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63話 決戦

定時更新です。主人公視点に戻ります。


◇ ◇ ◇



王都から再度トレンブルハールへ。騎士爵には早馬便で来訪を知らせておいたが、北へ向かったはずの俺達がまた南から来た事に混乱していた。まあそれも仕方が無い。転移魔法の事を手紙に書くのは万が一情報が漏れるとマズいと言う判断で、断片的な状況しか書けなかった。到着してから直接真相を説明してようやく納得して貰えた様子だ。


最初に乗って来た馬車に加えて追加で調達して来た馬車も預かって貰い、国境の山へ向かう。季節が少し進んだお蔭で足元は完全に乾いていた。前回よりも歩きやすい。山小屋を使うのも四回目なので慣れたものだ。


「おお、なんか懐かしいな」

「そうだね」

「へえ、こんな山の中なのに綺麗な部屋ですね」


半年ぶりのケイとセットや初めて来るエルフィーは興奮気味だが、俺たち再出発組の表情には徒労感が若干見える。


「また飛ばされてまた登る事になったら嫌だね」


ニコがボソッと呟く。


「おーい、フラグ立てないでくれよ」

「ふらぐ??」

「何でもない」


その晩、改めて対魔王の作戦について入念に話し合った。AプランとBプラン。Aプランで事が済めば何の問題も無いだろう。問題はそれが失敗した時のBプランだ。魔王の転移魔法に対して、最悪命を賭ける事になる。


「そんなもん、騎士団に入った時点から覚悟が出来てるぜ」

「僕も。それに魔の森を巡回するだけでも危険はあるんだから、同じだよ」

「わたくしも覚悟は出来ていますわ」

「言うまでもない」

「わたしも頑張る!」

「私もニコお姉さまと一緒なら怖く無いです!」


俺は、即答出来ずにいた。怖い。生き返る事が出来たからこそ、それが増している。


「もしその時になっても迷いが有ったなら、離脱してくれて構わない。それまでは一緒に来てくれるだろう?」


俺の肩にレイ王子の手が乗る。実際に逃げ出してもきっと誰も責めないだろう。けれどきっと今迄通りの仲では居られない。何より俺が俺自身を責め続ける事になる。この先ずっと。それはニコとの関係だって・・。でも、だからと言って本当に命を懸ける意味があるのか? 魔獣騒ぎも多少の怪我人だけで犠牲者は出ていない。これからも出ないかもしれない。


「・・いや、行くからには俺も作戦に参加する」


俺は覚悟を決めた。



◇ ◇



モントール王国に到着すると、経緯を説明するのに更に苦労する。何しろ俺たちが中州に渡ってから一週間以上帰って来ないものだから、王城内は半ばパニック状態になっていた。幾ら何か有っても自己責任と取り決めてあっても、ホックフォルテガルドの王子が失われる事になれば両国間の関係は微妙なものになるだろう。連合国盟主の座を奪わんと野心を抱くモントール王にとってイメージダウンはかなりの痛手だ。


適当な理由を言っても誤魔化しきれなくなり、レイ王子とモントール王との密談の場が設けられた。結果は上手く行ったようだ。



「それで、どうやって誤魔化したの?」

「いや、誤魔化すのは止めたよ」

「転移魔法の事、話したの? 大丈夫?」

「ああ。野心が大きい者ほど口は堅いからね。その代わり魔王の対処が上手く行ったら我が国としてもその存在は公言しないと約束した。元々彼らは魔王の存在を否定しているのだから、モントール王国が魔王を中州に匿っているなんて言われ方はされたくないだろうさ」

「酷い言いがかりだ・・」

「単なる言葉の上の駆け引きだよ。野心故に駆け引きに応じざるを得ない」

「じゃあ今回の事が済んだら連合国の盟主になれるように手を貸してあげるの?」

「我々との交易が本格的になれば、それ自体が手を貸す事になるんじゃないかな」

「交易の拠点として発展するから?」

「我が国と取引をしたいなら、連合内の他の国もここに拠点を置くことになる。遠からずモントールの名が連合国を指す様になる」

「モントール連合国に名前を変えるのもやり易くなるのか」

「それもこれも作戦が上手く行ったらだがね」

「上手く行って欲しいよ。なるべく楽な方で」

「全くだ。でも楽では無い方にも備えて今日は早く休もう」



◆ ◆



ふわふわと体が浮いている。またこの空間か・・って、ええ!? 俺また死んじゃったの!? もう生き返れないのに!! どうしてだ!? 夕べ食べた料理の中に毒でも入ってたとか!? うわー どうすんだ! どうすんだよ! せっかく・・


「死んではいないです! 落ち付いて!」


何も無い空間に女の人の声が響き、姿が露わになる。


「神様?」

「はい、そうです。貴方の夢の中にお邪魔しています。死んで無いので大丈夫ですよ」

「そうなんだ・・はああああああ、脅かさないで下さいよ、てっきり死後の世界かと」

「現世の人とコンタクトを取るにはこの空間でないとダメなんです。ちなみに死後の世界と言うのはもっとこう・・いえ、それは置いておきましょう」

「それで? 何か御用ですか?」

「明日、勇者候補と相まみえるのですよね?」

「ええ、上手く行けば」

「それなんですが、一つお願いが有りまして・・」

「なんでしょう?」

「その、彼とは戦って殺したりしないで欲しいんです。出来れば説得と言うか、更生と言うか、上手くやって貰えないかなあ・・と。貴重な勇者候補なので」

「そんな事を言われても、向こう次第でどうなるかは分かりませんよ。身の危険があれば戦います」

「そこを何とか」

「何とかと言われましても。そもそも神様が彼の夢に入って自分で説得すれば良いじゃないですか」

「それが出来ないんです。と言うか、私が何を言っても彼には聞こえないんです」

「どうして」

「私、彼からブロックされてまして」

「ブロック・・」

「ええ」

「なら、サブ垢で」

「そんな物は無いです」

「 」

「お願いします! この世界を守る為なんです!」

「・・確約は出来ませんが、善処します」

「良かった! 期待してますよ!」

「ちなみに、上手く行かなかったらどうなるんです?」

「そうですね。貴方に真の魔王を倒してもらいましょうか。成り行き的に」

「嫌ですよ、そんなの!」

「毎晩夢に出て説得します」

「ブロックしますよ?」

「毎晩貴方の幼馴染の夢に出て説得する様に頼みます」

「それはやめて!」

「では頑張ってください」

「うぐぐ。分かりました。でも一つお願いがあります」



◆ ◆



翌早朝、雪解けが収まって元の水量に戻った大河を渡る。今回の作戦は魔王が俺たちを見つけるより先にこちらが魔王を見つけるのが肝なので、今迄より河口側に回り込んで渡った。いったん森に入り、河原から姿が見えない様に上流側へ移動する。


「姿を見たのはこの辺りですわ」

「そうだね。少し下がろう」


前回魔王が居た辺りから離れて茂みに潜む。ここで待ち伏せだ。


「それじゃ頼むよ」

「分かった」


上流側の河原と森にかけて探知魔法を展開する。俺とニコが交代で受け持ち、残りの皆は下流側を警戒して貰う分担にした。前回同様に森で捕った獲物を持って魔王が現れる想定だ。いつ現れるかは分からない持久戦。今日がダメなら明日、明日がダメなら明後日まで続ける予定になっている。その間、空気の動きを聞き取る耳だけが頼りだ。


休みながらでも神経がすり減り、疲労が溜まって行く。


「簡単なものですが食事を作りましたわ」

「交代で食べて下さいね」


何事も無く時間だけが経ち、フェル嬢とエルフィーが作ってくれた暖かい昼食を頂く。気持ちが癒されて凝った肩もほぐれていく感覚。


「このスープも美味しい」

「疲労回復の効果があるんですよ。レシピをお姉さまから教えて貰ったんです。騎士団でも好評な・・」

「みんなっ」


探知を続けていたニコの声に会話が止まる。視線を森の奥に向けたまま手を挙げて合図をしていた。場の雰囲気が一気に緊迫する。


「居たかい?」

「うん。森の中に居る。河原に向かってるみたい。遠いからもう少し近づいた方が良いかも」

「では音を立てない様に静かに進もう」


茂みの中を上流側へ移動すると、先頭を行くニコが再び手で合図をしたので一同停止する。


「もうすぐ河原に出て来るよ」

「分かった。作戦開始だ。くれぐれも無理はしないでくれ」

「うん。任せて。フェル、エルフィー、行くよ」


三人が茂みからゆっくりと出て行った。今迄の魔王の行動からして女の子だけなら敵意を向けない様なので、俺たちは隠れたままこの三人で対話に持ち込むのがプランAだ。男としてはいまいち情けない作戦だが、自分が最前線に立つことをニコが特に望んだのもあって採用された。ニコがと言うより、俺を後方に置きたいのが本音なのも分かっているので尚更情けない作戦だが、死んだ手前言い返せないし有効な策でもある。もちろん怪しい動きが有れば直ぐに加勢する算段だ。


「向こうが彼女たちに気付いたみたいだぞ」

「上手く行くと良いね」


まだ少し距離が有るが、ニコが軽く手を振りながら魔王に話しかけている。俺たちの事は気づかれていない様だ。


「いいぞ、逃げる様子は無いな」

「ああ、だが油断は出来ん」


両者が近づく。すると突然何か白っぽい物が森から飛び出してきた。反射的に剣を抜いて構える三人。一方の魔王は動じる様子が無い。白い何かは大きな獣だった。静かに魔王の横に並び、ニコたちの事を気にする様子も無く、視線を真っすぐ俺たちの方に向けて唸り声を上げた。


「あれは狼かな? もしかして神獣?」

「さあな。どっちにしても魔王の手下っぽいぜ」

「様子を見よう」


白い狼の様子に魔王も異変に気付いたらしい。


「そこに誰かいるのか!?」

「ちっ、気づかれたか」


森に潜む俺たちの存在がバレてしまった。こうなると作戦はプランBに移行せざるを得ない。逃げられる前に全員で突撃するのだ。当然転移魔法を喰らうリスクが高いが、その気配が有ったら散開して的を絞らせない事で対処する。一度に全員がやられるのを避けて何度も使わせる事が出来れば、最悪作戦が失敗しても弱点が見えるかもしれない。転移先が何処になるのか分からないので各自携帯食料を多めに持っている。水は魔法で出せるから、一週間以上生き延びられるだろう。魔の森最深部で魔獣の群れの只中に飛ばされるとか海の真ん中に落とされるとかだと万事休す、まさに命懸けだが、そこは保険が効く事を願うのみだ。


「行こう!」


レイ王子の掛け声で一斉に森から出て駆け出す・・はずだったのだが、


「痛てて」


またしてもズッコケてしまった。張りだした木の根が俺の足元の所だけ土から顔を出している。まったくツイてないし格好悪い。作戦離脱と思われたら尚更格好悪い。早く行かないと。


河原では、先に行った四人が目前に迫るのに対抗して、魔王が以前に見た両手を前に翳す動きをしている所だった。嬉しく無いが想定通り。それぞれ四方に散って遠ざかる。上手い。あれなら同時に対処するのは難しいだろう・・と、思ったが、四人の体が同時にぼんやりと光り出した。そして次の瞬間、四人とも跡形もなく消え去った。



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、有り難うございます。ブックマーク、いいねして頂いた方、大感謝です! 続きはまた来週。

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