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65話 和解

また一日遅れの更新になってしまいました。すみません。


◇ ◇



魔王は短剣を手放したが俺は剣を収めてはいない。おそらく最悪の状況は回避出来たと思うけど、もう油断はしない。子狼を倒したエルフィーとフェル嬢も一緒に魔王を囲んでいる。


ニコは離れた所でボス狼に跨っていた。仲良くなったとかではなく力でねじ伏せた様だ。周りには土壁や土杭が乱立し、何処だか分からない風景になっている。


「それで、うちの国を狙う理由は何だ?」

「そんなつもりは無い! だいたい、遥か山向こうの城壁の国をどうこうしたって意味ないじゃないか! 頼む、ハブナに引き渡すのだけは許してくれ!」


魔王は両手を挙げたまま必死に弁明する。そんなに故郷に帰るのが嫌なのか? まあ色々有ったみたいだし、トラウマなのかな。


「それはお前次第だ。全部隠さず答えて貰おう。嘘を付いたらハブナに引き渡す」


実際に引き渡すつもりは全く無いけどね。


「・・分かった」



◇ ◇



「つまり転移魔法はあくまで自衛のために使っていると」

「ああ。魔獣に襲われた際に時々使っている」

「いつぞや俺たちに丸太を降らせたのも自衛か?」

「あれもお前たちだったのか。俺を捕まえに来たと思ったんだ」

「そもそもテンイ魔法なんて何時何処で覚えたんですの?」

「それは・・その・・自然にと言うか・・」

「自然にですって?」

「この人魔法の天才なんでしょうか? 魔王を名乗るだけあります」

「おほん、で、自衛の為だとして、どうして俺たちの国に魔獣を飛ばして襲わせたんだ?」


俺はやや強引に話を先へ進めた。そりゃ転生特典で貰ったなんて言えないよな。俺まで巻き添えになりそうだ。二人とも転生者だってバラされたらバラされたでいいけどね。何とかなるでしょ。


「多分・・偶然・・」

「偶然? ここ数年で四回も現れたんだぞ?」

「普段はちゃんとコントロールしてるんだ! 森の奥に返すとか、海に落とすとか。でも、ごく偶に余裕の無い時が有って・・転移先の設定が適当になった・・かもしれない」

「「「・・・」」」


何とも間抜けな真実に、三人とも黙ってしまった。そうじゃないかと思っていたが、侵略だの征服だのと言った意思は微塵も無かった。だったら魔王なんて名乗るなよ。


「わたしもお話したーーい!」


ニコが何か言っているが、スマン、そのままそいつを押さえていてくれ。


「て言うか、あの狼は何?」

「俺の唯一の友達だよ。それと狼じゃない、神獣だ」

「犬の名前を付けてるクセに?」

「犬の名前なんですの?」

「いや、何でも無い。しかし、どうしたものか。連れて帰る?」

「そうですわね。わたくしとしては、早くレイたちの安否を確認したいですわ」

「そうだね。これは確信を持って言うんだけど、四人とも絶対無事だよ。で、何処に飛ばしたんだ?」

「え?」

「お前が転移させた四人だよ」

「ああ、ハチが気付いてくれたから少し余裕が有った。ちゃんと考えて転移させたよ。ノルドの王都の辺りに居ると思う」

「それならきっと無事ですね」

「ええ。ほっとしましたわ」


良し。結局保険は使わないで済んだらしい。或いは彼が転移先にそこを思い付いた事自体が神様の誘導だったかもしれないが。実は夢で会った時に、念の為、生きて帰れない様な所に転移させられそうになったら転移先を改変してくれ、と神様に頼んでおいたのだ。誰か死んでも生き返らせてくれ、とかは無理だったけど、転移の瞬間は別次元だか高次元だかこの世界とは別の場所が関わるので、そこに介在する事は可能との話だった。


「合流するまで三日くらいかかるか。ひとまずモントールの王城に戻るって事でどうだろう? そこでレイたちの捜索も依頼しよう。多分こっちに向かって移動し始めてるだろうけど」

「そうですわね」

「賛成です」

「一緒に来て貰うぞ?」

「う、出来ればハブナに近づきたくないんだが・・」

「国二つも離れてるじゃないか。とにかく来て貰う。あ、ハチ公は留守番で頼むよ。騒ぎになると面倒だから」

「ハチ公言うな! 犬じゃない!」

「じゃあもっと格好良い名前にすれば良かったじゃないか、狼らしいのを」

「昔飼ってた犬に付けてたんだよ!」


やっぱり犬じゃねーか。



◇ ◇



二日後、モントールの王城でレイ王子たちと再会できた。お互いの無事を喜ぶ。ずっと毅然としていたフェル嬢が大粒の涙を流して泣きだしたのには驚いたけれど、考えてみれば当然か。俺は保険を掛けているのを知っていたけど彼女たちは知らなかった訳で、飛ばされた瞬間に何を思ったか、想像しただけで胸が痛む。


「で、君がテンイ魔法を使える魔王なんだね?」

「はい・・その、そうです」

「名前を聞いても良いかい?」

「ユキ・ザーラです。ハブナのロロ村出身です」


レイ王子の態度は思ったよりも冷たくは無い。


「なんだよ、よく見たらまだ子供じゃねーか」


最初は掴み掛かる勢いだったケイも、すっかりしおらしくなった魔王の態度に血の気が冷めてしまった様だ。実際、彼は三つ年下だった。かく言う俺たちも大人になり切れてない年頃なんだけど、一応社会人だしな。


「ふむ」


レイ王子は顎に手を当ててほんの少しの間だけ沈黙した。


「まずはトレンブルハールまで帰ろう。君も一緒にね」

「俺、どうなるんですか?」

「今はなんとも言えない。詳しく話を聞かせて貰わないと。その為にもここを離れよう。多分、そんなに酷い事にはならないと思うよ」

「連合国と相談しなくて構わないんですの?」

「存在しない者を連れて行っても何も言われないさ」



◇ ◇



モントール王に滞在と助力の感謝を述べ、国境の山小屋へ向かう。案の定魔王を連れていても何も言われなかった。その夜、他国の耳目が届かない所で、改めて事の詳細を魔王改めユキに話して貰った。


「ふむ。ある程度は推測していた通りだ」

「つか、何でそこまで男を毛嫌いするんだよ、飛ばされた瞬間、死んだと思ったんだぞ!」

「別に毛嫌いと言う程でも無いんだけど・・」

「わたくしたちを一緒にテンイさせなかったのはどうしてですの?」

「それは・・その・・」


ユキの顔が赤くなった。


「はっきりおっしゃい!」

「その、女の子とは出来れば友達になりたくて・・皆さんとても美人だし・・」

「まあ!?」


フェル嬢は驚き、エルフィーは見るからに喜んでいる。ニコは表情を変えていない様子で話を繋いだ。


「でも、この前はわたしたちも一緒にテンイしたよね?」

「あの時は、皆さんが入り乱れていて、纏めて転移させるしかなくて・・」

「魔の森の中だったんだよ? 遭難するかもしれなかったんだから」

「え? いや、そんな筈は・・山向こうの国の真ん中辺りを狙ったんだけど・・」

「全然違うじゃねーかよ」

「そうだね。偶然建設現場の側だから僕らは助かったけど」


本当にあの時助かったのは偶然も偶然だ。恐ろしくピンポイントなぐう・・ぜんんん?????


「おかしいな。ちゃんと設定すればそこに転移するはずなのに」


まさか!?


「あのさ、ちょっと前に雷獣ってのを転移させたよね? あれも余裕が無くて適当に飛ばしたの?」

「雷獣?」

「ユニコーンみたいなやつ」

「ああ、あの時はあまり余裕が無かったけど、一応魔の森の何処かに転移する様にした」

「ゆにこーんって何ですの?」


ううむ。こちらの情報を先に出さない様に話をしてきたが、きちんと答え合わせをした方が良いかもしれない。でも、今ここで確かめるのはリスクが有りそうだ。



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、有り難うございます。いいねして頂いた方、大感謝です! 続きはまた来週。

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