24話 学年末
◇×3は話者転換を示しています。今回はニコ視点でのスタートです。
◇ ◇ ◇
発表会は終わったけど、年が明けてもリリィは図書館に通い詰めている。わたしもお手伝いできる事があればと思って一緒に居る。フェルやリサも色々手伝ってくれて、今日はレイ王子も相談に乗ってくれている。
「これ、もしかしたら魔獣の事じゃないかと思うのよ」
リリィが一枚の紙を見せた。文字や数字がびっしり書かれていて、一番上には何か模様が入っている。これって王家の紋章?
「どうしてそう思うんだい?」
「だって、不自然ですもの」
「わたくしには、ただの在庫補充の申請書にしか見えませんわ」
「でも、在庫はちゃんと計算されて、毎年予算内にちゃんと収まっているのよ。リサ、そうよね?」
「そうですね。過去の消費量を元に適切に分配されています」
リリィが見せているのは、お薬を作るお金を増やして欲しいと国王様に頼む為の書類だった。北の領地で急に蓄えが無くなってしまったから、特別に王都から送って欲しいとお願いされて、そのお薬を作る為のお金が要るんだって。
「レイ、何か知っているのではないですか?」
「トレンブルハール領の事は聞いているよ。何でも大きな崖崩れが起きて、怪我人が大勢出たらしい。国境近くで混乱が起きている事を隣国に知られたくは無いから、あまり公にはして欲しく無いがね」
「それは余計に不自然だわ」
「どういう事だい?」
「崖崩れで、どうして大量の毒消しが必要になるのかしら」
「さあ、それは僕にも分からないよ。それよりも、リサ、書き損じとは言え公文書を持ち出すのは如何なものかと思うよ」
「わかっています。見せるのはここに居る者だけです」
「やっぱり、実際に行って確かめるしか無いわ」
◇ ◇ ◇
三学期の授業も俺は卒なくこなしていた。一方通行になりがちな前世の学校と違って、口頭質疑がやたら多いが、師匠との勉強もそんな感じだったし、大丈夫だ、問題ない。夏の特訓の後もダットさんが時々教えてくれたお蔭で剣技の授業も良い動きが出来る様になった。この調子で行けば補習に呼び出される事も無いだろう。他の皆も春期休暇はちゃんと休むつもりでいる。皆エリートだしね。
ただリリィ嬢は、発表会の出来が自分で納得行かないらしく、その休暇を使って調査旅行に行くと言っていた。年が明けても図書館で色々調べているのは知っていたが、見かけに依らず行動力があるのね。
そんな感じで春が近づいて来る。来年の選択授業はニコと一緒に医薬を申請した。錬金だと、体験授業の時みたいにヒヤヒヤしそうだから。
そして二月末、上級生の卒業式だ。ダットさんと固い握手を交わして見送る。
「本当に、色々とお世話になりました」
「また夏になったらうちで特訓だな」
「あはは」
半年後の予定が早くも埋まってしまった。ダットさんは、騎士団見習いとして王宮に勤める事が決まっている。あれだけ強い人だから、すぐに見習いの文字も取れるだろう。レイ王子はイースさんと話し込んでいた。何やら深刻そうな顔だったので何を話していたのか聞いてみたけど教えてくれなかった。王宮絡みの話だったのかな。政治の事だとしたら関わらないのが無難か。ニコは、剣技大会の決勝で戦った人と言葉を交わしている。確かあの人も呼吸法が使えるんだったな。
いやあ、中々に楽しい一年だった。入学前の不安な気持ちを思い出すと笑ってしまうくらいに。来年度は授業のレベルも上がるし選択授業が増えるから、ちょっと大変かもしれないけど、きっとまた楽しく過ごせるだろう。次こそ参加するぞ、水着回。
◇ ◇ ◇
またまた儂は大忙しじゃ。王宮から呼び出され、毒消しを大量に作るのを手伝えと言う。なんじゃ、この間湿布を大量に作ったばかりではないか。だいたい儂は学園の校医じゃぞ、何で儂までやらねばならんのだ。しかし、やんちゃ王子が言っていたのはこの事だったのかもしれんな。陛下の指示で湿布や包帯は増産したが、毒消しまで必要になるとはの。
まあ儂の手にかかれば造作も無い事よ。ほれ、これで依頼分は完了じゃわい。今年度もそろそろ終わる頃じゃし、暫くはゆっくり出来るじゃろて。
何じゃと? また湿布も追加で作れじゃと!? 今度は国中に配る!? 嫌じゃ! 学園は三月は休みなんじゃ! 儂も休む! おい、聞いておるのか! 離せ! その手を離せーー!
◇ ◇ ◇
最後は久々のキッシンデント先生の登場でした。
ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます! ブックマーク頂いた方、大感謝です!
続きはまた来週。




