親友として
「どうする?滝」
「初めての試練だな、とにかく、助けなきゃ!」
「滝」
司令官は俺の動きを止めた
「お前、純のことは好きか?」
「どうして?」
「仲間として好きなのか、ただの戦友として助けに行くのか あいつは複雑なんだ 」
俺は、別に純に他意はない 仲間として大事だから、助けに行くんだ
「そんなの、決まってるじゃないですか 仲間として助けに行くんです」
「滝のことを、あいつは最初から好いていてな 新人だから、ちゃんと面倒見なきゃ!って張り切っていたんだよ」
「そうですか……俺は…純を助けたい…」
消えそうな声で小さく呟いた
「滝ー」
智嬉の声がした。
「なんだよ?」
「お前を呼んでるぞ?」
手を見ると携帯を持っていた
司令官室の扉が開いたままだったのか、そのまま入ってきた
「……正直、呼びたくはないんだけど うちの父親だ」
今回のことを聞きつけたのだろうか。しかし、なぜ今のタイミングで智嬉の父親が…
「智嬉のお父様?」
「君が滝くん?初めまして、私は蒼山貴明の仲間だった根口航介 と言うんだ 智嬉の父親だ よろしく頼む 君が滝くんか 名前は聞いたけれど会うのは初めてだな」
俺は威圧感が凄くて、じりじり司令官室の扉の近くまで後ずさる
「お、俺は……」
司令官がさっきから嫌そうな顔をしているのが気になる…
「君のその長い髪、貴明似だね、貴明も髪を伸ばしていた、戦時中。能力が高いせいだね」
「父を…知っているんですか?」
「ああ、仲間だからさ。 …本題に入ろう。滝、仲間が攫われたんだってね」
「はい」
「君に適う相手ではない敵だ 引き返すなら今だよ。彼は貴明をも倒した男だ」
司令官は俺を庇った
「さっきからなんだ!!今のリーダーはこの息子の滝だ!! 今は仲間も違うだろう! なぜお前がこの子に忠告する!!」
俺は震えが止まらなかった
「確かに、昔とはやり方が違うし、我々がとやかく言う権利はない 関わりのない仲間ならな しかし、今は 蒼山貴明の息子がリーダーなんだぞ 我々にも関係しているではないか」
司令官は航介さんの胸ぐらを掴んだ
「この子が憎いんだろう……?貴明を守れなかったことが それで、忠告しに来たんだろう? 」
「!!?」
智嬉はがっくり肩を落とした
「本当に済まない 滝 親友として、親父を制御出来なかった」
「智嬉…それを知ってて別行動してたのか?俺を、守って…」
「まあな」
「滝」
俺は咄嗟に身構える
「親父を守れなかったのは、本当に悔しいです 未だに、親父の夢を見るんです 仲間になった純も、必ず、助けだします!!」
「貴明の最強の力を君は受け継いだんだ その資格があるか、私も確かめる」
司令官は俺たち2人の前に立ち、バリアを張った
「君が憎いよ 滝くん」
「親父」
智嬉はキッと自分の親を睨みつけた
「滝が考えた道だ!!アンタに関係ないだろう!! 親父さんを守れなくても、敵を諦めずに戦おうとしてるだろ!?」
「……もう戦闘員の血が受け継いでいるんだな お前も」
「今は仲間を守るのが先決だ!!そんなことを言っている場合じゃねえ!!滝の父さんの二の舞にしろと言うのか!!」
司令官は智嬉が能力者として少しづつ芽生えているのが嬉しくなり、含み笑いをみせた
「航介 私の今の仲間は、君たちとは違うようだよ こんなにも、力を合わせて助けようとしている 我々の時は、本当にバラバラだったから……」
航介さんは悔しくなり、踵を返した
「親父!!」
「……仲間を助ける思いは結構だが、カルテー二を甘くみるなよ 蒼山滝、くん」
早足で航介さんは帰っていった
航介さんの見た目は智嬉を大人にしたような風貌で、天然パーマは同じだった
「親父!!」
「智嬉 あの方が、俺を憎んでいたのか?」
「……ごめん… 貴明さんを守れなかったのが、憎いらしいんだ 滝が、目の前にいたのにどうして助けられなかったんだって」
また、繰り返すのは嫌だ
なんとしても、救い出す 純を
「繰り返したくない あの悲劇を 司令官! 」
「ああ 私もなにもしてない訳じゃないよ もう1人、仲間を呼んだ」
「失礼します」
白い長袖、緑のスカート、真ん中に分けた前髪、少し肩まで長い真っ直ぐな髪…
女性だった
「君が?」
「新野みづきです、よろしく」