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56話 戦時

定時更新です。


◇ ◇



ベタだけど、雷撃を防ぐには絶縁体の防護服だろうか。しかしそんな物はここには無い。有るのは・・。


「土とか石とか電気を通さない物を盾にすれば防げるかもしれないけど、金属の剣を持っているんじゃあまり意味が無いかな」

「ふむ。確かにさっきの雷魔法は剣先を狙っていたね」

「狙っていたと言うより、剣先に勝手に向かうんだと思う。金属で突き出ていてるものに雷は落ちやすいから」

「!? そっか! じゃあこうすれば良いんじゃない?」


ニコが何かを思い付いたらしい。


「何をするんですの?」

「ヒグマの真似!」


そう言うと、両手で剣を握り、ぐぬぬと念を込めた。やがて剣の周りに無数の砂粒が纏わりついて螺旋を描く。


「それ、アルが前にやっていた応用ですの?」

「そう!」

「それは良い考えだね」

「ああ」


火熊と戦った際に頭に浮かんだ炎の剣。あの後暫く練習して習得したものを皆に披露したら、数日後には全員出来るようになっていたと言う”エリート集団あるある”を体験したのだが、なるほど、火魔法の代わりに土魔法でやるって事か。


「強化魔法と同時は難しいですわね」

「この際強化は二の次にしよう。近衛の剣はどれも業物だ」

「視界が悪くなるな」


なんだかんだ言いながらも皆直ぐにやって見せる。


「三班、構え!」


隊長の号令がかかった。これで上手く行ってくれよー。


「二班後退、三班突撃!」

「「「おおおーー!」」」

「「やあああ!!」」


同時に雷獣の角が光った。ほんとに来た! 雷撃が枝分かれして各々を襲う。


「うわあ!」

「たあああっ!」

「ふんっ!」

「やああ!」

「とおおー!」


光が剣に繋がって一瞬引っ張られる様な感覚が有ったが、力一杯振りほどくようにすると雷撃は地面へと消えて行った。よし! 凌いだぞ!


ほぼダメージ無く攻撃に移る。次のターンから一班も復活して三交代での攻めになった。やがて体力が尽きたのか、


ドズサアアアアアッ


っと、雷獣の脚が崩れ、横っ腹を派手に地面に打ち付けた。


「腹を狙え!」


即座に隊長の指示が飛ぶ。こうして遅れて到着した二番待機の他の小隊が見守る中、トドメを刺すことが出来たのだった。



◇ ◇



その後死体の検分が行われ、改めて雷獣と特定された。魔獣戦争時代でさえ目撃例が殆ど無いレアな魔獣だ。内臓を調べた所草食らしいとの事だったが、人に危害を加えた以上は処分されてやむを得ないだろう。まさか飼う訳にもいかないだろうし人に慣れるとも思えないし。


「隊長さん、すぐに雷獣って分かったの凄いな」

「魔獣が現れる様になって彼らも色々勉強している。魔の森に入って魔獣と遭遇する確率が一番高いのが彼ら騎士団だから、当然ではあるがね」

「ふーん」

「ところで、さっきデンキを通さない物がどうとか言っていたが、デンキって何だい?」

「え? ・・あー、えっと・・」


やらかした! この世界に電気と言う言葉は無かったんだった。雷という言葉は有る。冬場に服を脱いだ時なんかにパチっと起きる静電気の事は”小さな雷”と呼ばれている。あとクラゲが刺してビリっと来るのも雷魔法と言う事になっている。


「そんな事言ったかな? 雷を通さない石とかって言ったと思うけど」

「そうかい?」

「そ、そうだよ」

「ま、今日の所はそう言う事にしておくさ。魔獣騒ぎが落ち着いたらいずれまた話そうじゃないか」


うわー、めっちゃ不穏な発言。これ、根掘り葉掘り突っ込まれて電動モーターとか発明する羽目になったらどうしよう。文明を思いっきり変えてしまう責任は取りたくないなあ。蒸気機関は、お湯の沸騰自体は身近な現象だからまだしも、電気は完全チートだよなあ。


「うーーーーむ」

「アル、どうしたの? 雷獣にどこかやられた?」

「いや、大丈夫。大したことじゃないから」

「ふーーん」


アルがまた変な事考えてる、って顔に書いてあるけどスルーだ。


「しかし、これはマズい事になったね。これをどう国民に説明すべきか。判断を誤ると国そのものが危うくなる。父上のお考えはどうだろうか」


レイ王子が更に不穏な発言をする。そして、翌日、王宮より重大な発表がなされた。


雷獣の侵入を率直に認め、国王が国民に対して詫びたのだ。ただし、どうやって城門の内側に現れたのかは不明とされ、恐らく森から人目を避けて歩いて来たのではないか、人目に付かないまま壁を飛び越えたのではないか、何しろ資料が乏しく驚異的な跳躍力を持っている可能性も否定できない、と濁された。転移魔法に付いては当然伏せられたままだ。まあ本当に転移して来たのか証拠も無いのでそれが正しいのだろう。


そしてこの事態を受け、魔の森に建設中の防御壁、後に防塁と言い方が改められた、の完成を更に急ぐ旨が改めて言い渡され、その実行の為に王都に戦時宣言が出された。王都内の商人に対して資材や食料を防塁建設に優先的に回す事を義務付けるもので、同時に魔の森への立ち入りは届け出制になった。そして学園は休校となり在校生及び新入学生は防塁建設の支援に回る事とされた。


新年度の僅か二日前の事である。



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、有り難うございます。続きはまた来週。

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