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39話 魔王の住処

先週は更新出来ずにすみませんでした。


◇ ◇



「生の魚がこんなに美味かったとはな」

「ほんとだね。このショウユってのに良く合ってるよ」

「国に帰ってからもサシミにして食ってみるか」

「それはどうでしょうか。北の海の魚だから生で食べられるのかもしれません」

「そうね。種類に依るのかもしれないし、止めておいた方が良いかもしれないわね」

「えーーーー」

「事前調整でこっちに来たうちの領民が、帰ってから生魚を食べて腹を壊したぞ」

「うう、じゃあ止めとく」


料理屋で出された刺身の盛り合わせを、始めこそおっかなびっくりな様子で食べていた皆も、お代わりまで注文するほど気に入ったらしい。うちの国で生魚を食べないのは、魚の種類とか鮮度とか寄生虫とか色々理由が有るのだろう。


刺身と一緒に出された醤油は、俺の知っている醤油そのものだった。これ、何としても持って帰りたいなあ。と言うか、定期的に仕入れたい。塩コショウを軽めにした鹿肉のステーキにこいつをひと垂らし・・ジュルッ、想像しただけで堪らん。


「食った後は道具屋だな。で、魔王の方はどうするよ?」

「いっそ魔王に会えたら手っ取り早いのにね」

「お客さん、魔王を探しているんですか?」

「え?」


お代わりの大皿を両手に一つずつ持った給仕の女の子が、さらっと会話に入って来た。フサフサの耳とモフモフの尻尾を持つ、俺達よりもだいぶ年下に見える女の子が。これは、獣人の子とお話をするチャンス!? 


「も、もしかして、魔王の事を知っているの?」

「はい。私の叔母が、魔王の居た村の出身なので。あ、空いたお皿はお下げしますね」


彼女は給仕の手を止める事も無く落ち着いた声で答えた。あれ? 何でそんな軽い感じなの?


「君は魔王に有った事があるの?」

「ライラって呼んで下さい。直接会った事は無いですけど、叔母から話は良く聞いています」

「ねえライラちゃん、その魔王の事、詳しく教えてくれないかしら。お礼はするから」



◇ ◇



昼時のピークは過ぎたからと休憩を貰えたライラちゃんは、俺たちのテーブルで一緒にお茶を飲みながら話してくれた。彼女の話によると、獣人の国のとある村で生まれた一人の男の子が、成長するにつれて傍若無人に暴れまわり、ついには国の警備隊と一戦交えた挙句に魔の森へ逃亡したのだそうだ。


「中々やんちゃな奴だな」

「それだけ強いって事だよね」

「ご飯とかどうしてるんだろう」

「家出をした村の暴れん坊が、なぜ魔王などと呼ばれるのですか?」

「魔法を使えるんです」

「獣人の子なのよね?」

「はい。私と同じ狐人族だそうです。狐人族に限らず、獣人族は魔法が一切使えません。なのに、魔王は強い魔法が使えるんです。警備の兵隊を吹き飛ばすほどの」

「魔法が使える獣人か。それで周りの人たちが魔王と呼ぶ様になったと」

「いえ」

「違うの?」

「村を出て行くときに、本人が言ったそうです。いっそ魔王になってやる!とか何とか。獣人でありながら魔法が使えるのは魔王の証なんだそうです」

「自称かよっ!!」

「その魔王って、私たちが探している魔王なのかしら」

「魔の森で一人でずっと彷徨ってるのかなあ。ちょっと可哀想」

「いえ、割と近くに居ますよ」

「居るの!?」

「魔の森との境に有る川の中州に住んでるみたいです」

「んじゃ先にそっちへ行くか!」

「賛成だ」



◇ ◇



まだ暫く休憩時間との事で、ライラちゃんに川へ続く道まで案内して貰い、通りかかった露店でお礼の髪飾りをプレゼントしたりして、魔王の居る中州へと向かった。細い一本道を一時間ほど歩いて行くと、やがて道の両脇が背の高い葦で覆われる様になり、さらに暫く行くと小高い土手が現れた。その土手を登ってみると、


「うわ、大きい川だね。海みたい!」


ニコが思わず声を上げるが、ちょっと大袈裟だ。でも確かにこんな大きな川は見た事が無い。向こう岸までどれくらいあるだろう。中州を挟んでさらに広い川幅が有って、さらに中州が有ってまた大きな川が有って、その先は霞んで見えるほどだ。


ライラちゃんが言うには、あの中州のどれかに魔王が住みついているらしいのだが、葦で覆われていて、そう簡単には見つかりそうにない。


「師匠に望遠鏡を借りてくれば良かったなあ」

「お前、確か遠見魔法も得意なんだろ?」

「得意って訳じゃないし、風が強いから上手く出来ないかも。でも一応やってみるよ」


河口の方向から上流に向かって風が吹いている。海風ってやつだろうか。遠見魔法は水でレンズを作るのだけど、風で水面を揺らされると像を結ぶ事が出来ない。精神を集中させて、水玉を作って、薄く延ばして、レンズ状に・・ダメだ、やっぱり風に邪魔される。


「うーん、難しい」

「君はもう少し頭を使いたまえ」


そう言ってマギーが風上側に土壁を作ってくれた。


「おお、ありがとう、マギー。でももう少し大きい壁にして欲しいかも」

「贅沢を言う奴だな」

「わたしがやる!」


ニコが手を翳し、ドーーンと、注文通り、いや、注文を上回るドでかい土壁を作った。いいぞ、これなら風が入ってこない。もう一度精神を集中させて、水玉を作って、レンズを・・うーむ。


「葦しか見えない」

「渡って探した方が早く無いか?」

「そうですね。これだけ人数が居れば可能でしょう」


今度はリサ嬢が手を翳し、川の中に土の支柱を出現させた。


「珍しく強引な事をするのね」


リリィ嬢が笑って同じ事をする。


「珍しいですか?」

「そうでもないかも」

「わたしもやる!」


ドカッ、ドカッ、と水中に魔力で強化された土の柱が次々と現れる。高階級魔力の持ち主が七人も居れば、力技も可能だ。後は床板を載せれば橋の完成・・


「おい、そこのお前たち、何をしている!」


武装した二人組が凄い勢いでこちらに駆け寄って来た。



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます! 続きはまた来週。

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