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第二十七話 畜生道7 / ラスト、バトル

 外へ出ると、リングのようなところで二人の畜生が戦い合っていた。

その光景の意味がわからない、なぜ戦っているのかまず理由があるのか、それすらわからない。

 ヨウはリング近くの椅子に座らされた。

その瞬間近くにいた三人の女性がヨウを椅子に拘束しはじめた。


「止めて、あなたたちはなんで逃げないの?」


 問われてもなにも話さない。他の畜生と同様に話せる知能がないのかそれとも話さないのかわからない。

それを見届けヨウを連れ出した畜生はまた同じ建物の中へ入っていった。

 ようはもう一度女性たちに問う。


「ねぇ私たちはアイツらに襲われる、だから逃げないと」


 なにを言ってもなにも帰ってこない。三人の女性はよく見れば全員お腹が膨らんでいる。

拘束が終わると女性は全員別の建物の中へと入っていった。


「私も、あぁなっちゃうのかな。……嫌だ、怖いよ。シン早く助けにきて……」


 その後も目の前で戦いが続き、そして決着がついた。

片方はその場に倒れもう一人は堂々仁王立ちしている。あまりダメージを食らっていないようだ、スタミナもかなり余裕がありそう。

そしてその畜生はヨウに近付き、椅子ごとヨウを三人の女性が入っていった建物へ連れていく。

縛られているせいでなにも抵抗できない。

 そしてその建物の中へ入ると、目の前にシングルベットサイズの藁が敷かれていた。

ヨウはその時、察した。

自分はこの戦いの景品で自分を掛けて畜生どもは戦っていたのだと。

 中にいた女性はヨウの拘束を解き、三人掛かりで抵抗するヨウをその藁に寝転ばせた。

一人はようの両腕を押さえ、一人はヨウの足を押さえ、一人は畜生の服を脱がしその後ヨウの衣服を脱がしはじめる。まずは上を脱がせる範囲脱がしそして下を脱がしはじめる。

 もちろん抵抗したが押さえられてる以上すぐに止められる。

ズボンと下着に指を入れ脱がされる一歩手前、もうダメそう思った瞬間「試合、申込んでもいいか?」と声が聞こえた。

 声の聞こえた方を全員見る。

そこにはシンの姿があった――


「悪い、遅くなった」


 シンは畜生にジェスチャーをし、挑発するかのようにかかってこいと指を動かしシャドウボクシングをした。

それを見るや否や畜生は腕を出し、すかさず女性は脱がした服を渡した。


「そうこなくっちゃな、クソ生物が。……ちょっと待っててくれ、ぜってぇ勝つからよ」


 それを言い残し二人は先程と同じリングに向かった。

ヨウは服を着させられ、もう一度椅子に拘束される。そしてさっきと同じ場所に移動した。

 シンが先にリングに入り畜生はその後ろにつく。

二人がリング入った瞬間、畜生は後ろからシンに殴りかかった。


「危ない」


 ヨウのその声で咄嗟に振り返ったシンはギリギリで避け、カウンターの左フックを合わした。

それにより少しだけのけぞった畜生。


「へいへいへい、ヨウが目当てなんじゃねぇのか雑魚じゃねぇか」


 格闘家のようにシンは前後に足を入れ換える。

畜生の顔は明らかに怒っている。

右手でストレート気味に殴りかかった畜生に今度はボディに左ストレートを食らわした。

腹を押さえ、物凄く苦しそうにしている。


「俺はフェサー級テメェは俺より何回りも大きいミドル級なのによ、やっぱり馬鹿と経験者が同じ土俵にたつのがおかしいよな」


 その後もシンが一方的に有利に立ち回り、畜生を圧倒していく。


「ほらほらどうした、子作り一歩手前まで行ったのに手も足も出ない俺にも降参するのか。そっちのほうが助かるけどな」


 リングをゆっくりと歩きながら言い放つ言葉。意味は理解してないが、怒りが頂点に達した畜生は大きな唸り声をあげた。


「声をだしゃ勝てる相手じゃ……」

「いやーーー」


 ヨウの叫び声が聞こえ咄嗟に振り返ると、近くにいた女性がヨウに鋭利な物を突き立てていた。


「おい止めろ、このクソ女が」


 その瞬間、後頭部に強い衝撃が走った。シンは後頭部を押さえその場に四つん這いになった。


「シン……」

「後頭部は反則だろうがよ」


 畜生はその後も容赦なくシンをボコボコに蹴りはじめ、仰向けにしマウントをとって顔面を必要以上に殴り続けた。

 絶望その一言につきる。


「止めて……もういいから」


 それを見てられないヨウは言葉を発するが何の意味もない、畜生はずっと殴り続ける。


「なんでもする、あなたの欲の吐き出し口になるしあなたの子供も作り続けるし。……だからもう止めてそれ以上は、シンが死んじゃう」


 満足したのか畜生はタイミングよく殴るのを止めた。顔面がぐちゃぐちゃでいたるところから血が出ている。

唾をシンに吹き付けリングから出ようとした、そのときに畜生は後ろから視線を感じ振り返った。

 そこには殺したはずのシンが立っていた。


「……まだ、終わってねぇぞ……とっとと……こいや」


 シンは両手を構えた。スッキリしたはずの畜生の顔はまた苛立ったように変化した。

大きく振りかぶり左フックをした畜生にシンは同じく左だけどストレートを力一杯合わした。

シンはその時、合わしたカウンターは何秒にも何分にも感じた。それぐらいゆっくりと確実に畜生の顔面にめり込んだ。


「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」


 畜生はそれでも立っていた。


「……マジかよ」


 けれどすぐに白目を剥きその場に倒れた。

息を荒し簡単ではなかった戦いに勝利したシンは腕を空にあげた――

 大きく息を吸い込み吐き出す、シンはすぐにヨウのもとに行った。


「……ヒヤッとしたか?」

「ふざけないでよ。ほんとに死んじゃうかと思った」


 ヨウは泣き出した。シンはヨウの拘束を解きはじめる。その間周りの女性はなにもせず突っ立っていた。

拘束が解けるとヨウはシンに抱きついた。

シンもすぐにではないが抱き返した。


「助けにこないんじゃないかって思って、ほんとに怖かった」

「……ごめんな、遅くなってよ」


 そうしていると遠くから畜生の唸り声が聞こえてきた。

シンは少ししゃがみヨウと視線を合わせる。


「ともかくここから出るからな。担ぐぞ」


 シンはヨウをお姫様抱っこしてどこかへ走り出した。


「ここからって、シンここがどこか知ってるの?」

「キムワから聞いた、そんで出る方法もある」

「方法って?」

「あの滝だ、俺が拠点にしてたあの場所に落ちればキムワ曰く畜生道から出れるとよ」


 シンは傷だらけでヨウを抱えて走っているが、一回目と比べて当然状態が違う。だから当然スピードもかなり遅くい。


「ッチ、流石に満身創痍じゃ元陸上部の俺ですらノルマに追い付かれるな」


 滝の洞穴の距離まであと一キロと言うところまで差し掛かったタイミングで畜生どもが見えはじめた。


「あークソっ、ヨウはこのまま、まっすぐ進むと洞穴につくから先に飛び込んどけ」


 シンはヨウをおろしそれを言い残した。


「ねぇシン、シンはどうするの」

「俺は雑魚どもを片付けてから追いかけんよ」

「ねぇダメ、シンも行こ」

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ、ここでお前が捕まってヤられたら意味ねぇんだよ。だからさっさと行けや」


 シンはようの背中を優しく押した――


「シンっ」

「……大丈夫だ、気にすんじゃねぇよ」


 背中を向けながらヨウにぐっと親指を立てる。

ヨウは唇を噛み、走り出した。


「それでいいんだよ」


 大きく息を吸い込み「かかってこいやぁ」と大勢の畜生に向かって発した。


 ヨウは泣き、その涙を拭きながら走り、ようやく滝の洞穴についた。

そこでヨウは我慢できず、大声で泣いた。

滝を目の前にしてその場に座り込み大粒の涙を流した。


(ヨウ、元気出して)

「キムワ……」

(シンならきっと大丈夫だよ)

「あんな大勢、無理だよ。血もいっぱ出でてたし全身傷だらげ、なのにここまで私を運んでくれた……。そうしてまで助けてくれたのにこんな終わり方あんまりだよ」


 拭っても拭っても永遠と涙は溢れ続ける。


(……シンは君を助けたい一心だった。それに嘘偽りはないって、わかるよね)

「うん……」

(こうなることは予想してたと思う。ここは地獄でなにが起こるかわからない。なのにそれでも助けたいと思ったシンの気持ちはヨウが助からなきゃ報われないと思う)

「……でも」

(でも、じゃないここで止まってたらシンがヨウを助けたのが無駄になる。だから無駄にしないためにも、動かなきゃ)


 ヨウは今の気持ちを少し押さえゆっくりと立ち上がる。涙はまだ絶え間なくで続ける。

だけど一人の畜生が洞穴に入ってきた。よだれを滴し今にも襲ってきそうな感じだ。


(逃げて)


 それをみたヨウは、トラウマと恐怖でその場に座り込んでしまう。感情もぐちゃぐちゃでなにが何だかわからない。

 唸り声をあげてヨウに畜生は飛びかかった。

 その瞬間畜生は右に飛んでいった。


「へ?」


 飛んでいった畜生を見て、前を見るとシンが立っていた。


「あぁ、あぁぁぁシン、シン」


 ヨウはシンに泣き付いた。

シンはそんなヨウを普通に抱っこして、滝を飛び下りた。


「とっとと行けって言っただろ」


 怖がらせてごめんな、ヨウ――


 すぐに滝壺に落ちた二人。けれど二人とも絶対離さないように強く抱き合っていた――






「ヨウ、ヨウ。ヨウ」


 身体を揺すられながらシンに起こされた。

目を覚まし「シン?」と言いヨウは起き上がる。


「……ここは?」

「ここ、やべぇぞ」


 二人はまるで業火のように熱い場所にいた。

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