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第十九話 人間道1 / そんなはずない

 毎日通る道、なんだか懐かしく感じる。

ただ歩いているだけでいつもとは違う感情になる。


「なんだか、スッゲー楽しい」


 ヨウは日常を過ごしているだけなのに嬉しい気持ちが抑えられず、つい走り出してしまう。


「ヒャッホー」


 なにも考えず、なにも気にせずただただ走る。

けれど思いの外息が切れるのが早くすぐに膝に手を付く――


「はぁはぁ、あれ?こんな体力なかったっけ?」


 自問し顔を前に向けることが出来ず地面を見ていると文字が浮かんできた。


(悪いけど、ヨウはまだ地獄を抜け出せてないよ)


 キムワだった。

ヨウにそれは信じられなかった。まるで現実そっくりな地獄だとは。

 息が切れ走るのがしんどいけれど学校へと急いで向かう。キムワを無視して。


 そんなわけないそんなわけない。だってパパもママもいたもん……。


 見た文字は幻覚だと思いこんだ。まだ寝ぼけているのだと、そう思った。

けれど走っても走っても文字は出てくる。


 やめてやめて、やめて。

「……やめて」


 とうとう叫んでしまう。その声のボリュームに周囲は驚きヨウを見る。

すぐにそれに気付きヨウは無言で歩き出す。

キムワはその後もずっと出てきたがヨウは頑張って気にしないようにしていた。

 数十分たち学校に付く。いつものように教室に入り、友達と戯れていたらホームルームが始まる。

その後、授業が始まる。

その頃にはヨウの体調がかなり悪くずっと気持ちが悪く、吐きそうだった。

それを大きく息を吸ったりはいたりして抑えていた。


 あれは幻覚、あれは幻覚。


 そう言い聞かせるが、キムワはここ(地獄)についてのことを話し始める。


(ここは人間道。今だ見ているもの聞いていること感じていることの全てが現実と酷似してる。だから間違えるのも無理はないけど全部全部、本当じゃない)


 見て見ぬふりをする。そうしないと耐えられない。

もし仮にこれが現実ではなく地獄ならヨウは自分を保てない、それに父と母から感じたあの温もりが現実ではないと考えたくない。

 けれど一文、キムワが出したその一文がヨウを動かした。


(人間道は一人一人の記憶や思い出で構成されてる。けれど例外があってヨウが死んだと認識してる人は存在しない。だからショウはこの世界の人は誰も知らない)


 それを見た瞬間血相を変え立ち上がる。


「木佐木さん、どうしたの?」

「……先生体調が悪いんで帰ります」


 そう言ってヨウは支度を済ませすぐに帰る。


 そんなわけないそうなわけない。だってショウは生きてるもん。


 走れないヨウは歩き帰路に着く。その間ずっと服の胸辺りをずっと握っていた。

 数十分たち家に着く。玄関を開けガチャンと音がなった。すると母がリビングから出てきた。


「ヨウどうしたの? いま学校から電話があって」


 大丈夫、ただ聞くだけ『ショウってどこにいるの?』って。


 ヨウは見上げ母と目を合わせ、生唾を飲み込んだ。


「……ねぇショウってどこにいるの?」


 母は首を傾けこう言った――


「ショウって誰?」

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