62話 謁見
定時更新です。◇×2は場面転換を、◇×3は話者転換を示しています。終盤はニコ視点に移ります。
◇ ◇
王都に着いた。王都側には立派な駅舎が出来ていて、輸送する物資を保管する倉庫なども立ち並んでいる。ここでいったん解散かと思いきや、寮には帰らず王宮内の客間に泊まる事になった。広くて立派で少々落ち着かない部屋に感じたが、フカフカのベッドに沈み込むと直ぐに眠りに堕ちて行った。
翌朝、身支度を整え終わる頃に丁度レイ王子とジンが呼びに来た。これから国王に謁見するのだ。・・・・・。いや、何で俺が!? そりゃ事の顛末を説明する必要が有るのは分かるけど、レイ王子が話せば良いじゃん! 今迄そうして来たじゃん! あー、緊張するなあ。何か粗相をしたら即死刑だよなあ。その前に緊張で死んでしまうかも。
「帰りたい・・」
「まあそう言わずに」
レイ王子はすこぶる上機嫌だ。せめて他の皆も一緒なら良かったのに、三人だけって実質俺と王様の一対一なのでは。本当に帰りたい、足が重い。胃が痛い。
「この部屋だよ」
レイ王子が足を止める。あれ? 金の縁取りで赤く塗られた扉・・ここって見覚えがあるぞ。
「今日はあくまで非公式の場だから、気を楽にね」
扉が開く。見知った光景。過ごしたのは数日だけど懐かしい気さえする、第二王子付近衛室、俺たちのホームだ。その真ん中の応接セットに、学園の教室に飾ってあって見慣れた肖像画そっくりのイケおじが、座ってお茶を飲んでいた。その後ろには白い近衛服を着た二人が立って居る。
「父上、お待たせして申し訳ありません」
「構わんよ。掛けてくれ。アルバス、君もな」
俺の名前を知って・・るよな。今まで何度もレイ王子の話に出てきているのだろう。二人で向かい側に座る。給仕がすっと奥の部屋から来て、俺たちの分のお茶がテーブルに置かれた。ジンは扉の外で見張っている。このお茶、飲むタイミングが分からないな。飲まなくても良いか。俺の茶が飲めないのか罪で死刑! 何て事にはならないよね。
「君の事は以前よりオーズタットから聞かされている。最近はコレの相手をしてくれているのだろう?振り回されて大変じゃないかね?」
王様はチラっとレイ王子の方に目をやってから、ニヤッと笑ってウインクして見せた。流石親子、仕草がそっくりだ。
「いえ、決してそんな事は・・」
「そうか。それは頼もしいな。ははは」
王様の人柄のお蔭で、場は直ぐに和やかなものになった。
◇ ◇
「ふむ。身をもって証明した訳だな」
「はい」
「テンイ魔法・・その様な魔法が存在するなど信じたくは無かったが。アルバス、最初にその可能性を指摘したのは君だったな。何故そう思った? 容易には辿り着かない発想だと思うが?」
う、それ聞いてくるか。まさか前世のラノベで良く出て来たとは言えないしなあ。
「それは・・その・・今までの事件を繋ぎ合わせて考えた時、一番合理的な答えになると思いまして・・」
こんなんで納得してくれるだろうか? あまり説明になってないけど。
「合理的・・か。なるほど」
良かった。取り敢えずこの場はこれで大丈夫そうだ。
「この件が落ち着いたら何か褒美をやらねばならんな。何か望みはあるか?」
「いえ、そんな、いずれは誰かが同じ答えに辿り着いたと思います」
あ、反射的に遠慮しちゃったけど、まずかったかな・・。
「はっはっはっ! オーズタットと同じ事を言いよるわ」
「え?」
「まあ良い。褒美の内容は儂の方で考えておこう」
◇ ◇ ◇
あーあ、わたしも王様に会ってみたかったなあ。今頃アルはどんなお話をしてるんだろう?
「ニコお姉さま?」
「あ、うん、ごめん。ちゃんと見てるよ」
アルを待っている間、わたしたちは中庭の一つを借りて剣のお稽古をしていた。すると、エルフィーが新しい魔法の技を見せたいと言うので、練習用の的を中庭の端に立てて皆で見る事にした。前にわたしが海で見せた魔法のやり方をずっと練習していたのは知っているけど、あれって本当のやり方じゃないんだけどなあ。でも、出来たら凄いな。
「行きますよー」
「本当に出来るのか?」
エルフィーが右手で剣を構えたまま左の手を前に出すと、小さな石の礫が二つ現れて、少しずつ大きくなっていく。
「たああっ」
掛け声と一緒に礫が飛んで行って、立てた棒の先に有る丸い的に命中した。
「おお、すげえじゃねえか!」
「本当に出来るんだ」
「もうちょっと練習すれば三つ飛ばせそうなんです」
「エルフィー凄いね、頑張ったんだね」
「はいっ、ニコお姉さまの力になれるようもっと頑張ります!」
エルフィー、本当に元気になった。そうやって元気に笑ってくれると、わたしも元気になって力が沸いて来るんだよ。
◇ ◇ ◇
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