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58話 消える走馬灯

定時更新です。物語は佳境に入ります。


◇ ◇



「足元が湿ってますわね」

「歩きにくいよお」


ここの森は王都近くの人の手が入った森とは違って、まさに密林だった。下草が伸び、倒木が行く手を遮る。針葉樹の葉が幾重にも重なって薄暗く見通しも悪い。野獣も魔獣も何時でも出て来そうな雰囲気だ。襲われたたらひとたまりもない。


俺達は二組に分かれて探知魔法で周りを警戒しながら奥へ進んだ。川から離れた事で探知が効くようになった。歩きながらだと感度が鈍るので、ニコが立ち止まって探知してから俺とジンが進み、俺が探知して安全なのを確認してからレイ王子とフェル嬢とニコの組が進む。互いの声が通る距離を保ちながら、互いの探知の邪魔にならない様に足音を最小限に歩いた。時間は掛かるがこれくらい慎重で良いだろう。


マッピングしながら捜索を続ける。時折川岸に出て位置を確認し、また森へ分け入る。


「もう少し奥まで行ってみよう」


木に目印を刻みながらさらに奥へと進む。暫く歩いていると、


「待て」


ジンが手で遮った。


「どうしたの?」

「そのまま動かずに足元をよくみて見ろ」


視線を落とすと、地面をロープが這っていた。目で辿って行くと近くの木に伸びていて、枝が不自然に撓んでいる。反対側を辿った先には棒と石が組み合わさった仕掛けの様な何かが半分土に隠れた状態で置かれていた。


「これは・・」

「罠だろうな」


見つけた。兎などを捕る為に作ったものに違いない。この辺りが魔王のテリトリーだ。レイ王子達を呼び寄せ確認して貰う。


「ようやく手掛かりが見つかったね」

「あっちでウサギの鳴き声がする!」


ニコが何かを探知したらしい。行ってみると、ロープで宙吊りになった野兎がキーキー鳴いていた。もう一つ罠が仕掛けてあった様だ。


「これどうする? 貰っちゃう?」

「待っていれば獣人が取りに来るのではないか?」

「直ぐに来るとは限りませんわ」

「この辺りを重点的に捜索してみよう。多少危険性が増すが魔王と行き違いにならない様、二手に分かれてまたここに戻って来るのでどうだい?」

「探知魔法でお互いの位置も確認しながら行くって事で良いのかな?」

「そうしてくれたまえ」



◇ ◇



来た方向に対して斜め右と斜め左に分かれて進む。やがて互いの姿は木々の陰で見えなくなった。探知魔法を展開して確認する。いったん立ち止まって集中して空気の流れを薄く広く伸ばしていくイメージで・・良し、ちゃんと足音や話し声を捕らえる事が出来ている。ニコの方が魔力は強いから、向こうも把握出来ている筈だ。


進んでは止まってを繰り返す。互いに結構離れたと思う。


「止まれ」


ジンの声が掛かったので振り返ると、すぐ脇にまた罠が仕掛けてあった。


「同じ仕掛けだね」

「この辺りが狩場のようだな」

「だね。・・ん? ちょっと待って」


探知魔法に反応が有った。


「奥の方から何か近づいて来る。足音が二つ」

「あの獣人か?」

「分からない。ゆっくり歩いてる様な音に聞こえる」

「身を隠すぞ」


いざとなったら左右から挟み撃ちできるような位置を取って、それぞれ大木の陰に隠れて待ち構えた。やがて、ガサガサッと枝葉が揺れる音と共に黒い物体が一つ現れる。あれは・・ゴリラ? 魔獣なのか野獣なのか分からないが人の背丈より大きい。まだ距離が有るのでこちらに気づいていない様だ。ゆっくりと歩いて居る。


今の内に応援を呼ぶべく、小声を風魔法に乗せて放つ。


「ニコ、聞こえるか? 大きな獣と遭遇した。来てくれ」


返事は無い。多分こっちの声は聞こえていると思うが、返事を風魔法に乗せるとゴリラにも感付かれるので敢えて黙っているのだろう。だいぶ近付いて来た。そっと剣を構える。このままやり過ごせるに越した事は無いのだが。しかし、足音は二つ聞こえた気がするんだけどなあ。


「上だ!」


ジンが叫ぶので思わずそっちを見てしまう。すると、ドサッと背後で何かが落ちる音がした。振り向くと、もう一体のゴリラが両手を組んで俺の頭に振り下しているのが一瞬だけ見えた。



◆ ◆



何も無い空間。どっちが上でどっちが下なのかも分からない。暑さも寒さも感じない。真っ暗な様で全て見えている気もする。そんな空間に漂っている中で、俺は目覚めた。そうか、俺は病気で入院して結局そのまま・・。とにかくツイてない人生だった。


いや、でも、魔法が使える世界で旅をした記憶も有るような・・まあ、多分夢だろう。死に際に願望が夢になって頭をよぎったとかかな。走馬灯みたいな感じで。異世界転生なんて実際には有る訳が・・


「夢ではありませんよ」

「!?」


声と共に白い衣を纏った女の人が現れた。凄い美人だ。あれ? この人どっかで会ったような気もする。


「あなたは確かに転生をして、転生先でもう一度死んだのです。頭を強く打ったので記憶が混乱しているのでしょう」

「えーと、ちょっと待ってくださいね。今整理しますから」


額に指を当て、順を追って思い出すようにする。段々とくっきりしてきた。そうだ、今の俺はエンデナ村出身で近衛に出向して北の国へ行って・・。


「どうですか? 夢では無かったでしょう?」

「はい。あ、いや、物凄くリアルな夢と言う可能性も・・」

「転生したんです! 私が転生させたんですぅ!」


女の人はふくれっ面になって主張した。カワイイ。めっちゃ好みのタイプ。何処となくニコに似てるかも。


「わ、分かりました。その、転生して、結局また死んでしまったんですね。やっぱりツイてないと言うか、いかにも俺の人生って感じで納得してしまうな。はああ。ところで、あなたは神様的な人・・人じゃないか、神様なのですか?」


「そうです」

「転生する時、お会いしました? 良く覚えて無いのですが」

「会ってますよ。覚えていないのはあなたがそうする様に頼んだからです」

「へ?」

「転生特典を選ぶにあたって・・」

「転生特典! 選んだ覚えも無いんですけど!」

「おほん、話を最後まで聞いてください」

「す、すみません」



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、有り難うございます。続きはまた来週。

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