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48話 防御壁

定時更新です。



◇ ◇



「ん? 言ってなかったか? 学園に居た頃から付き合い始めたんだが」

「聞いてないです」

「わたしも!」


言ってないしそんな素ぶり微塵も無かった。


「そいつはうっかりしてたな。ははは」

「はははじゃないですよ。それより怪我の具合はどうなんですか?」

「おう、見た目の割には元気だぜ」


同じく包帯でグルグル巻きにされた腕を振り回して見せる。


「なに言ってるんですか。ちゃんと安静にして下さい」

「お、おう」

「それでお姉さま。一体何が有ったのですか?」

「そうね、一言で言えば魔獣に襲われて撤退したのよ」


随分ざっくりな説明だな・・。そう言えばエルフィーもそう言う所があるよなあ。やっぱ姉妹は似るんだろうか。


「あの、もう少し聞いても良いですか?」

「今はまだ詳しい事は言えないのよね」

「まあいいじゃねえか。どうせ今回の事は伯爵とも相談するだろうし、伯爵からこいつらに伝わるのも直ぐだろうぜ」

「後で怒られても知りませんよ?」


公表されるまで口外しないとの条件で、俺たちは事の一部始終を聞いた。



◇ ◇



今回、調査隊は森の最深部まで行くつもりだったらしい。だが王都から二十日ほど進んだ所に現れた川で事件は起きた。さほど大きな川では無かったが、同行した文官や補給物資を渡河させるには少々手間のかかる程度には流れがあった。まず先に主力部隊が渡って対岸の安全を確認する。そのまま偵察を兼ねて奥まで進むと前方に角熊を発見。それが複数居たため渡河ポイントで待機していた小隊も加勢。戦いの流れで森の奥へと移動していった。


すると、それを見計らったかの様に別の魔獣の群れが補給部隊に襲い掛かった。状況を打開すべく相手の背後に回ろうとしたダットさんとシルフィーさんだったが、川に潜んでいたさらに別の大型魔獣と戦闘になる。後日判明した事だが、この魔獣は河馬で、水魔法で水流を操作し水刃を飛ばす危険で獰猛な魔獣だった。


たった二人では到底相手を出来るものではなく、絶体絶命の所に角熊を倒した主力隊が戻って来て一命を取り留めたのだった。主力隊にも少なからず負傷者が出た為それ以上の行軍を断念、王都へ撤退となった。


「けどな、ただ尻尾を巻いて逃げて来ただけじゃねーぜ」

「どう言う事ですか?」

「川岸に防御壁を作る事になった」

「防御壁?」

「堤防を築いて川底を掘って、魔獣が渡り辛くするのさ。俺たち怪我人は先に帰って来たが、土魔法が得意な連中がぎりぎりまで粘って作業をしている所だ」


壊滅って言われたのは怪我人だけが先に帰って来たからか。


「でも、川に沿ってずーーっと作らないと魔獣が横から渡って来ちゃうんじゃないかなあ」


ニコ、鋭い。確かに一部分だけ塞いでも意味が無い。


「ある程度の長さが必要になるだろうな。残った連中だけで作れる範囲じゃ気休め程度だが、どっちかっつーと作業が可能か確認する意味合いが大きいらしい。土の状態とかな。でもって作業隊を改めて組織して時間をかけて地道に作っていくつもりらしいぜ、あの王子様は」

「思い切った事をするんですね」

「言わば城壁をもう一つ作るって訳だからな。周辺も整備して駐屯地にするんだとよ。よくまああの混乱の直後に決断出来るもんだぜ」


数日後、作業をしていた残りの部隊も王都に戻り、それと入れ替わる様に土木作業の専門家たちが城門から出て行った。ただ、彼らの作業場は森の奥深くの川ではなく、王都のすぐ近くから始まった。なんと、防御壁まで線路を引くんだって! 


単に堀と壁を作って前線基地を作っても孤立するだけ。そこへ鉄道で結んで従来とは比較にならない速さで行き来を可能にする。第二の城壁として王都としっかり繋がったものにする計画らしい。勿論防御壁建設の人員や物資の輸送にも大きく貢献する。


この一大事業を発案した事や調査隊に一人の死者も出さず全員帰還させた事で、第一王子は現国王の後継者としての資質を十分に示したのだった。て言うか、北への鉄道が滞ったりしないよね? 醤油、もとい、石油輸送の生命線なんだからね?



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、有り難うございます。続きはまた来週。

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