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最強魔力を隠したら、国外追放されて、隣国の王太子に求婚されたのですが、隠居生活を望むので、お断りします!【完結】  作者: かの
~【第1部】最強魔力を隠したら、国外追放されて、隣国の王太子に求婚されたのですが、隠居生活を望むので、お断りします!~
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第32話「不確定要素」

いきなり大声を出され、アシュレイは思わず耳を塞ぐ。朝から騒々しいと、ヴァレンスに声を抑えるように指示を出せば、どうしてかがっくりと項垂れた。


「……既成事実をつくるチャンスだったのに」

「お前、まさか昨夜のお茶に何か」

「睡眠薬を入れました」


正直に話す弟が怖いと思った。聖女をライアール国に奪われないように、ヴァレンスはアシュレイと結婚するしかない道を作ったのにと、睨んでくる。

眠ったアリアを襲うか、アリアに襲われたことにすれば良かったのにと、ヴァレンスの口から放たれる。我が弟ながら、末恐ろしいと寒気まで走る。


「ヴァレンスっ、お前は……」

「男女がベッドで裸で寝ていたら、相手は勘違いするでしょう」


それが狙いだったのにと、とんでもない事まで言い出す。

睡眠薬で眠らせたアリアの服を脱がせ、裸で同じベッドに……、そこまで妄想したアシュレイの顔は沸騰する。確かに何かあったと思うかもしれないが、騙すようなことはできないと、アシュレイは深い息を吐き出しながら、ヴァレンスを見る。


「悪いが、俺は卑怯な手は使いたくない」


そんなことをしてアリアの心を射止められるとは思わないと、アシュレイは額を押さえる。


「聖女を逃がすのですかっ?!」

「まだ聖女だと決まったわけではない」


アリアが正当聖女であるかどうかも分からないうちに、勝手なことをするなと忠告すれば、ヴァレンスは真剣な表情を見せた。


「間違いないよ」

「何を根拠にそれを口にする?」

「昨夜アリアさんに会った時、母様の指輪が反応したんだ」


ヴァレンスは、王妃から拝借してきたアクセサリーを持参しアリアに会いに来たと話し、その時にアクセサリーが僅かに反応したという。


「何かしらの反応が出れば、俺も気づくはずだが、昨夜は何も感じ取れていない」

「兄さまは、魔法無効アイテムを身に着けていらっしゃいましたので、おそらくそれのせいでしょう」


だから何も感じなかったのだと、ヴァレンスに言われ口を閉じた。確かに魔法無効のアイテムを身に着けていたら、分かるはずもないだろうと。


「一瞬だったけど、とてつもない力を感じたような気がしたんです」


現聖女よりもはるかに大きな力だったかもしれないと、ヴァレンスは少しだけ声を震わせた。聖女の魔力とは思えないほど強大だった? けれどそんな魔力を持っているとしたら、制御アイテムだけで制御できるはずはなく、おそらく魔術師クラスの者ならば、能力を感じ取れるはず。だとすれば、ライアール国がアリアを手放すはずはない。

強力な魔力を持っていると知っていれば、聖女でなくとも追放などということにはならないと考える。


「……、どういうこと?」


ヴァレンスは、希少価値の高い魔術師クラスの人間を簡単に手放したライアール国が、おかしいと考え込む。だが同時に、アリアからは高魔力は感じられないとも悩む。

なら考えるべきは、何かしらの方法で魔力を抑え込んでいるとしか考えられないが、魔法制御アイテムでそこまでの抑制力のあるアイテムなど存在するのだろうか? という結論にも繋がる。


「どうかしたのか?」

「兄さまは、アリアさんの魔法を見たことはありますか?」

「残念ながら、きちんと見たことはない」

「そう、ですか……」

「ヴァレンス?」


顎に手を添えて何かを考え込んでいるヴァレンスに、アシュレイがそっと声をかければ、顔をあげてくれた。


「聖女は攻撃魔法を得意としない」

「だが、アリアは攻撃魔法の方が得意だと言った」

「それで、兄さまは何を思われましたか?」


あまりにも聖女としてかけ離れているとは思わなかったのかと、問われる。


「それでもアリアは聖女だと信じている」


結界を張ったと言ったアリアの言葉通り、魔物の情報が城に届かなくなったのが、証拠だと思ったが、まだ数日しか経っていないとも思い直す。だが、頻繁に魔物の姿が確認されていた境界線近くの村からの報告が止んだという。王妃の体調が優れなくなり、弱まった結界が薄れているのか、魔物が入り込むことから、現在は部隊を配置してそれに対応するようにしていた。が、その部隊から魔物の姿を見なくなったと今朝報告が届いたという。


「確証はありますか?」

「ない。しかし、アリアからは何か不思議な力を感じる、それだけだ」


ただの感だと言ってしまえば、それまでの話だと、アシュレイは苦笑する。ちゃんと結界魔法を見たわけでも、攻撃魔法を見たわけでもない、まして、治癒魔法まで使えるなど、普通なら虚偽ではないかと疑うべきことだ。

それを聞いたヴァレンスは、なぜか笑顔を見せる。


「母様の指輪が反応したのです。僕も兄さまと同じく聖女だと思います」


ただの魔術師に聖女の指輪は反応しないだろうと、二人はアリアを聖女だと認める。けれど、それだけではない何か『秘密』が隠されているのではないかとも思う。


「聖女が攻撃魔法を得意魔法とするというのは、やはり引っかかるな」

「歴代最強の聖女様でさえ、攻撃魔法はほとんど使えなかったですからね」

「アリアの治癒能力も、どこまで聖女に近いかも分からない」


もしかしたら、治癒魔法の方が劣るとでも言い出すかもしれないと、アシュレイは額に汗を浮かべた。聖女が治癒魔法をほとんど使えないなどとなれば、それはそれで問題が起こると顔が引き攣る。


「それと、国を覆うほどの結界魔法とはどのようなものなのでしょうか?」


聖女様は、神に祈りを捧げ、国を守る結界を生み出す。一般的な結界魔法は、一時的なバリア効果を作るに過ぎない。しかし、アリアは国を覆うほどの結界魔法を使うと言ったという。

アシュレイもヴァレンスも、聞いたことがないと顔を見合わせる。それに持続効果がどのくらいなのかも分からない。


「アリアは聖女の結界を補強していると話していたが……」


それでも、国全体に結界魔法を張れるなど、やはり通常の魔力量では到底できるわけがない。本当にアラステア国の結界を補強したというのならば、やはりアリアは何者なのか? ということに繋がる。

現在存在する最高総魔術師とて、国全域に魔法をかけることは絶対にできない。たとえその身を捧げたとしても、叶わないだろう。


「ご両親は至って普通だと聞きましたが」

「ああ、特に変わったところや、魔力に特化しているところはないとのことだ」

「それでは、やはり聖女となるべくして、神に遣わされたという説が高いと?」

「他に理由が思いつかない」


そうでなければ、アリアの魔法に説明がつかないと、アシュレイは険しい表情を浮かべるが、同時にヴァレンスも難しい表情を浮かべ、唸るように声を出す。


「やはり、ライアール国がそれに気づかなかったのはおかしいです」


魔法制御アイテムを身に着けていたとしても、アリアの魔力量を抑え込むアイテムなど、おそらく存在しない。ただし、アリアが虚偽を口にしていないということに限るが。

二人は、どこまでが真で、どこから嘘なのかと、顔を見合わせると、真相を突き止めるまではアリアを手放せないと、同意した。



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