51話 登庁
定時更新です。
◇ ◇
二月末日、二年間通った学園を無事卒業した。
「みんな王都に居るのだから何時でも会えるわよね」
「勿論ですわ」
「そうですね」
「俺たち騎士団は留守が多いかもなあ」
「今のご時世だと多分そうなるよね」
「拠点が王都なのだから会えるだろう」
皆それぞれ別れを惜しんでいる。ニコは少し離れた所でエルフィーと抱き合っていた。眼福眼福、じゃない、俺も早く用を済ませないと。ああ、居た居た。
「おーい」
「やあ」
「これ、例の件について纏めてあるから」
「了解した」
「直ぐに帰るんだろ?」
「残っている意味は無いからな」
「そうか。元気でな。騎士爵様にも宜しく伝えてくれ」
「分かった。君も元気で」
マギーと握手を交わす。その手には彼の性格らしからぬ力がこもっていた。渡した封書には醤油の買い付けに関するあれこれを書いたメモを入れてある。これが上手く行けば次は味噌、そして米の入手へと繋げたいので彼とはここで最後とはならないだろう。
「アル、みんなでご飯食べに行こうって。行くでしょ?」
呼びに来たニコの目は赤く腫れていた。
「分かった。行こう。君もどうだい?」
「いや、遠慮しておく。じゃあな」
「そっか。じゃあ」
学園を出て移動する。正門をくぐるのも最後だろうか。歩きながら何度か振り返った。そして大通りの一角にあるお洒落なレストランへ行き、そこで卒業のお祝いをした。みな王都に残ると言ってもいつもの九人が同じテーブルに会する事は暫く無いだろうな。九人? 一人足りない。
「あれ? リサ嬢はどうしたの?」
「リサなら今日は来ないわよ。マギー君と打ち合わせがあるんだって」
「へ?」
「マギー君、明日の朝帰っちゃうから今日中に色々確認しておきたいんだって」
「相変わらず彼女は働き者だね」
「去年の夏からずっと頑張ってるよね」
リサ嬢が引き続き連合国との交易に携わる事は知っていたが・・それよりマギー、なーにが遠慮しておくだ。ちゃっかりしてるなあ。
◇ ◇
そして翌日。初登庁の日だ。今日から俺も社会人。本来なら四月からの筈なのだが昨日卒業して今日から入省と言う慌ただしさ。午前中のうちに学生寮を引き払って官僚の独身寮へ引っ越すのに気力も体力も使い果たした感が有ってヘトヘトである。
正午きっかりに出頭せよとの事なので、休む暇も殆ど無い。朝の始業時に来いと言われるよりはマシかもしれないけど。
「これからも一緒で良かったね」
当然の配慮と言うか予定通りと言うかニコと同じ部署だ。二人で庁舎の入り口に立って建物を見上げる。学園の校舎よりも一回り小さな白くて四角い二階建てが俺たちの職場になる。一階の受付で先日貰った書類の一つを見せると、職員の一人が案内をしてくれた。複雑な建物でも無いのでわざわざ付いて来てくれなくても良かったのだが、とりあえず従っておく。
階段を上がり廊下を進んで突当りにある部屋へ。扉と開くとさほど大きくは無い広さの中で机と本棚に埋もれる様に五~六人が働いている。その一番奥の窓際にひと際大きな机があり、「農政課長」と書かれた表札が置いてあった。あの席に座っている人が俺たちの上司らしい。
白髪混じりの頭に細めの体つきでちょっと冴えない感じの表情をした如何にもお役人といった風貌だ。促されてその前へ進む。ここは元気よくこちらから挨拶をすべきか、それとも向こうから声が掛かるのを待つべきか、ちょっと迷っていると、丁度正午の鐘が鳴った。
「お連れしました」
「ご苦労様です。時間どおりですね。私がここの課長のコーマル・タルタロスです。宜しくお願いします」
「アルバス・エンデナです」
「ニコリナ・ソロです」
鐘が鳴り終わるのを待って挨拶を交わす。丁寧で物静かな話し方をする人だ。他の職員たちはこちらをチラっと見ながら全員部屋を出て行った。食堂へ昼食に行くのだろう。
果てさて俺たちはこれからどんな仕事をするのだろうか。農政課だから昔師匠がやってた農業指導とかかな? あるいは収穫された作物のチェックとかだろうか?
「オホン、早速ですが、二人に通達が有ります」
「「はい」」
「アルバス・エンデナ及びニコリナ・ソノ両名に対し、本日付けを持って第二王子付近衛室への出向を命じる」
「え?」
「これを持って行く様に」
木簡の様な何かを渡される。
「ご案内します」
受付の職員さんが先に廊下に出て手招きをしていた。
「「えええーーーー!?」」
◇ ◇
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