第三話 不思議な冒険の始まり
「……それじゃ、いってきます」
ヨウは玄関前で父親と母親二人と対面していて、その格好は遠出をする格好だ。
「本当に一人で行ける? 駅まで送ってあげよっか?」
「べつにいいよ、一人で行けるし。それにショウがいるから一人じゃないし」
「……そうね」
素っ気ない態度を見せ家を出ていくヨウ。
玄関のドアがしまると母は少し不安そうな顔を露にした。
そんな母を父がそっと慰める。
「大丈夫だよ」
「……正直あそこには行ってほしくない」
「……。ヨウが帰ってきたらしっかり話そう」
もうショウはいないってことを――
ヨウは家を出たあとすぐに駅に向かった。
そこでショウと合流し二人は電車で三時間以上かけて片田舎の祖母の家に向かった。
「おばちゃーん」
家の扉を開け大きな声で呼ぶと奥から祖母がゆっくりとあるいてきた。
「元気な声だね。今日は一人できたんかい?」
「うんうん。ショウと一緒に……。あれ? どこ行ったの?」
つい先ほどまで一緒にいたはずのショウの姿が消え誰もいなかった。
「ショウちゃんと一緒に来たんかい」
「さっきまで一緒にいたんだけど」
「……まぁ、おあがり」
ヨウはいなくなったショウのことが少し気になるが、数年前からショウはポツリと消えることがあるのであまり気にしすぎずヨウは祖母の家に入った。
それから数時間がたち、祖母は畑に行く準備をはじめた。
「すぐ帰ってくるからね」
「うん。わかった」
「外に行きたくなったら、行っていいからね」
「わかった」
「……川には行っちゃダメだよ」
にこやかだった顔がほんの少し固くった……
「行かないよ。水着持ってきてないし」
それに対して笑いながら返した。
祖母はそれを言い残し畑へ出掛けていった。
数分たちヨウはゴロゴロと大の字で寝転んでいた。
「あー、ひまだなー。ショウどこ行ったんだよー」
ここにいるよ。
ふと横を見ると、家の外にショウが立っていた。
それに驚いたヨウ。外へ出てショウのところへ向かう。
「どこ行ってたの?」
川に行こう。
「え? おばあちゃんダメって行ってたよ」
ちょっとだけだから。
ヨウはそう言ってはいたものの川に行きたいと思っていた。ちょっとだけなら、そう考えたヨウはショウと共に少し先の川へ向かった。
「空気もすんでて誰もいない。最高の空間」
ヨウは大きく深呼吸をした。
森の中にある川、そこは人の気配がない圧倒的自然の中心。
日頃のストレスをマイナスイオンが軽減させる。
ショウが石の上を小走り川辺に近づく。
するとショウの前を狐が横切った。ショウはそれに見向きもせず川へ一直線に向かっていった。
そしてそのままショウはしゃがみこみ川の水を触った。
ヨウは狐を少し目で追ってから、ショウのところに行き同じく川の水を触る。
「冷たくて気持ちー」
二人は同時に靴を脱ぎ靴下を脱ぎ川に入る。
膝下くらいの深さまで進んだヨウ。振り替えるとショウの姿がなかった。
「またどっか行った。ねー、どこいったのー? ショウー」
大きな声を出して名前を呼ぶが返事がない。
もう少し川に入っていたかったヨウ。けれどショウもいないしもうそろそろ祖母が帰ってくると思い出ようとする。
が、足が滑りその場で尻餅を付く。
「あー最悪全身びちゃびちゃ。おばあちゃんに怒られる」
立ち上がろうとしたら、何かに手を捕まれた。
振りほどこうとしたが、それはヨウ力では振りほどけずそのまま川へ引っ張られる。
かなり奥まで引っ張られたヨウは既に足が付かない深さにいた。
溺れている恐怖に身体は無意識的に浮かぼうと、もがくが川の流れが強くヨウは無力にも流されていく。
死ぬ死ぬ、死んじゃう。……あ、なんか前にもこんなこと――
ゆっくりと沈んでいく身体。
私はそのときに本当に死を覚悟しました。
だけど気がつけば私はどこかへ流れ着いていて、さっきまでの森のような違うような霧の濃い場所にいました。