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27話 新学年

更新が一日遅れになってしまいました。


◇ ◇ ◇



新年度だ。俺もついに上級生。クラス替えと言う物は無く、またニコと一緒なのが素直に嬉しい。それは即ち、また男友達は皆別のクラスと言う事でもある。マギーとは多少の言葉を交わす様になったとは言え、他のクラスの男子とは依然として親しくはなれていない。俺がレイ王子やフェル嬢といつも一緒に居るものだから、遠慮もあるのか余計に近づき難くなっている感じもする。まあ、あまり気にしても仕方が無い。入学当初の居た堪れない空気よりは断然マシになっている。



上級生になると、授業の内容も色々変わって来る。四月最初の政治の授業は農業実習だった。広い学園の敷地の一角にある実習用の畑で、実際に作物を育てるのだ。ここで採れた食材は食堂でも使われていて、俺たちが今迄に食べた中にも前の上級生が作った物が含まれていたらしい。生徒各自に耕す範囲が割り当てられる。貴族が畑仕事をするのは意外でもあるが、統治をする上でノウハウを身に付ける意味に加えて、農民、すなわち平民がどれだけ苦労をして税を納めているのかを、身をもって知るのが大事なんだそうだ。歴史の授業でも感じたが、この国は専制国家ではあるけれど、一人一人をちゃんと大切にするその治世は、尊敬できる部分も多い。


「では各自始めてください」


支給された鍬を手に、気合を入れる。畝作りなら先々週にやったばかりだし、お手の物だ。見よ! 俺の鍬捌き! ひよっこ貴族共には負けられない。村を思い出しながらガシガシ掘る。父さん程速くは無いが、それなりにコツは掴んだつもりだ。一子相伝の農民スキルを目にもの見せてやる! ここを、こうして、こうだ! どんどん行くぜ! おりゃ! こうして、こうだ! そりゃ! とりゃー!


・・ふいー、出来たぜ。きっと俺が一番最初に、と思ったら、クラスメイトたちはとっくに作業を終わらせていて、変な顔で俺を眺めていた。ニコが寄って来て言う、


「アル、何で魔法を使わないの?」


えー、魔法使っていいの!? 平民の苦労を知るんじゃなかったんかいっ! て言うか、鍬は? 何で配った!?



医薬の選択授業も始まった。年度の前半は薬草の加工を主体とした内容で、後半にはキッシンデント先生も加わった外科治療の実習も予定されている。そう言えば、この間食堂で先生を見かけたけど、目に酷い隈が出来ていたな、どうしたんだろう? 外科の実習は実際に針と糸を使って縫合をするそうだ。あれでしょ? お互いの腕とかを縫うんでしょ? ちょっと嫌かも。まあ、選択してしまったのだからやれと言われたらやるしか無いか。


そんな感じで穏やかな春の日が続いた。上級生になったからと言って先輩風を吹かせるような機会は無かった。自分が下級生だった時も上級生とはほとんど関わりが無かったしな。この学園には部活と言う物も無いし。



◇ ◇



「ブカツ?」


食堂でつい俺が口にした言葉を、レイ王子は聞き逃さなかった。澄んだ瞳で真っすぐに見つめて来るので、誤魔化す事が出来ずに説明を余儀なくされる。


「あーいや、えーとほら、上級生と下級生ってほとんど交流が無いだろ? 授業とは別に、上下級生関係なくグループを作って、好きな趣味とか研究とかを一緒にやる時間があったら楽しいかなあ・・なんて」

「へえ、面白い事を考えるな」

「それは剣の修行でも良いのか?」


ケイが身を乗り出し、珍しくジンも食いついて来た。


「内容は何でも良いんだよ。授業の延長みたいなのでも良いし、全然関係ない、お菓子作りなんかでも」

「それは確かに楽しそうですわね」

「わたし、お菓子食べたい!」

「普段から結構食べてる様な・・」

「自分で作るのは別腹だもん! そんなこと言ってるとアルには作ってあげないんだから」

「別腹とは」

「ふむ。良いアイディアだね。参考にさせて貰うよ」


レイ王子は、ほんの数秒だけ顎に手を当ててからそう言った。


「え? レイもお菓子食べまくるの?」

「いや、そっちではなく・・とにかく参考にさせて貰うよ」

「はあ」


話はそれっきりだったが、その年の年末、彼は学術発表会でブカツドウなるものを提唱し、学園はそれを翌年度から採用したのだった。急遽敷地内に部室棟まで作って。俺たちは卒業してしまって部活を出来なかったけど、後輩に一つ良い置き土産が出来たと思う。しかし、俺のあの一言から、あそこまで理路整然と意味付けして論を組み立てるとは、やっぱりこの人凄いわ。



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます! 続きはまた来週。

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