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第27話 正体がバレる

連日アシュレイに相手をされず、暗い表情を浮かべていたセリーナに声をかけたのが始まりで、それから何度も言葉を交わすようになり、ティムの優しさに惹かれて、ティムもセリーナの話が楽しく、二人はそのまま距離を縮めたようだった。

二人の仲がまとまり、アシュレイは王様と王妃を見る。


「二人の仲を認めていただきたい」


腰を折り、アシュレイがそう願えば、王様と王妃も仲睦まじい姿を優しく見つめ、それを承諾した。


「では、兄さまはアリアさんとご結婚すればよいではありませんか」


当然、王太子殿下としてと、ヴァレンスが名案だと言わんばかりに瞳を輝かせる。次期国王など、自分には荷が重すぎるとヴァレンスはどうしてもアシュレイに継いで欲しいのだ。

確かにアシュレイが王位継承権を破棄する意味はなくなったわけで、私も好きな人と結婚できるわけで、でも、それで国民に示しはつくの?

どうしようとヴォルフガングに視線を向けたら、


「見事にバレてしまったようだな」


と、困ったように苦笑していた。



パチパチパチ……



突然巻き起こった嵐のような拍手に、私は慌てて周りをみれば、いつの間にか街の人たちが戻ってきていて、いつから聞いていたのか分からないけど、



『王太子殿下、ご結婚おめでとうございます!』

『ティム様も聖女様をお願いね』

『アラステア国にドラゴンがいたなんて、驚いたな』

『アシュレイ王太子殿下が、ドラゴンの娘と結婚だなんて、すごいぞ』

『こりゃあ、盛大に祝わないとな』

『王太子殿下、式に使う花はうちに任せてください』

『だったら、果物はうちの店が……』

『ドラゴンの食事はお肉かしら?』



すっかりお祝いムードに染まり、ヴォルフガングたちの正体もバレちゃったけど、街の人たちは怯えるどころか、盛大に迎え入れ、喜んでくれた。

みんなに祝福されちゃったら、断る理由もなくなってしまって、ヴォルフガングはアシュレイの元に向かうと、なぜか胸倉を掴み上げた。


「此度、ふざけたことを抜かせば、その首を落とすぞ」


王太子としてこの世に生を受けた者が、身勝手にその国を捨て、国民をも捨て、王位を誰かに譲るなど二度としてはならぬと、心臓を射抜くほどの眼光で睨めば、アシュレイは心の底からヴォルフガングに謝罪した。

国を捨てるなど、王太子として恥じる行為だったと。しかし、それほどまでにアリアを愛していたとも伝える。


「ならば、娘を不幸にすればどうなるか分かっておるな」

「承知の上だ。俺はアリアを永遠に愛すると誓う」

「ほう、大きく出たな」

「娘より先に死ぬなよ」


アシュレイが先に行けば、アリアが悲しむことになる。何があっても生き延びろとヴォルフガングが言えば、ルーフェスも口を挟む。


「そうよ、アリアちゃんを一人にしないでよ」

「孫を悲しませれば、儂も黙っておらん」


ドラゴン3人からの圧に、アシュレイはゴクリと唾を飲み込むと、


「当然、アリアを守ってくれるのだろう」


と、挑発してみる。自分一人では限界がある、しかし、ドラゴンが3体も傍に居れば、アリアの安全は守られる。そう見込んでアシュレイは傍にいて欲しいと含ませる。

それを汲み取ったドラゴンたちは、いい笑顔を見せた。


「俺様の部屋は娘の隣だ」

「私は、バルコニーのある部屋がいいわ」

「儂は庭だ」


それぞれの要望を聞き入れた部屋を用意すると、アシュレイは城を増設することを決めた。

もちろん、王様も王妃様も街の人たちも大賛成。ドラゴンがアラステア国に滞在してくれるなんて、頼もしすぎると、盛大な歓声が上がり、ヴァレンスはドラゴンの背に乗るチャンスが3倍に増えたと、密かに喜んでいた。

それに、私の魔力が最強である事までアシュレイが口にするから、街中の歓声が割れんばかりに響き渡った。

元ライアール国のワイバーン襲撃にて、ワイバーンを一掃したのはアリアであり、現アラステア国に強力な結界を張っているとさえ紹介して、まさに英雄だと称えられてしまった。


(どうして余計な事言うのよっ!)


と、アシュレイを睨めば、なぜかお姫様抱っこされ、クルっと一回転する。


「俺の妻に相応しいと、皆に示したまでだ」

「妻って――っ……」


その響き、とてつもなく恥ずかしいんですけどぉ。


「手放すつもりはない。愛しいアリア、俺の傍にいてくれ」


真剣な眼差しを向けられたら、顔が沸騰した。どこを見ていいのか分からなくなって、空を見上げたら、チュッと、耳に口づけが落とされた。


「なっ、……に、を」

「唇は結婚式にとっておくが、キスをしたくなった」

「したくなったって……」


アシュレイって、こんなにも自分に素直だったかしら? と、困惑していたら、今度は首筋にキスをされた。


「何なのよ一体っ」



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