52話 出向
予定以上に筆が進んだので臨時更新です。
◇ ◇
庁舎を出て城門とは反対方向へ壁やら建物やらを縫う様に進む。暫くして重武装の番人が立つひと際大きな建造物の入り口に着いた。ここから先って、庁舎じゃなくて王宮じゃないか。ここ入るの?? なるほど、大体分かって来たぞ。
「迷わない様に気を付けてくださいね」
渡された木簡を見せるとあっけなく中に入れた。そして石畳の廊下を右に左にとクネクネ曲がりながら更に奥へ進む。こりゃ確かに迷いそうだ。案内係として付いて来てくれたのはこっちが本題だったのね。
「なんか目が回って来たかも」
早くもニコは弱音を吐いている。時折吹き抜けになったり中庭らしき広場や花壇が見えたりして目印に出来そうだけど、途中で見るからに偉いであろう立派な身なりをした人とすれ違う度に立ち止まってお辞儀をしたりで記憶形成がちょくちょく中断する。
明日から自力で来られるかなあ。不安だ。
「こちらです」
普通とはちょっと雰囲気の違う金の縁取りで赤く塗られた扉の前に辿り着く。このあたりは壁にも装飾が施されていて、明らかに偉い人ゾーンだ。
「では私はこれで」
扉を開ける前に案内の職員さんは帰っていた。ふう、想像は付くけど緊張するなあ。一息吐いてからノックをする。
「入りたまえ」
想像通りの声が返って来た。第二王子付ってそのまんま言ってたしね。
◇ ◇
レイ王子とジンが迎えてくれたのは陽の良く当たる明るい部屋だった。真ん中に上品な応接セットが置かれている。さて、ここはもう学園では無いのだからちゃんとしなきゃ。もう一度大きく息を吐いてから申告した。
「アルバス・エンデナ、本日付けでこちらに配属となりました。宜しくお願いします!」
「えっと、ニコリナ・ソノです。宜しくお願いします!」
「うむ。ご苦労。掛けてくれ。それから堅苦しいのは最初っきりにしよう。今迄通りで頼むよ」
「でも・・」
「構わないさ。何なら上司として命令する事も出来るんだよ?」
おどけた笑顔でウインクしてくる。確かに向こうは今迄通りだ。
「わかったよ。宜しく、レイ」
「宜しく頼むよ。ニコもよく来てくれたね」
「うん。宜しくね。ジンも宜しくね」
「ああ」
「この部署はこの四人だけ?」
「あと一人、秘書官をしてくれる・・丁度来た様だ」
秘書官? 一瞬疑問に思ったが直ぐに解消された。
「遅くなりましたわ。ごめんなさい」
「フェル!」
「あら、貴方がたが先に来てしまいましたわね」
「以上の五人さ。今のところはね」
「フェル、秘書官なんだ。何かカッコイイ」
「ええまあ、ここでの役職はそう言う事になりますわね」
「ふーん。あれ? でもそれじゃフェルはお役人さんって事? 王子様の婚約者なのに?」
「そうですわね。幾ら婚約者と言えども私人が役所の中をうろつく訳には行きませんもの」
「ふーん」
「ちなみにジンの役職は近衛長だよ。そして僕が近衛室長・・まあ、王族が自分で近衛室長と言うのも変なので本当はこの二人のどちらかに兼務して欲しかったんだが」
「秘書が室長を兼務したらそれは最早秘書では無いですわ」
「俺がフェルより上の立場になるのは有り得ない」
「・・という訳で、仕方なく僕は僕を守る責任者を僕自身で務める奇妙な立場になったのさ。身内で固めた弊害がこんな所に出るとはね」
レイ王子は両掌を上げて軽く溜息をついた。
「それで、俺とニコの役職はどうなるの?」
「そうだね、出向者だから正確には原職のままだけど、便宜的に近衛って事になるかな」
「なんか回りくどいね」
「おまえらが正式な近衛になるには実力が足りん」
「あー、まあ、そう言う事なんだよ。慣習として一定以上の剣技を会得している証になっているからね」
「そうなんだ。なんか面目ない。で、ここで何をすれば良いの?」
「もちろん近衛の仕事は僕の行く先々に同行して護衛をする事さ。そして、兄上が防塁建設にかかりっきりになってしまっている為に普段軍の演習を兼ねて行っている国内各地の巡察を、僕が担う事になった」
「・・!? それって越後のちりめん問屋が諸国漫遊の旅!?」
「チゴノチ? 」
「またアルが・・」
「気にしたら負けですわ」
「コホン、そうとも、当面はこの五人で国中を旅するのさ。そして最初の目的地は・・東の果ての開拓村だ」
◇ ◇
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