貴明と立つために
の麓に降りると、柔らかな夕暮れの空気が身体を包み込んだ。四人の足音が小石を踏みしめ、静かな森の中に規則正しいリズムを刻む。純は少し先を歩きながら、ぽつりと口を開いた
「滝、あの“記憶の呪骸”の話、もう少し聞かせてくれねえ?」
俺は、一瞬立ち止まり、棍棒を肩にかけて答えた
「……ああ。あいつらは人の負の感情が形になったものだ。悲しみ、怒り、後悔、恨み。そういうものが集まって暴走してる」
「でも、あの最後の言葉……“ありがとう”っていうのは?」
俺はゆっくりと息を吐き、空を見上げる
「消えていくときに、あの呪骸が初めて自分の存在を認められたんだと思う。俺たちが向き合って、認めて、話しかけたから……本音を見せてくれた」
純は頷いた
「人間の負の感情なんて、誰だって抱えてる。でも、それを直視できる奴は少ない。俺たちはそれに触れて戦ったんだな……」
ロメオが後ろから声をかける
「それに、忘れてはいけない。負の感情は悪ではない。むしろ、それを乗り越えた先にしか、真の光はない」
トヴァースも静かに同意した
「そうだ。逃げずに向き合い、受け入れること。これが真の強さだ」
俺はその言葉を胸に刻みながら、改めて四人の顔を見回した。それぞれの目はどこか優しく、それでいて覚悟を秘めている
「……ありがとう、みんながいてくれて、本当に良かった」
純は微笑みを返す
「おうよ。これからも一緒だ。みんなで飯でも食おうぜ。俺がカレー作る」
俺は笑った
「純のカレー、楽しみだな。辛いやつだろ?」
「戦いの後は、やっぱり辛いのに限るだろ」
その言葉に、四人は自然と笑みがこぼれた。ふと、森の向こうからかすかな鳥の鳴き声が聞こえてくる
「春がもうすぐだな」
俺が呟くと、純が答えた
「ああ…戦いの中でも、季節は巡っていくんだな」
その時、トヴァースがゆっくりと口を開いた
「滝、お前はずっと親父のことを気にしていたな。だが、今の姿を見ている限り、お前はもう充分に並んでいる」
俺は言葉に詰まり、黙ってうなずいた
「焦らなくていい。歩幅はお前が決めるものだ」
ロメオが続ける
「これからも道は続く。俺たちの戦いも終わらない。だが、今日のように仲間と歩む限り、どんな闇も乗り越えられる」
俺は胸に手を当てて、静かに誓った
「次も絶対、逃げねぇ。たとえどんな敵だろうと」
純が肩を叩く
「よし、じゃあさっさと帰ろう。みんな待ってる」
夕闇が森を包み込み、四人の影は長く伸びていく。
その後ろ姿を見送りながら、滝は小さく呟いた。
「親父……いつか必ず、隣に立つ」
そして、足早に能力者施設への明かりへと歩みを進めていった
施設に戻ると、久しぶりにみんなが揃っていた。笑顔が広がり、疲れた身体を癒す温かい空気が満ちている
「おかえり、滝、純、ロメオ様、トヴァース」
みづきが真っ先に駆け寄ってきて、手を差し伸べる
「ただいま」
俺は穏やかに応え、手を握り返す
「今日は厳しい戦いだった。でも、俺たちは乗り越えた」
純はみんなの前に立ち、得意げに言った
「カレーは俺が作ったからな。辛さ控えめだけど、気合は入ってるぜ」
みんなの笑い声が響き渡る
智嬉が笑いながら言う
「楽しみにしてるぜ、お前のカレー!」
その言葉に、純は照れたように顔を赤らめた。
俺は、そんな純を見て、心の中で呟く
(俺たちの戦いはまだ続くんだ…でも、こうして笑い合える時間がある限り、どんな闇にも負けない)




