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21話 呼吸法

21話です。◇×2は場面転換を、◇×3は話者転換を示しています。


◇ ◇ ◇



次の週末、師匠の所へ行って呼吸法の事を話したら、師匠は既に知っていた。逆に、そういう物が有るという事は、村に居た時に教えた筈だとも言われてしまった。えー、覚えてないなあ。ほら、横に居るニコも知らないって言ってるじゃん。教え損ねたのでは。二人とも忘れている可能性も十分に有るけれど。


それはまあ良いんだけど、師匠が言うには、本人は体内の魔素を練っているつもりだが、無意識のうちに空気中の魔素を引き寄せて使っているのだろうとの事だった。俺の予想と同じだ。そして俺の話から総合するに、どうやらケイは、瞬間的ではあるけれど、本来よりも三割ほど強い魔力を発揮しているらしい。彼は七階級だから三割増すと九階級をも少し上回る。しかし、それは俄かには信じがたいとも言った。呼吸法は、いくつかの流派があるけれど、実際には魔力的な効果は無くて単に集中力を高めるだけの物が殆どで、効果が有ったとしても一割程度上乗せするのがせいぜいで、階級を越える程の物は師匠も知らないと言っていた。空気中に魔素が有る事を分かっている訳では無いので、イメージが作れず、大きな効果は望めない筈だと。


可能性として考えられるのが、その一割増を無自覚に実現しているのがノルトポイマー流であろう事と、ケイはその天才で、更に偶然に三割増しを会得したのかもしれない、との事だった。凄いね、無意識の天才か。なんか格好良い。


疑問が解消してすっきりしたが、ついでに土魔法の使い方が甘いと怒られてしまった。きちんと腕を強化出来ていればもっと小さなダメージで済んだだろうと。


「常に冷静を心掛け、素早く魔法を行使できるようにしなさい。猪ごとき、逆に跳ね返すくらいでなければ」

「いや、かなり大きい猪だったんですよ?」

「いいですね」

「はい・・」

「アル、しっかりしてね」


ニコまで乗っかってくる。あの時は心配してくれたのに。



◇ ◇ ◇



十二月になった。わたしは今日も図書館でリリィのお手伝い。来月の学術発表会でリリィが発表する事になったから、その準備でちょっと忙しい。この間は森にも行った。リサの論文も採用されて、そっちはフェルが手伝っている。


わたしは使い終わった本を棚に戻して来たりとか、書いた原稿の試し読みをして感想を言ったりとか、わたしに出来る事をやっている。難しい事は時々セットとも相談しているみたい。わたしも頑張って一緒に考えるけど、あんまり役に立てていないかも。


図書館の中に居ると、同じクラスの、あのマギーって男の人を良く見かける。今日も隅っこの机で手紙を書いているのかな? いつも書いてはグシャグシャっと紙を丸めて、中々出来上がらないみたいだけど、どんな事を書いているんだろう? リサに聞いても教えてくれないし、凄く気になるけど、それより今はリリィの方が大事だ。


「ツノグマは、最初からそこに居たのではなくて、何処かからやって来たのは間違い無いと思うのだけど、いつどこを通ってやって来たのか分からないと、やっぱり纏まらないわ」


リリィがペンを額に当てて悩んでいる。


「飛んで来たとか?」

「そうねえ。でもツノグマは飛べないわよ」

「そうだよねえ」


わたしも意見を言ってみるけど、やっぱり参考にはならないみたい。ツノグマの事が載ってる本は沢山調べたけど、飛ぶなんて事はどれにも書いてなかった。土魔法を使えるって書いてあったけど、土魔法で飛べたりするのかな。


「土魔法で飛んだり出来る?」

「土魔法では飛べないんじゃないかしら。そもそも空を飛ぶ魔法なんて無いもの」

「そうだよねえ。もし魔法で空を飛べたら、わたしも飛んでみたいな」

「あ、風魔法を応用すればもしかしたら出来るかも。確か伝説のドラゴンは空を飛ぶ時に風魔法を使っているって説もあったわね」

「そうなんだ。じゃあツノグマがドラゴンに捕まって、それが飛んで来てあそこに落ちたとか」

「んー。その可能性も全く無い訳では無いわね。でもそれだとドラゴンが目撃されてもっと大きな騒ぎになるだろうし、そもそもドラゴンなんて魔獣戦争の時にも居なかった、伝説上の生き物だし・・」

「そっかー」

「もしドラゴンが発見されれば、ニコの説も有力になるわね」


リリィは私の意見もちゃんと聞いてくれる。本当に優しくて大好き。フェルもリサも優しくて大好き。学園に来て本当に良かったな。だからこそ、もっと役に立ちたい。でもわたしはこういうのはあまり得意じゃないし、こういうのが得意そうなのはやっぱり・・。



◇ ◇ ◇



ニコが、リリィの書いている論文の事で相談してきた。九人で食堂に居る時もよく話題になって議論もするが、なかなか本筋が纏まらない様だ。角熊はどこから来たのか? 俺も不思議に感じている。師匠にもこの件は報告しているが、何せ手掛かりが何も無いので、推察すら難しいとの事だった。ニコは飛んで来た説を唱えた様だが、まあ、それは無いだろう。いや、まてよ、ここは魔法がある異世界だからもしかして・・。


流石に飛んで来たとは思わないが、一つの仮説を思い当たる。でもこの世界の常識に照らしても突拍子も無いし、何の証拠も無いし、根本的な答えにはならないのでそれを口にはしなかった。


「うーん、俺にも分からないよ」

「えーーーーーーーーーーーー」


滅茶苦茶不満そうな顔をするニコ。すまん、期待してくれていたんだね。



◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます! ちょっとこの所バタバタしてまして、来週と再来週はお休みを頂いて、続きはまた来月に。

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