第十一話 餓鬼道4 / 満たされる幸せ
その光はほんの僅な時間光り、次目を開けたときには消えていた――
突然の現象に驚いたが、ヨウはそれ以上になにかが光った辺りの場所に目を輝かせた。
そこには十分な飲み水と食料があった。
ヨウはなにも気にせず目の前にある飲食物に向かってゆっくりと進んでいく。
残りカスの体力をかき集め、立つことは出来ないが腕と足で匍匐状態の身体を動かし少しずつ確実に近寄っていく。
ようやく手の届く位置まで着いた。
ヨウが一番最初に手に取ったとは瓢箪の中にある水。身体を起き上がらせられないヨウは匍匐の状態で中にある水を咽に通していく。
少しだけ飲むと嘘かのように腕に力が入る。そのまま身体を起こし、一気に水を飲みはじめる。
かなりの量を飲み咽の乾きが潤った。
次は食料。それも目の前にあるものを手に取り次から次へと口に運んでいく。
味を感じる、噛む感触がある、それが咽を通れば腹が満たされる。それと同時に心も満たされる。
普段の食事では感じたことがない感情に涙があふれでそうになるが、まだ涙は出ない。
《なにか食べられる》当然に思えていたことがこれ程までに満たされる幸福をもたらすことなのだと改めて感じれたヨウは目の前にある食料を一切残さず食べきった――
両手を合わせて心をこめて「ごちそうさまでした」といままで以上に感謝をこめて言った。
心も身体も満たされ自然と笑みが溢れるヨウは空腹時には気にも留めていなかっかことがことが気になりはじめた。
なぜ頭上が光ったのか、そして光が消えると飲食があったのか? その全てが不思議でよくわからない。考えても考えても結論が出ない。
奇跡なのか餓鬼道においてよくあることなのかもわからない。
けれど満たされた今はそれよりも『ここからでる方法を探さないと』と考えた。
すると突然地面に文字が浮かんできた。
(お腹いっぱいになった?)
「ほんと十分過ぎるくらい」
(それはよかった。……本題なんだけど餓鬼道からでる方法探しといたよ)
タイムリー。ちょうどその事を考えていたヨウは飛び付き方法を聞いた。
(ここから少し先に小さなお寺があったの、もしかしてそこに入れば餓鬼道からは出れると思う)
「本当?」
(うん。けど地獄は餓鬼道からじゃ出られない)
「……そう、なんだ」
(ごめんね、いっぱい探したんだけど)
「いいよ、探してくれただけ嬉しいし。今度は二人で探そ」
文字はその後ヨウを寺に案内する。
その道中ヨウは文字にあることを聞く。
「ねぇ、その文字さ名前とかあるの? 名前あるんだったらその方が私呼びやすいし……」
(……キムワそう呼んで)
「キムワね、わかった」
ヨウはその後すぐにキムワが言っていた小さな寺に着いた。
その寺は見るからに古く小汚ない、管理されていないような外観。
そこにはいるのは少しだけ嫌だったが餓鬼道にいるとまた同じような苦しみを味わうことになる。
背に腹を変えられないヨウは我慢し寺に近付いた。
賽銭箱を避けその奥にある扉の前に立つ。
施錠はされていない。留め具をはずし扉を開けようとするが老朽化により扉がかなり開けずらくなっていた。
「重いー」
力を振り絞りやっと扉が開いた。開いたことに安堵し中へ入ると、建物のなかじゃなくて外にいた。
不思議に思ったヨウは振り返ると賽銭箱が見えるはずなのに、それがなかった。




