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55話 異変

定時更新です。


◇ ◇



三月末。王都に戻って来た。城門の前を通り過ぎ、ぐるっと裏手の方に回って厩舎の脇の駐車場(?)に馬車を止める。荷物を降ろそうと抱え上げた所で思わずよろけてしまった。


「おっとっと」

「大丈夫かい?」

「いやあ、馬車に乗りっぱなしで体が鈍ったかも」


仕事の緊張が急に抜けて力が入らなくなったってのも有るかな。とにかくホッとしている。


「お疲れ様。後は報告書を書き上げれば全て完了だ。これと言って問題も無かったし、兄上もきっと認めてくれるさ」

「そうであって欲しいよ」

「もっとも不合格で農政課に戻されたとしても、あそこに君らの席は無いがね。あの部屋を見ただろう? 定員一杯で新しい机を置くスペースが無い」

「え、そうなの? もしダメだったらどうすれば・・て言うか、先に言ってよ」

「先に言ったら変に緊張してしまうだろ? これは僕なりの・・ん? 何だか騒がしいね」


レイ王子に言われて聞き耳を立てると、確かに人の悲鳴のようなものが聞こえる。通用門の向こう側だ。


「レイ、無事か!?」


馬を預けに行ったジンとニコが慌てて戻って来る。


「大丈夫だよ。声がしたのは門の中だ。僕らも行ってみよう」

「おい、レイ!」

「君が戻って来たから行くんだよ」

「信頼されてますわね」

「そんなの口実だ。騒ぎに首を突っ込みたがるのはレイの唯一の欠点だな」

「あら、唯一なんですのね」


なんて軽口を叩き合っているとレイ王子が通用門を入って行くので慌てて追いかける。門の先は広場になっていて、庁舎とも王宮とも少し離れている。正門はさらに遠い。その広場の奥の方で事件は起きていた。


「うわあああ! 何だコイツ! 魔獣なのか!?」


作業着を着た、王宮付きの庭師らしき人が尻餅をついて叫んでいる。傍らにはもう一人、同じ格好をした人がくったり横たわっていて動かない。そして二人に寄り添う様に、剣を構える騎士団員が居た。きっと通用門の門番だろう。さっき通る時に誰も居なかった。


「ウマ?」

「ウマですわね」

「いや良く見たまえ」


馬っぽい生き物が首を激しく振ったり足で地面を蹴ったりしている。興奮しているらしい。そして乱れる鬣の間から、馬には無い筈の一本の細い角が見え隠れしていた。大きさも普通の馬の二倍くらい有る。あれはユニコーン??


「どうやら魔獣のようだね」

「まさか! これもテンイ魔法とやらか!?」

「アルの言っていた事が本当になってしまった様だ。このままでは彼らが危ない。加勢しよう」

「レイ、待て!」

「分かってる、むやみに突っ込んだりしないさ。でもあの庭師二人は引き離さないと。手伝ってくれるだろ?」

「ならば囮は俺がやる」

「わたしも!」

「アル、倒れている方を運ぶのを手伝ってくれ。フェルはもう一人の誘導を頼む。ジン、陽動だけで頼むよ。そのうち正門の騎士団たちが来る。倒すのはそれからで良い」

「分かった」

「承知ですわ」

「了解した」

「では行動開始だ!」

「うおおおお!!」

「やああああ!!」


ジンとニコが相手の気を引くように雄叫びを上げて向かって行く。その間に俺はレイ王子と庭師を持ち上げようとした。重い。意識の無い人間って重いって聞くけど本当だな。でも息は有るみたいだ。


「タイミングを合わせよう。いち、にい、さんっ!」


肩と足をそれぞれ持って、掛け声でようやく持ち上がった。なるべく揺らさない様に、ユニコーン(仮)から遠ざける様に運ぶ。もう一人もフェル嬢が連れてきている。アンタ誰だ、とか最初はブツブツ言ってたけど、言う通りになさい! と凄い迫力で一蹴されて従っていた。侯爵家のオーラ、半端ねえ。


「よし、この辺りで良いだろう」


広場の端に有る建物の陰に入り、そこにそっと降ろす。建物越しに騒ぎを覗いていた野次馬の一人に医者を呼んでくる様に頼み、俺達はすぐさま引き返す事にした。ちょうど正門の方から走って来た十人ほどの騎士たちと重なって、一緒に広場の中央へ走る。



◇ ◇



ユニコーンは先程と同様に地面を蹴って土煙を上げているが、ジンたちが上手く囲い込んで牽制している様だ。睨み合いが続いて戦闘にはなっていない。騎士団が素早く横に並んで配置に付く。


「小隊、構え! 突・・」

「雷魔法を使います!!」


隊長の合図を遮る様に、門番が叫んだ。


「散開!」


即座に指示を変更する隊長。各々ジンたちと重ならない様に距離を取って取り囲む。


「雷魔法だと? あれは雷獣か!?」


魔獣の正体は雷獣と言うらしい。雷獣っていつぞやの露店で買った黄色い木彫りの・・いや、それどころでは無いな。所謂電撃使いか。さっきの庭師の人は感電したのだろう。


「ジン、ニコ、君たちは下がれ!」


レイ王子が珍しく命令口調で言う。


「でも、わたしたちもお手伝いした方が良いんじゃない!?」

「いや、返って邪魔になるといけない。専門家に任せよう」

「分かった」

「小隊、交互突撃用意! 構え!」


隊長の号令と共にザッっと足音がして騎士団員が二重円の陣形を取る。


「一班、突撃!」

「「「「「おおおおーー」」」」」


その半分が雷獣に向かって突進する。その時、細長い角が青白く光った。


「「ぐあっ」」

「「ぎあっ」」


角の先から放たれた白い稲光が四方に分かれて突撃する剣先に落ちる。突進が止まり蹲る団員達。だが分散されたのが幸いしたのか失神する者は無く辛うじて動ける様子だ。


「怯むな! 奴の雷魔法は連続では使えん! 一班後退! 二班突撃!!」

「「「「「うおおおーーー!!」」」」」


再び隊長の号令が飛び、這う様に後退する一班と入れ替わって残りの半分が雷獣に向かう。すると今度は雷撃は無く斬りかかる事が出来た。一回撃つと充電が必要なんだろうか? 隊長さん、良く知ってるな。が、簡単には行かない様で暴れ回る雷獣にむしろ押されている。


「一班、行けるか?」

「すみません、まだ体が痺れて・・」


雷撃を受けた一班はすぐには復帰できない様子。するとレイ王子が隊長に歩み寄って言った。


「僕らが三班として次に行こう。丁度五人だ」

「しかし殿下に万が一の事が有っては・・」

「僕では頼りないかい?」

「とんでもない! 殿下の腕前は騎士団トップクラスなのは存じております」

「なら頼ってくれ。仮に万が一が有っても僕の意思で決めた事だ。問題無い。この者達が証明してくれる。皆も構わないね?」


レイ王子は俺達に視線を投げた。


「仕方無いですわね」

「任せて!」

「まあ、頑張るよ」


ジンは渋い顔をしていたが、


「止むを得んか。だが万が一も無しにしてくれ」


と、少し間を置いて承諾した。


「感謝します。では配置についてください。良いですか? 二班後退! 三班突撃!」

「「「おおおーー!」」」

「「やあああ!!」」


五人で雷獣に立ち向かう。後ろに回ると強烈な蹴りが来るので前と左右から剣を振るう。固い。角熊や火熊の様に土魔法で強化している訳では無さそうだが、皮が分厚いのか掠り傷程度にしかならない。向きを変えて襲って来る後ろ蹴りを避けながら前足に狙いを絞って五分ほど格闘した後、二班と交代。一班が復活するにはまだかかりそうなので次に備えて陣形を取る。


「ねえ、そろそろあの雷魔法が来そうだよね」

「対策は無いんですの?」


皆の視線が俺に集まる。え? 俺? うーん、電撃使いの攻略法って前世のラノベで読んだ気が・・いや、あれは薄い本だったか? とにかく何か考えなきゃ。雷魔法って人間には使えないから謎が多いんだよな。あれがそのまま電気の雷だとしたら・・。



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、有り難うございます。いいねして頂いた方、大感謝です! 先週の更新、一日間違えて月曜にUPしてました。すみません。続きはまた来週火曜日に。

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