67話(最終話) 平穏ならざる日々
定時更新です。今回が最終回になります。
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魔王騒ぎが収束してからはや二年が経った。あれ以来、魔獣があらぬ場所に突然出現すると言った現象は一切起きていない。
一方で完成した防塁を挟んでの魔獣迎撃戦は小規模ながらも散発していて、森の奥で魔獣の数が増えているのは確からしい。さらに増えて溢れ出て来るとかつての様な全面戦争も覚悟しなければならないが、現状維持出来ればそれで良しと王宮は考えている様だ。
ユキは、学徒動員が解散して再開された学園に通いつつ剣と魔法の訓練を続け、この春無事卒業となった。そして予想通りと言うか予定通りと言うか、第二王子付近衛室への配属が決まった。
今は春期休暇を使ってかつての中州に一時的に帰っている。何でもあの狼、もとい神獣を連れて来るんだって。さらに子狼、もとい子神獣四匹も一緒に連れて来るとの事で、良く王様が許可したもんだと思う。あの子たち、生きてたんだね。なんでも神獣って自己治癒能力があるらしく、瀕死だったものの復活していたらしい。
そして俺はニコと共に出向期間が終了し、近衛室を去る事になった。ユキたちと入れ違いになるのは残念でもあるけれど、何しろ王命なのでしのごの言っていられない。農政課に戻るかと思いきや、とんでもない事になったのだ。
『この度の数々の貢献により、アルバス・エンデナ、ニコリナ・ソノ両名を騎士爵に叙する。また開拓が一段落したエンデナ村を直轄領から改め両名の共同領地とする』
玉座の間で耳を疑うような内容を王様が宣言したのが一年前の事。なんと貴族になってしまった。そりゃまあ多少は事件の解決に協力出来たと思うし、ユキとも上手くやってると思うけど、俺とニコが貴族!??? しかも村の領主!!?? 学園で領地経営の授業を受けたとは言え、実務経験なんて諸国漫遊しかしていないのに、いきなりそれは無茶じゃない!?
・・なんて反論できる雰囲気では凡そ無く、震えながら謹んでお受けするしか選択肢が無かった。て言うかさ、こういうのって事前に話が有るんじゃないの? サプライズにも程がある!
そんな訳で、以来、赴任の準備で王都と村を何往復も重ねる超忙しい日々が続いた。ただ実家に帰れば済む話では無い。領主は領主として官舎を建てないとならないし、直轄領でなくなるのだから今迄中央省庁の役人が行っていた管理業務を全部引き継ぐ必要もある。ニコと二人で全部出来るかなあ。事務員を雇った方が・・いや、引き続き父さんに村長として実務の一部をお願いすれば大丈夫か。小さな領地だし、田舎だし、人も少ないし、のんびりやって行けば良いよね。ニコと二人で共同経営って、これもう実質嫁だよね。いや待て、ニコって確か領地経営の授業は苦手って言ってなかったか? あれ? 大丈夫かな?
「人手が足りるかちょっと心配かも」
「地元なのですから、頼める人はいくらでも居るのではなくて?」
「読み書きはともかく計算が出来る人は限られるんだよなあ」
第二王子付近衛室の応接セットで、休憩しながらお茶を飲んでいる間も色々不安が頭をよぎる。
「困ったら手紙で知らせろよ? 王都で暇そうな奴を探してやるから。俺が昇進出来たのはお前のお蔭なんだからよ」
「その時は僕も一緒に探すよ」
ケイとセットは家督を継ぐタイミングで子爵に昇進する事が決まっている。
「それなら私がニコお姉さまと一緒に働きます!」
「ダメ。エルフィーはちゃんとフェルを助けてあげて」
「はい・・」
エルフィーにも報奨が与えられる事になったが、彼女はそれをシルフィーさんに譲ってしまった。曰く、それが彼女なりに敵討ちを果たした事になるのだと。
「いっそ人手を雇うついでに代官を立ててしまう手もある。父上に相談すれば適任者を選んでくれるはずさ。そうすれば君たちもここに残る事が出来て僕は嬉しいんだがね」
「いやー、俺も出来ればそうしたいんだけどね」
レイ王子の提案は魅力的だが、それでは王様に申し訳ない。爵位と同時に領地が与えられたのは、ご褒美が増えたと言うより治める能力を示せと暗に言われているのだから。また第一王子の差し金なのか王様自身の考えなのか分からないが、小さかろうが田舎だろうが実績は実績だ。
「でもいざとなったら助けてくれるだろう?」
悪戯っぽく笑いながらウインクしてくるレイ王子。
「過剰戦力じゃないかなあ。まあ、もしもそうな・・」
その時、ドンッっと激しく扉が開いた。
「大変だ!!」
全員の視線が集中する先には、ゼエゼエと息を切らすユキが居た。
「なんだ、ユキか、脅かすなよ。早かったな」
「大変なんだって!!」
「どうかしましたの?」
「魔王が現れた!」
「いや、魔王はお前だろ」
「そうじゃなくて!! 現れたんだ! 魔獣を統率する、真の魔王が!!」
マジで!? いや、そう言う話はこっそり聞いていたけど、このタイミングでかよっ!
レイ王子と目が合う。さっきの提案、採用しないとダメっぽい・・おのれ魔王、許さん!! 俺のイチャラブ田舎暮らしを返せーーーーー!!
-完-
最後まで読んで頂き有り難うございました。この物語はひとまずこれで終わりです。評価して頂いた方、ブックマークして頂いた方、いいねして頂いた方、ROMでもお付き合い頂いた方、本当に大感謝です。途中で休載がありつつも無事最終回を迎えられたのは皆さんから頂いたリアクションに勇気づけられたお陰です。改めて有り難うございました。次回作準備中です。またお会いしましょう!




