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第19話 面白すぎる、最愛暴走。

「我が娘を泣かせた罪は、死罪以外にあると思うか? ルーフェス」


地を這うような低い声に、ルーフェスが大量の汗を流して首を振る。


「アシュちゃんが、国を捨ててきたなんていうから悪いのよっ」

「国を、捨てた?」

「そうよ、アリアちゃんのために国を捨ててきたんですって」


ルーフェスが必死にそう叫ぶと、ヴォルフガングはルーフェスを大地にポイ捨てして、今度はアシュレイの元へと向かう。

半分意識を失っているアシュレイの頭を掴むと、ヴォルフガングは射るような眼光を向ける。


「そのような馬鹿げたこと、するはずなかろうな」


国民や国を捨てるなど、王太子殿下としてあるまじき行為だと、グッと顔をあげさせるが、アシュレイの意識はその時点で途切れてしまった。


「お父さん! ここから出して。アシュレイ王太子殿下を助けないとっ」


完全に意識を失ってしまったアシュレイに、早く治癒魔法をかけないと、と、叫べば、背後にいたルーフェスを睨む。そうすれば、すぐに水球の結界は消え私はアシュレイに駆け寄ると大急ぎで治癒魔法をかける。


「う、ぅう……」


傷口が癒え、アシュレイが意識を取り戻すとヴォルフガングが胸倉を掴む。


「ちょっとお父さん!」

「黙っておれ」


その瞳は怒りに満ちていて、私はビクッと肩をすくめてひとまず黙る。すると、胸倉を掴まれたアシュレイがなぜかヴォルフガングの腕を掴んで、思いっきり頭を下げてきた。


「この通りだ。アリアを俺にください!」


もう何が何だか分からないけど、アシュレイはいきなりお義父さんへの挨拶を口にした。当然何が起こったのか理解できなかったヴォルフガングも、目を白黒させる。


「何を……」

「必ず、いや、絶対、神に誓って幸せにする! アリアと結婚させてください」


掴まれた胸倉から無理やり抜け出したアシュレイは、地面に額をこすり付けるように懇願する。

それから、アシュレイは姿勢を正し、きっちり正座をすると再び地面に額をぶつけるように土下座する。


「アリアを妻とし、健やかなる時も 病める時も、喜びの時も 悲しみの時も、富める時も 貧しい時も、これを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓う」


と、なぜか教会での誓いの言葉まで吐きだす。


(それって、神父様から問いかけられる言葉で、普通夫婦になる二人が、誓いますというのでは?)


「くく、くっははは……。面白すぎるわ」


この意味不明な状況を崩したのはルーフェス。お腹を抱えて、結婚の申し込みと、結婚式を同時にやってのけるなんて、可笑しすぎると涙まで浮かべて笑う。

確かに、アシュレイは常識をぶっ飛ばしたことをやり遂げていた。

それを聞き、ヴォルフガングでさえ頭を抱えたほどだ。


「……何がしたいのか、分からん」


額に手を置き、頭を下げるアシュレイに、半ば呆れる。が、しかし、当の本人アシュレイは、全部本気のようで。


「アリアと夫婦となることを認めていただきたい!」


と、さらに願い出る。


「くっ、ははは、ぁ……、ダメ、お腹痛いわ」

「ルーフェス、笑うなッ」

「無理よ。アシュちゃん、面白すぎるんだもの」


死んでもおかしくなかったのに、それでも諦められないなんて、一途過ぎてむしろ笑いが止まらないと、ルーフェスは非常識な笑いを止めない。


「どうでもいいけど、アシュレイ王太子殿下は頭をあげてください!」

「断る。俺はもう王太子ではない」

「だから、どうしてそうなるのよ」

「王位継承はヴァレンスに譲ってきたと言っただろう」


爪に土が喰い込むほど大地を掴んだまま、アシュレイは頭を下げるのを辞めない。どうしても認めて欲しいと、ヴォルフガングに頭を下げる。


「地位のない者に娘は渡さぬぞ」


冷たく言い放てば、アシュレイはようやく顔をあげる。


「一から出直し、俺は必ずヴォルフガング殿に認めてもらえる地位を得る」

「口約束など信用できぬ」

「ならば、命を懸ける」


アシュレイは自分の心臓をヴォルフガングに捧げるとさえ言い出す。納得できる地位が得られなかった時は、迷わずその心臓を止めて欲しいと。


「愛する人のために命を懸けるなんて、恋愛劇みたいじゃない」

「黙れ、ルーフェス!」

「私、こういうのとっても好きよ」

「お前の好みなど、聞いておらん」


クネクネと体を揺らしたルーフェスは、両頬を包み込みながら、「愛だわぁ~」と、なんだか嬉しそうだけど、ヴォルフガングは眉を上げてルーフェスを怒る。

当然私だって、納得できるはずもなく。


「ご自分が何をおっしゃっているのか、分かっているのですか?!」


アシュレイの隣に膝をついて、声を荒げる。私の為に命なんか懸けないでと。

そうすれば、アシュレイはいつものように腕を掴んできて、真っすぐに見つめてきた。


「アリアと結婚できるのならば、命など惜しくない」

「寝言は寝てからおっしゃってください!」

「本音だ。俺はアリアしか愛せない」


(そういう台詞はイケメンが口にしたら、自惚れちゃうでしょうが!)



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