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14話 レイとジン

後半はジン視点です。


◇ ◇ ◇



剣技大会が終わり、また一か月ほどが過ぎた。あれ以来、クラスメイト達ともすっかり打ち解け・・る事は無かったが、一言二言挨拶程度の言葉を交わす相手は何人か出来た。一回戦で当たったクラスメイトその1改めマギー、デルマギアス・トレンブルハールもその一人だ。丸テーブルにやって来て話し込む様な事は無いけれど、俺としてはサロンでの居心地が随分と良くなったと感じている。


それから、ダットさんが暇な時に剣を教えてくれる事になった。上級生は上級生で忙しいらしく、まだ二回しか教わっていないけど、内容が先生に教わった事の復習になるので、授業よりもやり易い。あの必殺技については、


「まあ、そのうちな」


と、かわされてしまった。ニコも相変わらず毎朝女子会を開いて楽しそうだ。逆に、他の女子とは今まで以上に距離が開いたような気もしないでは無い。そりゃあんなものを見せられたらビビるよな。でも、入学当初の様な馬鹿にするようなそぶりは一切無くなったから、これで良かったのだろう。


とまあ、俺たち二人は平穏と言って良い日常を過ごしていたのだが・・


「ねえ、まだ仲直りしてないの?」


ニコがフェル嬢に問いかける。


「別に直るも何もありませんわっ」


ふんっ、と顔を横に向けて答えるフェル嬢。二週間ほど前のある日、皆で大会の思い出話をしていると、ジンが、レイ王子と対戦できなかった事をまた悔やみながら言う。レイ王子はそれをまた軽い感じで往なすのだが、言い争いになりかけてしまって、そこへフェル嬢がフォローを入れた。するとレイ王子はそれが気に入らなかったのか腕を組んで黙り込んでしまい、それ以来二人の間は何だかギクシャクしている。


ニコはそんな二人の様子が気になって仕方が無い様だ。リサ嬢とリリィ嬢は、いつもの事よ、って感じで、動じていないが、ここ数日の女子会の議題は、もっぱらこの件だ。ちなみにジンは、元々口数が少なくて、ぶっきらぼうな性格だから、それからも特に変わった様子には見えずに、レイ王子の隣に居る。


「何かわたしたちに出来る事は無いかな」


授業へ向かう廊下で、独り言の様に俺に言うニコ。俺に言われてもなあ。こういうのは良く分からない。前世でも誰かと付き合った事なんて無いし。ニコとは小さい時なら喧嘩した事も有るけれど、子供同士だからいつの間にか仲直りしていた感じだ。最近は、喧嘩になる前に俺が折れる。そうする様にしている。命が惜しいから・・。



そこからまた数日が過ぎ、セットが皆にある提案をして、俺たちはそれを実行する事にした。ニコは俺があてにならない事を悟り、セットにも相談していたらしい。王位継承権第二位や熱血漢コンビと違って、雰囲気が女子からも話しかけやすいのか、セットは普段から女子たちとも良く喋る。頭も良いし、相談相手としては俺より適任だ。


俺たちは王都の城門を出る許可を取り、一泊分の装備を準備した。フェル嬢の為ではあるけれど、俺自身もちょっとワクワクしてる。



◇ ◇ ◇



不覚を取った。相手は俺と同じ八階級だったはず。高みを目指すのであれば、同じ階級の者に後れを取るなど論外だ。そうでなければ、レイの隣に居る資格が無い。強くない俺など只の足手まとい。強さだけが俺の価値なのだから。しかしあのレイの手首は、本当に怪我をしていたのか? レイならあんな失態は犯さない筈だが。


「レイは優しすぎるのですわ」


あの時フェルはそう言った。やはりな。レイは俺との真剣勝負を避けた。何故だ?



王宮内の中庭で、俺とレイは毎朝剣を交えている。俺は常に全力で臨むが、毎回必ず引き分けに終わる。幼い頃は勝つ事も負ける事も有ったが、いつからかそう仕向けられる様になった。


「レイ、今日だけは本気を出してくれないか」

「・・」

「ここなら人目も無い。それなら良いのだろ?」


頼む。俺が求める、俺の目指すべき強さを見せてくれ。レイは暫く迷っていたが、最後は俺に応えてくれた。そして・・完敗だった。この強さは手を伸ばせば届くものなのか? どれだけ望んでも届かない物であるならば、俺は何の為に・・


「ねえジン、君は僕を越える事を望んでいるのかい?」


言葉に出てしまっていたか。いや、レイなら言葉にせずとも分かるのだろう。


「越えようとまでは思っていない。だが、お前と並び立つだけの強さが欲しい。そうでなければ、俺がお前に頼ってしまう事になる。それでは何の意味も無い」

「君は十分に強い。僕はいつだって君を頼りにしているさ」

「しかし!」

「そうだね、こう考えてみるのはどうだい? 例えばこの国の国王である父上は偉大な方だ。長い王国の歴史の中で見ても、ひと際輝かしい存在であるのは誰もが認める所だろう。兄上も尊敬に値するとても優秀な方だが、流石に父上には及ばない。もちろん僕も。だからと言って、兄上がこの国にとって必要の無い方だと思うかい?」

「そんな事は無い! あの方が軍政を司っているからこそ、国王陛下は内政を・・」

「だからね、ジン、君が強くなるのは君にとって素晴らしい事だと思うし、僕だって誇らしい。だけども、自分で自分を苦しめる事はやめておくれよ。僕は、君が側に居てくれるからこそ、僕らしく居られるんだ。君が強くあろうがそうでなかろうが、掛け替えの無い大切な親友である事には変わりが無いんだよ。もっとも、君が強く無いなどとは、誰も思っていないがね」

「・・・」


自分が情けない。強さで劣り、優しさにも頼ってしまっている。全くフェルの言う通りだ。レイは優しすぎる。レイはきっと、俺にその強さを見せるほど、俺が焦り苦しむのをずっと前から知っていたのだろう。何時の頃か、朝の鍛錬が引き分けに終わる様になる前から。


だが、だからこそ、俺は高みを目指し続ける。その優しさに応える為にも。



◇ ◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます! 今週もまた続きは明日か明後日に投稿予定です。

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