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13話 剣技大会3

今週はもう一話投稿します。


◇ ◇ ◇



大会最終日午前。準決勝第一試合は、ケイと、あのセットを破った青髪の上級生だ。セットの仇を取ると息巻いていたケイ、いやセットちゃんと生きてるから、は、開始の合図と同時に例の瞬発剛力で宰相の息子に襲い掛かる。だが、ガキンッ! と鈍く大きな音と共にイースさんがそれを受け止めると、更にそれを薙ぎ払って見せた。流石に一撃では決まらないよね。準々決勝でもそうだったし、まして相手は九階級。それでも、ケイは間合いを取り直して小さく息を吸い、また飛び込んでいく。イースさんはまた受け止める。一瞬だけ少し驚いたような顔に見えたイースさんだったが、そこから反撃に転じると、ぐいぐい押し込んで行く。ケイも良く踏ん張り、押してくる相手の力を利用して何度か切り返すチャンスを作ったが、結局押し切られてしまった。残念。でも良い試合だったと思うよ。


第二試合は、ジンと、先生の息子さんが戦う。これまた長い試合だった。両者全くの互角。ジンってもしかして八階級? 最後は、俺と同じような形になってジンは敗北してしまった。あの、剣が合わさった所から滑らせてからの流れるような動き、良くある動きで分かってはいるが、滅茶苦茶速くて防げないし、

剣の慣性を殺さず更に力を増して入れて来る一撃は、そう言えば確か先生にも一度だけ喰らった事があるな。基礎が出来ていない俺たちには教えてくれなかったけど。恐らく足の運びとか体重移動とか力を入れるタイミングとかがきっちり決まらないと出来ない技なんだろう。闇雲に剣を振り回すだけではあの速度とパワーは出せない。


そして午後になって決勝戦。青髪のイースさんvsこげ茶髪の先生の息子さん。聞けば、去年の決勝戦も同じカードだったとか。結果はこれまた去年と同じでイースさんの優勝。先生の息子さんもかなり善戦はしていたが、最後はやっぱり力負けした。表彰式の直後、その先生の息子さんと少し話をする機会があった。


「あの、昨日は失礼な態度ですみませんでした」


俺が頭を下げると、


「あん? お前さんは真面目に頑張っていたじゃないか。俺も油断してたらヤバかったぜ。親父も言っていたが、魔力を使うとそこらの貴族じゃ歯が立たねえ強さだな」

「いやあ、まだまだへなちょこです。先生にも良く怒られました」

「ははは、親父はこと剣に関しては滅法厳しいからな。分かるぜ。しごかれて大変だっただろう」

「いやあ・・」

「まあしかし何だ、弟弟子の前で良い所を見せたかったんだが、情けねえ、二年連続で負けちまうとは」

「いえ、素晴らしい試合でした」

「そうか? ま、とにかく宜しくな。俺の事はダットと呼んでくれ。困ったことが有れば遠慮なく声をかけてくれや」


俺とダットさんが固い握手を交わしていると、ニコが優勝トロフィーを抱えて通りかかる。


「あ、アル! こんなの貰っちゃった!」



◇ ◇



男子の部が、様々な好勝負の末にイースさんの優勝で幕を閉じたのに対し、女子の部はと言うと・・。


「では、始め!」


大会二日目女子一回戦第六試合。背中の辺りで赤い髪を結んだニコと、同じB組の黒髪の女子との戦いが始まる。ニコの剣がブワーーッ!! っと、ひと際眩しい光を放ち、ニコはそれを大きく上段に構えてゆっくりと前に進むと、力の限りブンッ! と振り下ろす。相手もそれに合わせるように剣を出してくるが、


グワキーーーーンッ!!  ・・ガランガラン


凄まじい衝撃音と共に相手の剣は手から零れ落ち、その手は痛みと驚きでワナワナと震えていた。半泣きの表情でそっと右手を上げる対戦相手。試合終了。


そこからニコはグワキーンガラガラを三回続けて決勝進出。決勝戦では、流石に一発では決まらなかったものの、剣を打ち付けてはまた上段に構え、下がる相手にまた振り下ろす。相手は必死に耐えてまた一歩下がるが、ニコは構わずゆっくりと振りかぶりながら更に一歩前に出て、また力一杯振り下ろす。相手の顔が恐怖に歪む。あの、ニコさん? もう少しやり方ってものが有るのでは? 先生から色々習ったでしょ? 中段とか下段とか素早い踏み込みとか、剣技っぽいのを。


そうして凡そ剣技とは呼べない代物ではあったが、ニコが優勝を果たしたのだった。対戦相手には災難だったと言うしかない。あれ絶対トラウマになるだろ。ちょっと嫁にするのは思い留まった方が良いかなあ。



◇ ◇



全日程が終了し、大会はお開きになった。このまま各自寮に帰ってゴロゴロ過ごしても良かったのだが、食堂でお茶でもしながら皆の健闘を称え合おうと言う話になり、九人で向かった。今日の午後は男女決勝の二試合をしただけで、表彰式もすぐ終わったから、夕方の門限まではかなり時間が有る。


「なあレイ、その腕だが」

「もうそれは言わないでおくれよ、ジン。僕だって君との本気の勝負を楽しみにしていたんだが、こういう事も有るさ」


席に着きながらジンが責めるような視線でレイ王子に言うと、レイ王子は左手首を軽く摩りながら答える。俺もこの二人の対戦は見たかったかな。そう言えば、この中でお互いに対戦する事は一つも無かった。俺がレイ王子と当たりかけたり、レイ王子がジンと当たりかけたが、それもトーナメントが進んでからだ。組み合わせはランダムで決めたって聞いたけど、去年の優勝者と準優勝者が反対の山に居た事からも、作為を感じるなあ。誰の作為だろう? もしかして著・・おや? 誰か来た様だ。 ・・ただいま。作為なんて無かった。そういう事だ。分かるね?


「まだ痛みますの?」

「いや、大した事はないさ。もうほとんど治っているよ」

「そうですの。それは良かったですわ」


フェル嬢が婚約(内定)者を労わる。彼女も大会では活躍していたな。特にあの準決勝、男子顔負けの迫力ある打ち合いには目を見張った。規格外の平民が突然辺境からやって来なければ、あれが事実上の決勝戦だったろう。その対戦相手にはもっと驚いた。フェル嬢との打ち合いも凄かったが、何より決勝でニコの渾身の一振りを何度か受け止めたのだから。あの上級生も只者では無い。


「それよりもだ」


レイ王子が、テーブルの真ん中にドンと置かれたニコの優勝カップを掌で指して仕切り直す。


「僕らの中から優勝者が出たんだ。こうして祝う事が出来て嬉しいよ。それに三人が準決勝まで行ったんだ。皆の活躍が見られて僕はとても楽しかったし、これほど素晴らしい事は無いと思わないかい?」

「いや・・」


ジンが微妙な反応をする


「不満そうですね」


リサ嬢が包容力の有る微笑みを向ける。


「あれは勝つべき試合だった」

「あら、立派な成績だと思いますよ?」

「俺も準決勝で負けたから、言えたもんじゃないが、去年の準優勝者とあそこまで互角に戦えたのは、 素直に凄いと思うぜ?」


去年の優勝者と戦って、互角迄は持ち込めなかったケイが唸りながら言う。決勝戦も凄かったな、力と技、途中まで拮抗していた。


「ああ、力は互角だった。だからこそ、俺は勝たなければならなかった」


ジンはそう言って拳を強く握った。場の空気が冷たくなりかけたが、


「私もちょっと自分にがっかりだわ」

「そんな事はありませんわ、あなたの負けたお相手も準優勝者だったのではなくて?」

「そうだけど」

「僕の記憶だと、確かフェルが負けた相手も同じ人だったよね」

「ええ、そうですわ。 ですからリリィ、あなたもわたくしと同じ実力と思って宜しいのでは?」

「それはおかしくない?」

「おかしくないですわ」

「じゃあ僕もケイと同じって事で良いのかな?」

「それは知りませんわ」


二回戦で負けてしまったリリィ嬢と、同じ相手に準決勝で負けたフェル嬢が、セットを交えて冗談半分に言い争うので、なんとか和んだ。それから話題を前向きに変えようと、皆でニコを称賛しまくる。褒めながら、あの無双ぶりが脳裏に蘇ったのか、一様に顔がやや引き攣るのを俺は見逃さない。ニコはそれに気付かずに顔を赤くして照れていたけど、とても嬉しそうだった。でも嬉しさのあまり、うっかり秘技の事を口走りそうになるのは止めてね。十二階級なんて単位は本来無いんだから。



◇ ◇ ◇



わたし、優勝しちゃった! 剣は村でも教わっていたし、学園に来てからも授業で色々習っているけど、未熟なわたしはそんなに器用に扱えない。だから、村で先生に一番最初に教わってわたしが一番得意な上段打ち下しで戦う事にした。セットみたいな速い動きはわたしには無理。アルに勝った、こげ茶色の髪をした、どことなく先生に雰囲気が似ているあの人みたいに格好良く剣を振る事も多分出来ない。その代わり、わたしは力と気持ちを思い切り集中した一振りに賭ける。あ、思い切りやっちゃダメなんだっけ。でも今日は、ちょっとだけいつもより魔力を高めて、頑張ってみようかな。お師匠様、ごめんなさい。ちょっとだけだから。


ゆっくり息を整えて、脇を閉めて、剣がぶれない様に真っすぐ構えて、背筋を伸ばして、そして一気に・・。結果は、全部の試合に勝つことが出来た。凄く楽しかったし、皆が褒めてくれるので本当に嬉しい。アルも、おめでとう、って言ってくれたけど、何だか顔が少し引きつっていたのは何故?


フェルは準決勝で負けてしまった。リサは準々決勝で負けた。リリィは二回戦で負けちゃったけど、その相手の人こそがわたしが決勝で戦った人で、フェルを準決勝で負かした人だったので、それもあって沢山褒められた。レイ王子もジンもケイもセットも皆格好良かった。勿論アルも。アルは他の皆より先に負けたのがまだ悔しそうだけど、相手が決勝まで行った強い人だったんだから仕方無いよ、元気出して。


 

◇ ◇ ◇


ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます! 続きはまた来週。

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