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60話 対峙

定時更新です。◇×2は場面転換を、◇×3は話者転換を示しています。終盤はダット視点に移ります。


◇ ◇



「もういいって、本当に大丈夫だから」

「しかし・・」


ジンが土下座する勢いで謝って来るのをどうにか宥める。もう一匹に気が付くのが遅れたのはお互い様なのだし、彼の責任ではない。逆の立場だったとしても、どうする事も出来なかっただろう。むしろ剣の速度はジンが一番速いのだから、それで無理なら誰であっても助けるのは無理だ。


「でも今日の所は中州に戻ろう。頭を強く打っているのだから無理は良くない」


脳震盪も後遺症も心配無いのだが、おとなしくレイ王子の判断に従う事にした。一挙手一投足を皆に注視されながら来た道を引き返す。躓いてよろけたりしたら大騒ぎになりそうだな。足元に気を付けねば。茂った下草に注意しながら歩いて行く。やがてさっき見つけた罠の所を通りかかった。


何だろう? 何か大きな違和感が・・。


「あれ?」

「何かおかしいですわね」

「ああ」

「あ、ウサギが居ない!」


宙吊りになっていた筈の兎が姿を消している!?


「罠を抜けて逃げたのか・・」

「・・あるいは獣人が回収したか、だろ?」


レイ王子とジンが顔を見合わせる。近くに魔王が居るのかもしれない。


「ふむ。いずれにせよ僕らは川に戻ろう」

「周りを捜索しなくて良いの?」

「ああ」

「俺の怪我を心配してるなら、本当に何とも無いから」

「いや、それも有るが、君なら捕まえたウサギをどうするかね?」

「そりゃまあ煮たり焼いたりして食べ・・そうか!」

「河原だね! 森の中で火を使うと怒られるから!」


ちょっ、答えを先に言わないでよ。まあ確かに開けた所の方が周囲を警戒し易いだろうし、中州なり河原なりで食事するのが合理的かあ。水も使えるしね。怒る相手が居るかは別として。



◇ ◇



木々の密度が若干薄くなり、川の水音が聞こえて来た。もう少しで森を抜けそうだ。先が明るく見えている。


「あ、居る! ちょっと見て来るね」


歩きながら探知魔法を展開していたニコが川に向かって走り出した。


「一人で行っては危険ですわよ!」


フェル嬢が釣られる様に後を追う。出遅れた俺も続こうとしたが、下草で足を滑らせてズッコケてしまった。


「痛てて」

「「大丈夫か!?」」


レイ王子とジンに両側から抱えられて起き上がる。


「大丈夫、大丈夫。足が滑っただけだから。行こう」


森の出口はすぐそこだった。眼前に白くて広い河原が広がる。その真ん中ら辺にニコは居た。何やら大袈裟な身振りで叫んでいる様子だ。隣でフェル嬢も何やら言っている。そして、その視線の先に・・居た! 例の魔王、いや、自称魔王の獣人だ! 前に見たのと同じ風貌なので間違いない。魔王は少し上流の川岸に居る。距離は有るがニコの声に反応してるっぽい。こっちに近づいて来てる?


「早く二人に合流しよう」

「ああ」


敷き詰まった石の上を二人の下へ走る。すると、俺たちに気が付いた魔王がビクッと変な挙動をして歩みを止めた。ニコも釣られるように立ち止まるので、追いついて彼女の腕を掴む。


「先に行ったら危ないじゃないか」

「ごめんなさい。でも、危ないかもしれないから、わたしが先に・・さっきみたいに間に合わなかったら嫌だから!」


涙目で訴えるニコ。考えてる事は分かるが、冷静さを欠いている。


「俺だって逆の立場になったら、ニコに何か有ったら嫌だよ。それは分かってくれるよね?」

「・・うん」

「まあ、この話はまた後で・・」

「逃げたぞ!」


ジンが叫び声と共に走り出す。レイ王子とフェル嬢も続く。しまった、目を離している場合じゃ無かった。自称魔王はさらに上流に向かって逃げている。さっきまでこっちに向かってたんじゃないの?


「行こう」

「うん」


俺とニコも追う。森に逃げ込まれると巻かれる可能性が有るが、幸い魔王が川辺に居たお蔭で森側を遮る様に追う事が出来ている。それに、獣人は力持ちとは聞いているが走りは大した事が無いのか個人差なのか、引き離される事も無い様だ。


「待て!」

「待ちたまえ!」

「待ちなさい!」


向こうが疲れて来たのかジンが距離を詰める。すると、魔王はこちらに向き直って身構え、手を前に翳した。ジンが間合いを取って何時でも剣を抜ける姿勢を取る。また止まってくれたので俺たちも追いついた、と思った瞬間、目の前が真っ白になった。え? これってまた死んだ!? マズい、もう生き返れないのに!!



◇ ◇ ◇



俺ら騎士団が防塁建設に駆り出されてから随分経つ。冬の休工期間を挟んで半年くらいになるだろうか。テツドウとやらが途中まで出来て往来は楽になったが、作業自体は相変わらず人海戦術だ。多少は慣れたが地道な作業ってのはどうにも性に合わねえ。


「ったくよお、土いじりは騎士の本領じゃねえっつーの」

「ダット、手が止まってますよ」

「なあシルフィー、無理に付き合ってくれなくても良いんだぜ? 今からでも王都に帰ってゆっくりしてれば良いじゃねーか」

「私が見てるとサボれないからですか?」

「まあそれも有るっちゃ有るが、大体、傷病手当を返上する代わりに同行させろなんて割に合わねーだろ。戦力にならないお前の事を許可する隊長も大概だがな」

「足手まといですか」

「そうは言わねーけどよ。お前の事だから何か有っても上手く逃げるだろうが、一般公募の雑用係扱いになってまで来なくて良いんじゃねーか? 引退したとは言えお前にも騎士団員のプライドが有るだろうに、剣も持たせて貰えないのは辛くねーのかよ」

「別に。何とも」

「はあ。そりゃまた随分・・」


ガサガサッッ! ドスンッドスンッ! バキバキバキッッ!!


その時、背後の茂みで大きな物音がした。魔獣か!? それも複数? ちっ、見張りの連中は何してやがった!


「シルフィー! 俺の後ろに回れ!」


シルフィーを庇いながら剣を構えた。茂みの中では相変わらずガサゴソと音が鳴っている。ん? 何かおかしい。これは人の声か?


「痛ーーい!」

「何が起きた!? どうなっている!?」

「皆、無事か!?」

「わたくしは平気ですわ」

「何とか大丈夫みたい!」



◇ ◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、有り難うございます。いいねして頂いた方、大感謝です! 続きはまた来週。

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