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第五話 岸は
舟が動き出したあと遠くの方で誰かが小言を呟いているのに気がついた。
「ひとつ積んでは父のため、ふたつ積んでは母のため、みっつ積んでは……」
そう呟きながら数人いや数十人以上の子供達が石を積み上げていた。その子供達は今時の服装から教科書でしか見ないような古い服装の子供までいた。
「逃げて、早く。ここにいちゃ……」
ショウ?に腕を掴まれながらも子供達に危険を伝えるが、声はすぐにでなくなった。
なぜなら子供達の後ろからこの世のものとは思えな生物が歩いてきたからだ。
「なに、あれ……」
まるで想像の世界でしか存在しないと思っていたが目の前にいるそれは本などで見たことがある鬼そのものだ――
その鬼は子供達が積み上げた石を無情にも崩していく。けれど子供達は一切の表情を変えずまた、もくもくと石を積み上げはじめそれと同時に全く同じ小言を発する。
恐怖で震える身体。鬼が出てきた瞬間からなにもできずに、ただゆっくりと子供達の姿が遠くなっていく。次期にそれらは霧に隠れていった。
もう岸は見えない――