親友の傍に
柱の影から俺たちの様子を見ていた青年は、純だった
「なんで俺には話さないんだよ」
俺は智嬉と話が終わったので、病室から出ようとした途端なにかにつまづいた
鈍い音と共に、顔を見あげると
「いてっ!」
小声で俺はつい言っちまった
「お、悪い!!」
「純!?」
「滝 ちょっといいか」
俺はなぜか純に話したくない気持ちが強くなり、逃げようとすると 純の大きい体が迫ってくる
「俺は用事があるんだよ!」
いつの間にか壁際に追いやられた
睨み気味に上を見上げる
「その前に、言いたいことがある」
「なんだよ」
「ここなら誰も来ない」
純は俺に大きい信頼を持っていると前にみづきから聞いた
しかし、信頼、といえど友達としての信頼か、または違う信頼か そんなことを脳内で駆け巡らせていると
「俺はまだ、好きなやつはいない!!」
「……は?」
「あっ」
俺は頭が混乱した
所謂壁ドン状態で、女の子が告白される場面とかじゃないか?と俺はどうかしていた
見た目は長いポニーテールで、純より背も低くて、他人からしてみれば遠目からみれば男女に見えなくもない
「っはははは!! ばーか、お前そういう期待してたのか? 違う違う! あー、調子狂うわ、俺の個室へ案内するよ」
純はゲラゲラ笑うと、荒井病院は3階までなのだが、3階の1番端にある個室へ案内された
純の作業場、兼休憩所
「ここが俺の常にいる場所だ 」
「施設にいないというならここにいる、という認識でいいか?」
「ああ、あとは、そうだな……実家にたまにいるぐらいだよ ま、実家は施設の場所から遠いから、実家にいるぐらいなら施設にいるよ」
俺は顔をキョトンとして説明を聞いていた
「なんで俺に説明するんだ?って顔だな」
「い、いや!!」
「まあいいよ、俺は滝のことを信頼したんだよ 敵に拉致された時、お前はすぐに助けてくれた それは本当に感謝してるよ でもな」
急に空気が変わった
「智嬉のことも、話して欲しかった いや、本人が話さなきゃいけないことなんだろうけどさ 俺、智嬉が病院に運ばれた時全身アザだらけで正直驚愕したんだよ」
俺はつい目を伏せた
「ごめん…… そんな余裕なくて」
「智嬉は病院に着いた時、うわ言でお前を呼んでいたんだぞ」
「!!」
純は腕組みをして話しだす
「何事か、さすがの俺も気が動転したね しかも、自分で前もって通信機で俺を呼ぶなんて まるで自分がやられるのを分かってたって感じだった あれはただ事じゃないんだろう?」
俺はまだまだ、余裕がないなと反省した
「あ、ああ…… 」
「智嬉のやつ マジで心配だよ」
確かに、実の父親に殴られ、俺を守るために戦うのをやめてくれと懇願して……たった1人で
影でなにも言わないでずっと守ってくれた
「智嬉 やっぱそんなことじゃないかと思ってたよ」
<挿絵>
智嬉の個室に戻ると 司令官が傍にいた
「お、滝か」
「あれ?用事があるんじゃ無かったのかよ?いいよ、俺は大丈夫だから」
俺はリーダーとして、やっていかなきゃならない
負傷している仲間を、見過ごすわけにはいかない
「智嬉…… お前を守れなくて、ごめん」
「なに言ってんだ、こうやって助けてくれただろ?俺を病院まで連れてってくれた」
「そうじゃないよ そうなるまで、俺は気づけなかった 智嬉が、こんなになるまでならない方法が他にあったはずなのに」
俺は智嬉の手を優しく握りしめた
「純になんか言われたか?」
「!!」
「能力者になって日は浅いし、気づかないことが多くて当たり前だよ」
司令官は俺に優しく話しかけた
「司令官……」
「これからもっと、辛い現実を見ることになるんだよ 私たちは」
すると突然、智嬉の体が黒いオーラに包まれた
「うわあああ!!!」
「……… 智嬉……!?」
現れたのは、またしてもカルテー二だった
「さあ、智嬉、奴を倒せ」
「ハッ」
「カルテー二!なんて事を!」
カルテー二は智嬉を操っている
「滝…お前の能力を寄越せば私は強くなれる… この戦いも終わる」
俺は握っていた細い根をカルテー二へ向けて薙ぎ払おうとした
しかしカルテー二は根を受け止めた
「くっ…」
「滝…こいつがどうなってもいいのか?」
「卑怯な!」
「智嬉! こいつの能力を奪え!」
「智嬉!」
俺は智嬉の力でなら、死んでも構わないと思った
だがしかしカルテー二の操られた力では死にたくない
「智嬉! 待ってくれ!」
智嬉は足首を怪我しているせいか、思うようにパンチが出ていない
格闘が苦手な俺でも十分避けられるほどだ
「くそっ… 」
狭い病室の中、避けるのがやっとだった
素早いパンチをようやく手のひらで受け止める
「何!!?」
「カルテー二……もう、許さない!!」
怒りにまかせて、俺は智嬉の拳を握りしめながらカルテー二を睨みつけた




