41話 商店
暫く更新出来ずすみませんでした。再開します。後半はリサ視点です。
◇ ◇
中州で見た煙の事は他の皆にも話した。元々次の日は、その奥の中州に行く予定だったのだが・・あいにくの雨だった為、休養日に当てた。峠越え以来歩き詰めの日々だったので、むしろ有り難い。が、その翌日も雨となると余り嬉しくない。朝食をとりながら暫し作戦会議。
「どうする? 今日も休みにする?」
「元々需要調査を先にやる筈だったよね」
「雨でも商店を見る事は出来るでしょう」
「だな。じゃあ今日は店を周るか」
中央市場だけでなく、王城の東の方にも商店がいくつか纏まって有ると聞いて、二組に分かれた。リサ嬢、リリィ嬢、マギーが中央へ。俺とニコとケイとセットは東に向かった。ちなみにチーム分けはリリィ嬢に依る。
王城を出て石畳の街道を東へと歩いて行くとやがて人気のない林の中の道になり、さらにそこから小さな丘を幾つか越えると再び町が見えて来た。石畳はずっと続いていて雨でも泥濘に足を取られないのは幸いだった。
「腹減ったな」
「そうだね」
そろそろ昼時が近い。陽が暮れる前に帰り着くとなると、あまり長居しないうちに引き返すべきだろう。この国は緯度が高いせいか夜が早いから、調査に回れるのは2時間くらいかな。
「最初に調べるのはご飯屋さんだね!」
「賛成」
何を調べるでも無いけど腹ごしらえだ。また珍しい食べ物が有ると良いなあなどと話しながら町の中に入って行くと、それらしい店が直ぐに見つかった。中に入ると、椅子席と畳の座敷席が半々の造りになっている。客はまだ誰も居ない様だ。
「って、お座敷!? 畳!?」
つい声が出てしまった。
「アル、どうしたの?」
「いや、何でもない」
座敷を横目に椅子席へ向かう。ここで、やっぱ畳は落ち着くわーとか言って前世の記憶丸出しで馴染むのは不自然過ぎるし、そもそも雨の中を歩いて来たので足が濡れている。
「あれ? あっちも席なのかな。随分背の低いテーブルが置いてあるけど」
「変わった床だな。一段高くなっているのは何か理由があるのか?」
「アルがオザシキとか言ってたから知ってるみたい」
「え? いや? 知らないよ? オザーキ? 何それ」
「お客さんたち、お座敷の方が良ければ使っ・・」
「わわわー! いーーーです! ここで! この席で!」
「変な奴だな」
「アルが変なのはいつもだよ?」
ちょっとニコさん、酷くない?
「ではご注文がお決まりになりましたら、お呼びください」
店員さんが渡してくれたメニューを開く。
「ど、どれがいいかなあー」
早く話題を逸らさなければ。
◇ ◇ ◇
「次はあそこの店に入ってみない?」
今日のリリィは随分と張り切ってますね。好奇心の旺盛な彼女ですから、こうした事は向いているのでしょう。雨のせいで露店はあまり開いていませんが、周囲の路地を巡って店舗を見つけては飛び込んでいきます。それにしても、随分と戦力に偏りの有る班分けですね。街の中では魔物と戦う訳でも無いので構わないのですが。
「ここは雑貨屋でしょうか」
「いや、多分漁具の店だ。看板に釣り針の絵が描いてある」
「随分変わった釣り針ですね。羽が生えている様に見えます」
「ほら早く、入るわよ!」
リリィが店の扉を勢いよく開け中へ一歩踏み入ったその時です。丁度中から出て来た大きな男と、出合頭にぶつかってしまいました。
「きゃっ」
「うおっ」
ガッシャーーーーーーーーーーーン!!!
「ああああ! てめえ何てことしやがる!!」
大男は何か大きな硝子玉の様な物を抱えていたのですが、ぶつかった拍子に地面に落としてしまい、それは音を立てて粉々に砕けたのです。
「え? 何?」
「何じゃねーよ! どうしてくれるんだよ! 今買ったばかりなんだぞ!!」
「あ、その、ごめ・・」
「おい、怒鳴る事はないだろう」
「なんだ? お前の連れか? お前がどうにかしてくれるのか!?」
「どうにかしてやるからこっちへ来い」
顔を赤くして怒る男に気圧されてリリィが戸惑っている所に、彼が割って入ってくれたのは少し意外でした。でも、あの如何にも不機嫌な表情は、何かつい最近にも見た気がします。普段は物静かなのに頼りになるのですね。そこが彼の良い面なのでしょう。怒りの矛先が自分に向くのを全く気にする様子も無く、大男を連れて店の中に入って行きました。
「はあ、びっくりしたわー」
「災難でしたね」
「ええでも、災難なのはあの人の方よね。悪いことしたわ」
「彼がどうにかしてやると言っていたので任せましょう」
「マギー君、庇ってくれて優しいよね」
「そうですね」
「ああいうビシッと言う事は言う所、リサと少し似てるわよね」
「そうでしょうか」
「相性良いかもよ?」
「???」
「何でもないわ」
◇ ◇
「雨、止んできたわね。あ、出て来た」
彼が店から出て来ると、大男もすごすごと付いて来ました。
「ほら、これで何も問題無いだろう」
「あ、ああ。そうだな」
「何も問題無いにも関わらず、君は彼女を怒鳴りつけたんだ。謝るべきじゃないのか?」
「わかったよ・・その、さっきはすまなかったな。大事な商売道具だったもんで、つい大声を出しちまった」
「いえ、私も不注意だったわ」
「一件落着ですね」
先程とは別人の様に照れた笑顔を浮かべた大男は、おそらく彼が支払ったのであろう新しい硝子球を抱えて帰って行ったのでした。あれは海の漁で使う「浮き」だそうです。硝子で出来ている物は初めて見ました。国が変われば道具も変わるのですね。
「ごめんねマギー君。私が払うわ。幾らだった?」
「必要経費として請求するから問題ない」
「へえー・・そうなんだ」
こうしてきっぱりと言い切る所も彼の良い面・・なのかもしれません? 帰ったら経費で落ちる様にお父様にお願いしてみますか。
「中に入ろう。珍しい物が色々有るみたいだ」
「気を取り直して調査再開ね! リサも早く」
「今行きます」
◇ ◇ ◇
ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます!
色々あって三か月ぶりになってしまいました。次回は出来れば年内にもう一つUPしたいと思っています。




