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最強魔力を隠したら、国外追放されて、隣国の王太子に求婚されたのですが、隠居生活を望むので、お断りします!【完結】  作者: かの
~【第1部】最強魔力を隠したら、国外追放されて、隣国の王太子に求婚されたのですが、隠居生活を望むので、お断りします!~
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第44話「今更気づく、命の危機」

「そんなことより、話しって?」

「そうだ、大切なことを忘れるところだった」


ポンと手を叩く勢いで、ヴォルフガングが顔を近づけてきた。もちろんアシュレイを気にして、声を潜めてくる。


「民を捨て逃げたとはどういうことだ?」


ヴォルフガングは、ライアール国で聞いた話が信じられず直接本人にそれを問う。それに日常魔法も使えないなどと、なぜ嘘をついたのかも問われる。


「そ、それは……」

「はっきり言え」


なんて説明していいか困ってしまった私に、ヴォルフガングが少し怖い顔で睨むから、私は『かくかくしかじか』でと、とりあえず話してみる。

化け物だと思われたくなかったことに、聖女になりたくなかったこと、自分のせいで結界に穴が開いたかもしれなかったので、内緒で魔物討伐に出てしまったこと、街の人を救いたくて、制御アイテムなしで治癒魔法を使ったら、広範囲に広まってしまったこと、思いつくことをとりあえず話してしまった。

あの時、女の子のお父さんは死にかけていた。だからどうしても助けたくて、魔力量を考えられなかった。しかも都合よく聖女レイリーンが、治癒魔法を使用していたということで、城の者たちやランデリック王子がそれを信じてしまった。だから、そのまま聖女失格にしてもらおうと思ったのだと、小さな声でそう言った。

一通り説明を受けたヴォルフガングは、頭を押さえると「そういうことか」と、眉間に皺を寄せていた。

まさか娘が王子様との結婚を拒否、聖女としての扱いも受けたくなく、普通の女の子として生活したかったなどと、想像も出来ていなかった。とはいえ、しっかり結界を張っていたことはさすが我が娘と誇らしくなる。


「事情は分かった。アシュには感謝せねばな」

「そうね、死罪になるところを助けていただいたのだから」

「ふむ、何か礼をせねばならぬ」


娘を保護してくれたアラステア国には礼をしたが、救い出してくれたアシュレイにも礼は必要だと、ヴォルフガングがチラリとアシュレイを見れば、その視線はアリアに釘付けであった。しかも、かなり不安な表情を浮かべて。


「アレは、心配性なのか?」


王太子殿下ともあろう者が、不安を表に出し過ぎていると、ヴォルフガングが囁けば、アリアは軽く額を押さえる。


「王太子殿下をアレ呼ばわりしないで」

「我を誰と思っておる。国の王など赤子も同然」

「あなたが本当にドラゴンならの話でしょう」

「明日になれば、皆が腰を抜かすかもしれぬぞ」


真の姿を見せれば、きっと誰もが震えるほど驚くとヴォルフガングが笑うが、アリアは正直半信半疑状態。ドラゴンなどおとぎ話であり、実際に存在するとは思っていないからだ。

何かの魔法で姿を変えるだけかもしれないと、同行する際はブレスレッドを外していこうと決めていた。

王妃様だって、奇妙な血を飲まされ翌日には冷たく……、そこまで考えてしまってから思いっきり首を振る。ヴォルフガングから悪意は感じられない、うさん臭さもない、けれど信用するには材料が足りない。事実が分かるのは明日、とにかく明日にならなければ分からないと、今日のところは休みましょうと提案すれば、ヴォルフガングは、「胸のつかえがとれた」と、国外追放の経緯を知り満足そうに笑う。


「話は終わりだ」


先ほどからソワソワしているアシュレイにそう声を掛ければ、


「では、客間に案内する」


従者を呼び、ヴォルフガングを丁重にもてなす。


「アリア、また明日会おう」

「ええ、ゆっくり休んで」

「そうさせてもらう」


片手を上げて緩く左右に振りながら、ヴォルフガングは案内されるがまま歩いていった。


「では、アリアは俺が送ろう」


私も部屋に戻ろうとしたら、なぜかアシュレイがそんなことを口にした。王太子殿下に送ってもらうような身分では、と、私は咄嗟に頭を下げていた。


「一人で戻れますので」

「俺が送りたい」


と、言われましても。私は恐れ多すぎるし、今は誰もいないのだから、婚約者のふりなんかしなくてよいのでは? なんて疑問しか浮かばない。

だからうっかり余計なことを聞いてしまった。


「相手の女性の方とは、婚約破棄できそうなのでしょうか?」


そもそもそういう約束なのだから、婚約破棄してもらわないと私は解放されないわけで、報酬もいただけない。一応、国王様。王妃様には報告したけど、二人ともなぜか喜んでくれていたわ。

無理やり結婚させられると言っていたわりに、あっさり受け入れてくれたような……。


「あ、ああ。正式に書面をだな……」

「書面ですか?! 実際にお会いにならないのですかっ」

「仕事が立て込んでいてだな……」


なんとなく歯切れの悪い回答を返されるけど、書面を見た令嬢が乗り込んでくるとは考えないのかしら。そもそも婚約破棄を書上で納得してもらうなど、礼儀もなってないわと、頬が引き攣る。

王太子殿下自らがきちんと会って、言うべきことじゃないかしらと、私の顔色はどんどん悪くなる。強引にアシュレイと結婚したがっている令嬢なのよ、大人しく婚約破棄を受け入れてくれるわけないじゃない!


(きっと刺客を雇って、私は毒殺?!)


いやぁぁぁ~~! 思わず声が漏れそうになって、私はその場に蹲った。


「ど、どうしたんだッ」


いきなり蹲ってしまった私に、焦ったアシュレイが声を掛けるけど、女の恨みは怖いのよ。しかもアシュレイのことが好きで好きで、大好きな令嬢よ、何をされるか分からない状況を想定してしまい、私はここでようやく事の重大さに気づかされる。


(平民ごときがご令嬢に敵うわけなかったわ)


どんな手を使ってくるか分からない恐怖に、私は視界まで暗くなる。


「アリア、大丈夫か?!」


返事をする余裕もなく、相手のかたが怖いと勝手に妄想だけが膨らむ。お先真っ暗な状態になった私の体が、突然ふわりと宙に。


「なにっ、ちょ……」

「体調が悪いなら、医務室に行く」


蹲ってしまった私を、アシュレイが軽々と抱きかかえたのだ。


「大丈夫です!」

「突然蹲るなど、体調不良以外なにもないだろう」

「先のことを考えたら、眩暈がしただけです!」

「眩暈だと。やはり体調が優れなかったんだな」

「違いますっ、……ひゃぁ」


具合が悪くて蹲ったのではないと言ったはずなのに、アシュレイは唐突に額をくっつけてきた。コツンとくっつけられた額のせいで、美形のお顔が至近距離に!!

男の人と触れ合うなんて免疫がなさすぎて、顔から火が出そう。


「熱はないようだな」


もしかして額で熱を測ったの?! まさか両手が塞がっているから?

いやいや、王太子殿下ともあろうお方が、こんなことしたら、世の女性は勘違いしちゃうじゃない! 



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