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44話 温泉

定時更新です。


 ◇ ◇


その日の午後にノルド王国から帰って来たレイ王子たちと合流し、詳しい話は後回しにして帰国の準備を整え、翌日朝に発った。中州での調査結果について連合国側に対しては、特に収穫無しと言う建前にしておいた。レイ王子の方でも情報を得たらしいけど、擦り合わせは帰ってからと言う事で、また登山が始まる。


「戻って直ぐ出発で、疲れてませんか?」

「いいえ、馬車移動続きで退屈していましたから、体を動かすのは大歓迎ですわ」

「あはは、さすがフェルだ。頼もしいね」


一つ目の山小屋で行きに同行した案内係と再び落ちあい、国境を越えて翌々日に領主の屋敷に到着した。トレンブルハールでは前回以上に騎士爵全力の晩餐を堪能し、次の日は自慢の温泉でゆっくり過ごすことになった。馬車で移動した山あいに有る大きな露天風呂は、白濁が混じった青いお湯の見事なものだ。



◇ ◇



いやちょっと待って。混浴とまでは言わないけど、女子と別々じゃ何の為の温泉回なの!? 女風呂は山の反対側って幾ら何でも離れすぎでしょ! 覗こうなんて思ってないけどせめて湯上りの彼女たちを鑑賞するくらい良いじゃないか! まったくもう、


「何てツイてない」

「中州の件かい? 危なかったそうじゃないか」

「え? ああ、うん、そう、その件」


レイ王子のそのわざとらしい作り笑いは、きっと見透かされてるな。見透かされてる事を見透かしてるけど敢えてスルーしておこう。


「なあ、テンイ魔法って何だよ。もうここなら話しても構わないだろ?」

「僕もずっと気になってた」

「ここのお湯は温度が低めだ。じっくり話してものぼせたりしないぞ」


もともとこのタイミングで話すのが良いだろうと思っていたので、中州での出来事とそれに関する考察を改めて報告する事にした。後でレイ王子からフェル嬢たちに伝えて貰うのが良いだろう。



◇ ◇



「つまりこっちからこっちへ目に見えないほどのスピードで飛んでいくって事か?」


ケイが右手を挙げ、左に素早く動かす。


「いや、今の話だとこう動く・・」


今度はレイ王子が右掌を広げて左に動かす。


「・・のではなく、こう言う事ではないかね?」


次に右掌をいったん広げて閉じ、それと同時に左の掌を広げる。


「途中は無いって事? 動くのではなくここに有った物が消えてこっちに現れる?」

「そう。セットの理解で正解。動いて行く訳じゃないから、途中に壁が有ろうが何が有ろうが関係なくこっちに現れる。それが転移」

「テンイなんて言葉良く知って・・いや、アルは賢者の弟子だったね。伯爵から教わったの?」

「あー・・うん。そんな感じ」


頼むからそれ以上深く突っ込まないでくれー。今迄この事に触れたくなかったのは、これがきっかけで転生がバレるかもしれないから。便宜上転移魔法と呼んでるけど、この世界の火・土・水・風のどの属性にも当てはまらない。そもそも転移と言う概念すら無いだろう。そんな事を何故俺だけが知っているのか。絶対ボロが出る。


「それは本当に魔法なのか?」


マギー君はちょっと黙ってその勘の鋭さをリサ嬢に向けようじゃないか。


「しかし厄介だね」

「ああ。対応が難しい」

「どう言う事?」


レイ王子とジンが深刻ぶるのでセットが食いついてる。話題を逸らすチャンス。


「つまりさ、もし自由自在に転移魔法を使えるとしたら、魔王が世界を支配する事だって可能なんだよ。例えば逆らう国に対しては、王城の中の広間に突然魔獣を送り込むとか」

「広間と言わず、王の寝室にテンイさせるのが最も効果的だろうね」

「そうだな」


不敬かと思って広間と言ったけど、流石レイ王子は正しく認識していたみたいだ。


「つまりまた魔獣戦争が起きるのか?」

「しかも今度は城壁が通用しない相手って事になるね」


そうそれ。ホックフォルテガルドの城壁は、物理的には勿論、精神的にも拠り所になって居る。今迄この城壁で防いできた、この城壁が有るから何時でも戦える、そんな自負をも支える壁が無効化されてしまった時、果たして魔王と対峙できるのか。


「だが実際は中州に引き籠っているただの獣人だ」

「そうだね。君の言う通りだ。アルが話したのは可能性に過ぎない。ただ、向こうの外交官の話では警備隊と揉めた時には何人かが軽い怪我をしたらしいし君たち自身も危ない目に遭っている。全くの無害とも言えまい」

「ケイの言い方が悪かったんじゃない?」

「またそれかよ。悪かったよ。だとしても、声をかけただけでアレは過剰じゃないか?」

「ともかく、無事で何よりだったよ。先生が用意してくれた湿布は消費期限が切れてしまいそうだが、使わないに越した事は無い」

「あはは」


実際はマギーの足に地面で跳ね返った流木が当たって軽い打撲をしたのだが、その先生の湿布で次の日には治っていた。他の人たちに余計な気を遣わせたくないからと、その場では隠していて夜にこっそり俺が治療した。


「今後の事は父上たちに決めて貰うとして、まずは全員無事で王都に帰還しようじゃないか」



◇ ◇ ◇



「皆でお風呂に入るの久しぶりだね!」

「そうなのですか?」

「ええ、海に行った時に。今回はリサも一緒ね」

「あなた、また育ったのではなくて?」

「ん? 背は伸びて無いよ?」

「まあ良いですわ。それで、魔王はどんな姿でしたの?」

「遠くだったから良く見えなかった」

「そうですの・・レイはどうするつもりなのかしら」

「あの様子では予定通り交易を始める様でしたね」

「でも魔王の事も魔獣の問題も何も解決していないわ」

「「「・・・・・」」」

「ねえねえフェル、向こうの国ではどんな料理が出たの?」

「まったく、あなたと言う人は」



◇ ◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます。続きはまた来週。

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