第九話 餓鬼道2 / 眠ってばっか
適当なことを言って元気付けようとしているのが見え見え。
ヨウはもう何の気力もない、どれだけ時間が経とうとも何の欲求も見たそうとは思わない。
そんな状態のヨウを見て次々に励ます文字が浮かび上がった、けれどその全てが現状のヨウに意味をなさなかった。
かなりの時間が経ち次第に文字も浮かび上がらなくなった。
希望もないけれど絶望もない……。そんな空っぽのヨウは、なにかを考えることを既に放棄している。
そんなヨウをどれだけ時間が経っても落ちない日が照らし続けている――
『咽の乾きを感じるが、潤そうとは思わない。』
するとまた文字が浮かび上がった。
その文字は今までとなにか違う。勘違いかもしれないがほんの少しだけ光度が増していたように感じる。
(もうこれで最後にする……。君がこれで動かなかったら私は二度と君の前に現れない。)
そう高らかに宣言するがヨウはとっくの前からその文字を見ても何の感情も湧いていない。
(……君はずっと辛い思いをしてきた。近くにいるはずの人と一緒にいるだけで気味悪がられる。あまり気にしてなかったかもしれないけれど、確かに心の負担になってた)
何で知ってるの? と不思議に感じたヨウは文字に少し興味を持ちはじめる。
(色々なことが重なって、親にも素直になれないしうまく行かないことの方が多いって感じてる)
見れば見るほど自分しか知り得ない情報が浮かび上がる。残りわずかな力を振り絞り身体を起こす。
(消えたいなんて思うことはしょっちゅうある)
「……さい」
(けど誰にも言えない)
「……るさい」
(だったらさっきのごめんなさいはなに?)
ヨウは文字を力いっぱい殴った――
「うるさい。……もうそんなこと思い出しても意味ないんだよ。もっと素直になればよかったなんて死んでる今じゃ遅いんだよ」
完全に枯れていた涙は少量だけどヨウからでてきた。
(もし悔いが残ったままならその悔いは絶対になくなる。……だからお願い、自分を強く持って。生きたいって強く願って)
「……生きたいよ。ちゃんとみんなに謝りたいよ。でも、もう出来ないよ」
ヨウの起こした身体はまたうずくまり丸くなった。
そしてまた別の文字が浮かび上がった。
(……だから、一緒に探そう。ヨウ、君がここからでる方法を)
直近の出来事でぐちゃぐちゃになった顔のヨウ。そんなヨウは文字を見つめる。
「ほんとに? 一緒にいてくれる?」
(ずっと一緒)
「ゼッタイ騙さない?」
(絶対に騙さない)
あの世に来てから散々な目に遭ったヨウだったが直感的に浮かび上がってくる文字は嘘を付いていないように感じる。
信じる理由もよくわからないのだが本能的なところもあるが、一番はあの世に来てから所々に感じる『暖かさ』と『安心感』それをこの文字からも感じたのがヨウの中で大きかった。
(もう大丈夫だよ。なにがあってもずっと一緒たから)
ヨウはそれを見て大いに安心したのか、また少し眠りについた。
(……眠ってばっかなんだから)