以外の誰かだとすると、私が探すのは難しいだろうし、そもそも私の仕事じゃないかな?
森沢先輩の目を盗んで、だれかが本に差し込んだ可能性はあるけど、図書委員が犯人という前提で、少し調べてから図書委員長に相談することにしよう。
カウンターでしおりを見ながら、そんなことを考えていると、同じ図書委員でよく図書室にいる田村秀徳君が、
「朝日さん、しおりなんかじっと見つめてて。どうかしたの?」
って、カウンター越しに話しかけてきた。
田村君は、演劇部員で脚本・演出を担当しててわりと有名な生徒で、彼が手掛けた舞台は学内外でけっこう評判がいいらしい。
以前、図書室のおススメ本を選ぶときにミステリー小説の話題作の話もしていたので、なにかのヒントでもくれないかと、森沢先輩の名前を伏せてしおりのことを話してみた。
だけど、
「えー『調べたけどわかりませんでした』って言って、しおりを捨てちゃえば?」
とそっけない返事。
ミステリー小説好きのくせに! 相談して損した!
ムカついたので、
「図書委員として、私が頼まれたんだけど」
と、ややムッとした感じで言うと。田村君が慌てて、
「ごめん、ごめん。その日の当番の図書員が怪しいんでしょ。誰が担当していたの?」
「それが、一人は二年生の古谷豊君なんだけど。
もう一人は用事があったらしくて、ワンオペでやってたんだって」
「あー、確かに古谷って図書委員だったね」
「4組の図書委員だってことは知ってるけど、私もほとんど話したことないんだ」
「あいつ、野球部だからかあまり図書室に来ないし、委員会も欠席しがちだしな」
図書室で図書委員がやる仕事と言えば、図書カウンターでの本の貸出と返却がメインだ。
基本的には二人体制で週一ごとにカウンター当番を交代していくけど、担当する生徒の都合がつかないときは他の図書委員が代理を務めるか、一人で回したり、図書委員長か副委員長、書記の図書委員会三役が変わってくれることも多い。
それで、図書委員は各クラスから二名選ばれるけど、図書委員会などには一人出席すればOK。
正直、出席率は悪く、野球部の古谷君を一学期最初の定例会以外で見かけた記憶がない。
ただ、野球部のほうで名前を聞く生徒なので、私も田村もなんとなく知ってはいた。
「それなら、古谷が犯人で決まりじゃない?」
「でも、古谷君だったら、しおりに挟んで告白、なんてまわりくどいことする?
彼ってけっこうやんちゃ系じゃない?」
「やんちゃ系っていうか、ワイルドヤンキー系?」
「それに森沢先輩も、古谷君から渡されたんだったら、本人に言えばよくない?」
「迷惑だったんじゃない? 後輩だぜ。遠回しに断りたかったんだとか」
「あー、そっちかー」
「なんなら、俺から古谷に聞いてみようか? 誰からの依頼だとかはぼかして。俺も親しくはないけど、同じ図書委員だし」
わー助かる!
こんなの私なら絶対聞きづらいのに、さすが演劇部でブイブイ言わせている人は違うわ(偏見)。
さっそく、古谷君に話を聞きに行った田村君がすぐに戻ってきて「古谷、知らないってさー」と言い放った。
本当かなー? あやしいけど、これ以上は聴く方法がないかな。
そこからとくに進展がないまま一日が過ぎたんだけど、事件は違う形で動いた。
古谷君が昼休み中の図書室で、ある図書委員の女子生徒と口論になって泣かせてしまったのだ。
古谷君が強めに女子生徒になにか言ったところ、女子生徒が泣き出したらしい。
その場にいた図書委員が間にはいって対応したそうだけど。
なぜかこの件で、私と田村君が、図書委員長から呼び出しを食らうことになってしまった。
放課後の図書準備室には、三年の図書委員長の山本凛先輩と、副委員長の小池唯先輩の、りん・ゆいコンビがいる。
二人は私が所属する文芸部の先輩でもある。
その横には、二年生の図書委員の深津恵美さんもいた。
「朝日さん、田村君、なんで呼ばれたかわかってる?」
「いえ、わかりません」
「昼休みに、二年生の図書委員の古谷君と、一年生の図書委員の内藤さんがもめたことは聞いている?」
うなずく二人。
「じゃあ! その原因があなたたち二人にあるってことは(怒)」
えっ? なにそれ! やばい! 山本先輩、怒っている!
お怒りの山本委員長から聞いた話は、次の通りだった。
昨日、田村君が古谷君に、
「朝日さんから聞いたんだけど……」
①ある生徒が借りた本に「好きです」と書かれたしおりが挟まっていた
②借りたときにはすでに挟まっていたらしく、図書委員の誰かが挟んだ可能性が高い
③その時の当番は古谷君だったんだが、なにか心当たりはないか
と質問し、古谷君は「心当たりはない」と答えた。
ここまでは知ってたけど、次の日、一年生の図書委員の内藤みかさんに、なぜか古谷君が「なにか心当たりがないか」と、強い口調で問いただしたそうだ。
内藤さんも「心当たりはない」と言ったそうだが、古谷君が納得せずに攻め立てたそうで、ついには内藤さんが泣き出してしまった。
それを見ていた図書委員の深津さんが間に入って、なんとかしたそうだ。
へー、深津さんって学校内でも評判の美人で、とてもおとなしそうに見えるのに、あの古谷君に立ち向かうなんて、そんな勇気のある子だったんだ、意外。
なんて考えていたら、キっと山本先輩が睨んできて、
「どういうことかわかる?」
と聞いてきたので田村が、
「古谷が、内藤さんにカウンター当番を変わってもらってたんですね」
って答えた。
あー、そういうことか。
図書委員は、カウンター当番の都合がつかない場合、委員同士で融通を利かせてよいことになっているけど。
私も含めて文科系の部活の図書委員は、図書室に入り浸ってて、部活などが忙しい生徒から頼まれると、気軽にカンター仕事を引き受けてしまいがちだ。
それで、どうやら古谷君はしょっちゅう内藤さんに代理を頼んでたらしく、そのうえ自分に好意を持っていると勘違いしてたらしい。
なのに自分以外の生徒に「すきです」ってしおりを渡したのではないかと、厳しく追及して泣かせてしまったらしい。
この件は、表向きには図書委員の活動のことで二人の間に誤解があって口論になったことにして済ませることになったんだけど。
元々は女子生徒からの相談を受けた私が田村君に相談して、田村君が古谷君に問いただしたのが原因なわけで、
「朝日ぃ、なんで! 私に報告しなかったの!」
と山本先輩がお怒りなのは、ごもっとなことでした。
私は、図書委員として本の貸出に関連することはなるべく隠さないといけないと思ったこととか、プライベートな問題なので慎重に進めないといけないと思ったなど、しどろもどろに答えたのですが。
山本先輩は「それって私が信頼できないってこと!」とさらにお怒りになり、火に油を注ぐ結果になってしまい、隣にいた小池先輩と深津さんが、なんとかなだめてくれました……。
それで、深いため息を吐いた山本先輩から、
「確かに、あまり大事にしたくないのはそのとおりだから、引き続き、あなたたちで、なにが起こったのか調べなさい! 心配だから、深津さんもいっしょにお願いします。
特に朝日ぃ、まじめで仕事熱心なのはいいけど、抜けてるところがあるから気をつけてね」
という指示を受けることになりました。
わかりました! りん先輩!
「私からも。もう少し文芸部でもそのやる気を見せてね、朝日さん」
はーい、ゆい先輩! 気を付けます!
図書室の知識については、調べて書きましたが。
時代や地域によって違いがあるので、ここは違うかな?というところあったら、ご意見ください。
ご感想をお待ちしています。




