47話 もう一つの帰還
定時更新です。
◇ ◇
翌日再び騎士団の詰所へ向かった。ニコはエルフィーが心配だからと夕べずっと付いてあげていたらしく、二人とも寝不足っぽい。昨日と違って詰所の前は整然としていて受付のテーブルが置かれている。その背後には大きな掲示板が建てられていて、団員の名前らしきものが沢山書かれていた。エルフィーがおずおずと歩み出る。
「あの・・面会は出来ますか?」
「今日はここに名前の有る者に限らせて貰っている」
受付の団員が後ろを指差す。
「ええっと・・有ります! シルフィーリア・アイロスリッドとの面会をお願いします!」
「じゃあここに自分の名前と相手の名前を書いてくれ。そちらさんは?」
「「付き添いです」」
「君たちもここに書いて。あと一応身分証を見せて貰えるか?」
「身分証?」
「学生証を持ってるだろ。君ら、学園の生徒だろ?」
「あ、はい」
「その制服を見れば通して問題無いのは分かるが、一応確認する決まりだからな。うむ。良し。アイロスリッド団員は別棟の二階だ。入口でこれを見せるように」
札の様な何かを渡される。入館証ってやつなのかな。詰所の建物の裏手に有るもう一つの建物へ向かう。
◇ ◇
入口の守衛らしき人に札を見せるとすんなり入れた。って、あれ? この匂い・・中に入った途端、消毒薬の匂いが微かに漂ってきた。
「ここ病院だね」
まったくニコさんは身も蓋もない。
「その様ですね・・」
ほらもう、エルフィーがさらに気落ちしてるじゃないか。
「とにかく二階に上がってみよう」
「はい・・」
二階に上がると、長い廊下が続いていて幾つもの部屋が並んでいた。部屋のドアの横には名札らしきものが掛かっている。
「この札の名前を探せば良いの?」
「そうみたいだな」
暫く進んでいくと目当ての名前を見つけた。同じ札に他にも名前が有る。ここは四人部屋か。
「失礼しまーす」
先にニコが入って行く。
「ほら、行こう」
躊躇するエルフィーの背中を押しながら俺も中へ。入ると、そこそこの広さの部屋にベッドが四つ有り、それぞれの脇に小机と椅子が備わっていた。ええっと、エルフィーのお姉さんは・・一年以上前にちらっと見ただけだけど、なんとなく顔は覚えている。が、居ない? ベッドに腰かけて談笑する知らない三人にニコが話しかけている。後は空いたベッドが一つ。
「まさか・・」
最悪の事態を想像したのか隣でエルフィーが膝を崩した。
「いやいやいや、落ち着いて。きっと大丈夫だって」
同じ四人部屋に一人だけ重体とか無いだろう。
「たぶん隣の部屋だってあの人が教えてくれた。ほら、行くよ、エルフィー」
ニコが戻って来て告げると同時にエルフィーの手をグイっと引いて廊下に出る。隣ってどっちの隣なのか分かってるんだろうか? 廊下の奥へ迷わず進んでいく様子はきっと分かっているのだろう。
「失礼しまーす」
こっちの部屋も名札が四つあるな。ん? この名前、まさか・・。
「お姉さま!!」
部屋に入るや否や、エルフィーが一人の女性に飛びついて行った。この部屋のベッドで療養している人ではなく、ベッドの横の椅子に座っていた女性に。そしてその脇のベッドには包帯で全身をグルグル巻きにされた負傷者らしき人が横になって居た。顔まで包帯が巻かれていて、まるでミイラだ。
「あら、エルフィー。病室で大声を出してはいけませんよ?」
「お姉さま、ご無事だったのですね。隣の部屋に居なかったので、私、心配しました!」
「心配させて御免なさいね。でも私は大丈夫よ。怪我も大した事は無いから。この人に比べたら・・あら、ニコさんも来てくれたんですね。いつも妹が世話になっています。そちらは?」
右腕に包帯を巻いているが確かに元気そうではある。て言うか、俺だけ初対面か。
「初めまして、アルバス・エンデナと言います。ニコの幼馴染でエルフィーさんとも良く一緒に居ます」
「あら、そうだったのですね。初めまして、シルフィーリア・アイロスリッドです。ニコさんの事は手紙で良く知らされていたのだけど・・」
まじか。手紙の中で俺の事はスルーなんかいっ!
「ん? アルバスって言ったか?」
ベッドで寝ていたミイラが突然野太い声を出す。聞き覚えのある声。名札に名前が有るのに見当たらないと思ったら。
「ダットさんですね」
「そうなの!?」
「おう、悪いな、こんな格好で」
「アル先輩もダットさんの事を知ってるんですか?」
「知ってるも何も俺たちの剣の師匠というか、師匠代理? みたいな感じ」
「あはは、代理かよ。まあ未だに親父にはかなわねーけどな」
「それよりエルフィーも知り合いなの?」
「私の知り合いと言うか・・その・・」
「私の婚約者なんですよ」
エルフィー姉が衝撃の一言を発した。
「「ええーーーーーーーーー!?」」
◇ ◇
ここまで読んで頂いた方、有り難うございます。続きはまた来週。




