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第1話

   

 夜空に浮かぶ月の光は庶民にも高貴な者にも、あるいは人にも人でない者にも、等しく降り(そそ)ぐ。

 それは今夜も王宮の中庭まで届き、そこで花咲く桜の木を美しくライトアップしていた。


 王宮を構成する建物はいくつかの棟に分かれているが、ちょうどそれらに囲まれる形で、外部からは見えない位置にある中庭だ。いわば王族専用で、玉座の()からも見下ろせる立地なのだが……。

 現在の王宮の(ぬし)は、わざわざ中庭まで出て、桜の木の(そば)に佇んでいた。

 長い杖に手をかけたまま、若干見上げるような角度で、ピンク色の花々を眺めている。肌の色は青く、長めの銀髪をオールバックに整えて、紫色のオーバーオールを着込んだ上から、裏地の赤い黒マントを羽織っていた。


「ここの桜も、そろそろ見納めか……」

 そう呟きながら、青い肌の男は溜め息をつく。

 様々な想いが込められている声だった。杖を握る手にも、自然と力が入る。

 そのまま少しの間、身じろぎもせず何も言わず、ただ静かに時間だけが流れていくが……。

 そんな静寂を破ったのは、無粋な足音だった。

 乱暴にガシャンガシャンと音を立てながら、金属鎧を着込んだ男が、中庭に飛び込んできたのだ。


 背中を向けたままの相手から十数歩の距離で立ち止まると、中庭に入ってきた男は、腰の(さや)から剣を引き抜く。

 きらりと赤く輝く(やいば)。その切っ先を青い肌の男へと向けて、金属鎧の男は叫ぶのだった。

「見つけたぞ、魔王! この勇者アノードが、貴様を討伐する!」

   

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