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第23話 アリアとアシュレイ到着

その間に、ローレンは3人にこの場を離れるように言う。


「ローレン、それは出来ません」


聖女として王妃として、この場を離れるわけにはいかないとクレアが留まる。


「クレア様、アリアが来てくれます。私たちがここに留まれば、邪魔になります」

「アリアさんが?」

「ヴォルフガング殿と、アリアの邪魔はしたくないのです」


彼らは必ずアラステアを助けてくれると、ローレンはクレアを説得する。それを聞き、クレアはようやくローレンの手を取る。

早くこの場を離れなければと、亀裂の入る結界を背にローレンは王妃であるクレアを守りながら、どう逃げればいい? と、思考を巡らせる。

とにかく街の外へと、ティムに合図を送ったその時だった。


「とっとと儂に返せぇぇッ――! ヌワァァア゛ァァァ―ッ」


レンブラントの雄たけびと、その口から雷霆が走る。まさか雷を吐きだすとは想像もできず、ローレンは咄嗟にクレアを守り、ティムもセリーナの前に立ちふさがったが、電光と嵐のような爆風に目が開かず、状況がまるで分からなくなる。


「レンブラントォ、貴様は何をしておるのだ!」


手加減なしで放たれた雷霆は、結界を破壊し、街を焦がし、近隣の森に火をつける。このままでは火が燃え広がってしまうと、ヴォルフガングが森に視線を移せば、ルーフェスが森に飛び口腔から水を放射する。ひとまず火災はルーフェスに任せ、ヴォルフガングはまかり成らんと、レンブラントを怒りに満ちた瞳で牽制する。

結界内にドラゴンの足が入り込み、結界が破壊されたことを知り、ローレンとティムは聖女の二人を庇うように前面に身を乗り出すと、視線を絡ませる。


「カーティス殿、ここは私が……」

「馬車だ。ティム師団長、馬車を探せ」

「そうか、それなら逃げられる。直ちに」


歩いて逃げることは難しいと、ローレンは馬車を探すように口にしたが、ここで聞きなれた声が耳に届く。


「これを使え、ローレン!」


それはずっと探していた探し人、アシュレイ=アラステア本人。


「生きていたんだな」

「当たり前だ。それより、二人を連れてすぐに離れろ」


ここは危険だと、馬車を乗り捨てたアシュレイは馬車をローレンたちに譲る。そして、馬車からもう一人飛び降りる。


「大丈夫よ、後は任せて」

「アリア、行くぞ」

「ええ」


全く同じ格好とは言えなかったが、ヴォルフガングが提示した女性にかなり近づけたはず。

早くヴォルフガングの元に急がなければと、アリアとアシュレイが走り出した瞬間だった……。


ガガガッ――、ド、ォォォ――ッッ!!


耳を塞ぐ轟音と再び爆風が巻き起こり、私は咄嗟にブレスレッドを引きちぎるように外すと、


「風花よ、障壁となれ……リュース!」


みんなを守るため、バリアの魔法を唱える。

風が巻き起こり、それがバリアとなり飛んでくる瓦礫を全て防ぐが、砂煙が立ち込め何も見えない。大地が激しく揺れたのは覚えているが、一体何が起こったのかまでは分からず、アシュレイとローレンはクレアの前に、ティムはセリーナの前に出た。


「ぐあッぁ! ……ぅ、うぐっ、……老いぼれが……」


ヴォルフガングの悲鳴が響き、視界が晴れれば、レンブラントがヴォルフガングに覆いかぶさるように伸し掛かり、肩に噛みついていた。

凄まじい衝撃と、ドラゴンが倒れてきた重みで城壁や家が破壊され、大地でさえ亀裂ができる。

このままでは本当にアラステアが破壊されてしまうと、アシュレイはローレンとティムに命令を下す。


「二人を連れ、即刻退避。これは王太子命令だ」

「仰せの通りに」


グズグズするなと、声を荒げればローレンがクレアの手を引き馬車に誘導し、ティムもまたセリーナを馬車に誘導するが、動きがおかしいと足を見れば、いつの間に怪我をしたのか、セリーナの足は赤く腫れあがっていた。

おそらく、レンブラントが雷霆を放ったときの瓦礫に当たったのだろうと、


「失礼する」


一言詫びを入れたティムは、有無を言わせずセリーナを抱き上げる。

当然驚いたセリーナがティムを見るが、安心させるようにティムは優しく微笑む。


「しばらく耐えてください」

「で、でも……」

「私が必ずお守りいたします」


強く言ったティムは、そのまま馬車に走り出し、セリーナは少しでも負担にならないようにと、ティムの首に腕を回す。

結界補強で魔力を使いすぎているため、治癒にまで魔力が回らず、セリーナは痛みを耐えながら馬車に乗せられた。


「ティム師団長、御者は任せたぞ」

「カーティス殿は?」

「俺は後方につく」

「承知した」


聖女の二人を馬車に乗せると、御者席にティムが座り、馬車の後ろにしがみつくようにローレンが立つ。後ろから攻撃があれば、ローレンが対処し、前方に何かあればティムが対処する。二人は馬車を守りながら、アラステア城から遠くへと必死に馬を走らせた。



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