28話 剣技大会二年目
定時更新出来ました。今回は新キャラ登場です。
◇ ◇
五月になり、また剣技大会の時期が来た。去年はイマイチな結果だったからな、イースさんやダットさんも卒業して居ないし、今度こそあわよくば優勝を・・と考えていたのに、緒戦でいきなりケイと当たってしまった。難敵だ。でも優勝を狙うなら、ケイにもジンにも勝たなくては。向こうも勝つ気は満々らしい。
「残念だったな、最初に当たるのが俺で」
「いや、負けないよ」
「始め!」
開始の合図の直前に、ケイは息を小さく吸うと、声がかかるのと同時に踏み込んで来た。瞬発剛力だ。当然俺もそれは予想していたので、魔力全開で受け止める。
「くっ、」
「やはり止めるか。大したもんだな」
止めるには止めたが、ギリギリだ。僅かとは言え計算上は向こうの方が魔力は上だし、剣歴二年の俺に比べて年季が違う。だが、勝機は有る。筋骨隆々のダットさん親子を相手にしていたお蔭で、受けに回るのは、いや、そういう意味じゃ無く、慣れている。序盤はこちらから仕掛けずに防御に専念していれば、そのうちあの力は出せなくなる筈。そう何度もは使えない、ケイはそう言った。凄まじい程の剣撃を、俺は何度か耐えた。ケイの顔にも少しずつ焦りの色が見て来る。そろそろかもしれない。するとケイは、いったん間合いを大きく取り直した。
意を決した表情で、姿勢を少し落として小さく息を吸う。来る。これがおそらく最後の勝負手だ、ここを凌げば勝機を掴める! 俺も重心を落として構えた。そして、
ガシーーーーーン!!
やった! 受け止めたぞ! これで魔力差は九対七だ。俺は間髪入れずに反撃に出る。良し、押せている。ここは一気に決めに行くしかない。上段に構え、渾身の一撃を入れに行く。ケイはそれを真正面からは受けずに、更に斜め上から俺の剣を打ち下すように受け流した。そして次の瞬間、
ガキーーーーーン!! くるくるくる・・ドスッ
「そこまで! 勝者、ノルトポイマー!」
下から振り上げられたケイの剣から抗いきれない力を受け、俺の剣は手を離れて地面に落ちた。気が付くと、ケイの剣先が俺の喉元に元に向けられている。くうう、勝てると思ったんだが。
「序盤はこちらから仕掛けずに防御に専念していれば、そのうちあの力は出せなくなる筈、大方そう考えていてんだろう?」
「!?」
「そして、これがおそらく最後の勝負手だ、ここを凌げば勝機を掴める! そう思ったわけだな」
「な、」
「作戦としちゃあ悪くないが、勝負には駆け引きってものが重要なんだぜ? 少し甘かったな」
見透かされていた? 俺の作戦を逆手に取って力を残していたのか。
「それと一つ言っておくが、止めを刺す瞬間ってのは油断が生じやすい。気を付ける事だ。ま、いい勝負だったぜ。お前の分まで俺が勝ってやるから、あまり気を落とすなよ」
そう言い残してケイは意気揚々と引き上げていった。俺の剣技大会は、去年よりも早く、あっけなく終わったのだった。
◇ ◇
男子の決勝戦は、準決勝でセットを破ったジンと、同じく準決勝でケイを下したレイ王子との対戦だった。ようやくこの二人の対決が見られる。
先手を取ったのはジンだった。素早く連撃を繰り出し、レイ王子は防ぎながら一歩また一歩と下がっていく。だが後が無くなりそうに見えた所で、今度はレイ王子が反撃し、前へと出て行った。攻守が何度も入れ替わりながら、両者の打ち合いが長く続く。良い試合だ。このまま時間切れになるかと思われたが、終了間際にレイ王子が怒涛の攻めを見せて押し切った。あの人やっぱり強いんじゃないか。去年は調子が悪かったのかな? ジンは、負けた割には満足そうな顔をしていた。
◇ ◇
今年も男子の部は好勝負が多かった。一方の女子の部は・・
グワキーーーーンッ!! ・・ガランガラン
ああ、また今年もこれなのね。ニコは快進撃を続けて決勝へ。相手は下級生だった。ゆっくり大きく振りかぶり、十二階級相当の魔力がか弱い下級生を襲う。
ガキンッ!!
おお、耐えた! ニコと同じくらい小柄なその女の子は、上段打ち下しを二回耐えた。三回目は、耐え切れずに後ろに倒れてしまった。去年の決勝の人程では無いけれど、あの下級生もなかなかの実力者の様だ。表彰式の後、ニコがその子と話し込んでいた。
「あ、あの! お姉さまって呼んでも良いですか!?」
「え?」
「え!?」
声を掛けようと近付いて行った俺の耳に入った言葉に、思わず声を出して反応してしまう。こ、これは・・色々妄想が捗るぞ。
「ダメ・・ですか?」
「ううん、いいよ」
「やったー! 宜しくお願いしますね、ニコお姉さま!」
ニコは満更でもない様子で笑っている。
「あ、アル! またこれ貰っちゃった! それとね、この子がわたしに剣を教えて欲しいんだって。どうしよう? わたし人に教えた事なんてないて無いから、何を教えたら良いのか分からないよ」
「優勝おめでとう、ニコ。それで、その子は?」
「あ、あの、エルフィスシア・アイロスリッドです! 教えて頂くと言うか、時々お手合わせをお願い出来れば、それで充分ですので!」
エルフィーと呼んで欲しいと言った小柄で銀髪の元気な下級生は、ニコの力にすっかり惚れ込んでしまったそうで、それから時々俺も交えて模擬戦をする様になった。俺たちも去年はダットさんに教わっていたし、そのお返しの意味も込めて。
後で聞いたのだけど、去年の決勝でニコと戦ったのは彼女のお姉さんだったそうだ。彼女も姉も呼吸法が使え、彼女にとって自分よりも強い存在は、師匠である親を除けば自分の姉だけ、そう刷り込まれているらしく、自分より強いニコもまた彼女にとってはお姉さまなのだそうだ。
いまいち何を言っているのか分からないが、姉が卒業して騎士団に入り、相手をして貰えなくなった寂しさも有ったのかもしれない。まあとにかく良くやったぞ、ニコ。もしかするとこの先三人でプチハーレム的な展開もあったりして。エルフィーも可愛い系の超美人だしな・・なんて思っていたら、週末ちょくちょく俺抜きで二人で遊びに行くようになった。
なんだよ、ハーレムどころかライバルじゃないか!
◇ ◇
ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます! 続きはまた来週。




