助ける理由
しんのみづき 彼女はそう言った。
俺も智嬉も全く知らない他人だった。
なんの情報も分からない。
「みづき…さん?」
俺はどう読んだらいいか分からず、とりあえずさんを付けてみる
「あは、大丈夫よさんなんかつけなくても、私情報支部の監視カメラからあなた達を眺めていたけれど、2歳ぐらい上なのよ」
「じゃあ、みづきでいいんだな?」
「ええ!」
みづきはニコッと笑った。笑った顔はかわいい。
智嬉は迷わずみづきに仲間の居場所を訊ねた
「…みづき、敵に拉致された純の場所は分かるのか?情報支部だろ?」
「あんたは…?」
「根口智嬉だ」
みづきは申し訳なさそうに話す
「あなたのことは知らなかったわ、ずっと司令官と新人君しか眺められなかったの、ごめんなさい」
「いや、いいんだが…」
「……」
みづきはじっと智嬉を見つめた
どうかしたのだろうか
「み、みづき?」
「いや、いいわ、それより純のことだけど、あの子は今敵のアジトに捕まったようね」
<挿絵>
「なら早く助けないと!」
俺が焦っているとみづきは止めた
「ねえ、それって、仲間だから?好きだから? あの子は疑り深い人で、初めて会った人を中々信用しないのよ」
「司令官も、そんなようなことを言ってた」
「その代わり、自分の仲間だと思ったら、全力で守ってくれるわよ! 私は純に、かなり助けられたわ」
俺は司令官の言っていたことを思い出す
「もしかして、2人だけの時代のメンバーって」
「そう、私なのよ 私と、荒井純ね まあ、期間は短かったけどね」
みづきはおどけて話す
「俺は……純は多分、悪いやつじゃない、そんな気がするんだ」
「カルテー二は、何度も司令官には負けているけれど、油断ならない敵よ!貴明さんに強い恨みを持っているわ、気をつけて」
みづきの肩を優しく触る
「大丈夫、俺はその親父の力を受け継いだんだ 必ず勝ってみせる」
アジトへ瞬間移動で向かった俺たち。
一方瞳は俺たちが去ったあと司令官室に残っていた。
「滝……私は……あなたのことが…」
後ろから俺の弟、圭介が心配して施設へ入ってきた
「あなたは?」
「俺は、滝の弟 蒼山圭介です」
「そう… はじめまして 陽桜瞳です 滝の仲間よ」
「瞳さんは、仲間なのに一緒じゃないんですか?」
瞳は悲しそうな笑みを浮かべた
「ええ まだ戦えない強さだから カルテー二に対抗できるレベルではないのよ」
「それなら仕方ないですね」
俺たちは、テレポートで敵のアジト内に入った
ここは薄暗くて気味が悪い
能力者施設の空気と大分違う
「あ、明かりが見えてきた!」
俺は扉をひっそりと開けた
「滝か、よく来たな」
聞き覚えのある声がした
「カルテー二…… お前は、親父も仲間も奪っていった!許さねえ!」
「純はどこだ!!」
司令官も負けじとカルテー二に喧嘩を売る
「おお?司令官…いや、シルヴァもきたのか、案内ご苦労」
「私も貴明と同等、いやそれ以上の力を持っていることを忘れていては困る……」
さっきから俺は左右を見ているのだが、純がいない
「カルテー二!純を見せろ!」
「純か?純ならここにいるぞ」
カルテー二はパチンと指を鳴らした
「!!!」
カルテー二の背後から1面ガラス張りの部屋が現れた
そこに、鎖で繋がれている純が……
「純………」
「滝!? みんな!!」
「なんてことを……許さない!!」
「バカ野郎……なんで来やがった!!こいつはお前の親父を恨みで殺す程強い相手だ!!」
純が心配するのは分かっていた
けれど、ぐっと堪えて俺は純に対抗する
「分かってるよ 親父も恨んでいるけれど、蒼山家を恨んでいることは だからこそ、負けていられないんだ 今戦わなくちゃ、親父にも、司令官にも示しがつかない!!」
カルテー二は黙って聞いていたが、俺に近づき胸ぐらを掴む
「生意気な……!! ふ、目の前で親父を助けられなかった分際でなにができる」
「今なら、お前を倒せる!! そして、純も助ける!!」
その時、ガラス張りの部屋越しに純の身体が黄色く眩しく光り輝くオーラが見えた
「なに!?」
「これは……!!?」